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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.13

「1文」「40字以内」でまとめる!
読み手の理解を早める箇条書きの鉄則とは。

「箇条書き」は、書き手の要点を明確化し、読み手の負担を減らす!

前回まで、スライド作成を効率化するルール設定の説明をしました。ここからは、スライド作成に欠かせない表現方法について解説します。

一人歩きする資料の表現方法には、「箇条書き」「図解」「グラフ」の3つがありますが、中でも基本となるのが「箇条書き」です。

通常の文章のみの資料の場合、読み手は自分で内容を整理し、要点を理解する必要があります。一方、箇条書きの場合は、あらかじめ情報が整理され、構造が明確になっているため、読み手の読解力や書き手の文章力に左右されにくく、誰もが理解しやすい資料を作成することができるのです。

箇条書きのメリット

読み手にとってはポイントがまとまっているため分かりやすく、書き手にとっては自分の頭の中を整理できるというメリットがある箇条書きですが、苦手な方も多いのではないでしょうか。実は箇条書きの作り方にはルールがあり、それを知らないとかえって分かりにくい資料になってしまうこともあります。箇条書きを作る上でのポイントを順番に紹介していきます。

箇条書きがうまくなるコツ! まずは長文で書いてみる?

一人歩きする資料に欠かせない箇条書きですが、「苦手」「よく分からない」と思っている方には、まず通常の文章を書いて、それから箇条書きにすることをおすすめします。箇条書きはあくまで形式なので、まずは材料となる内容を書き出すことが最も重要です。具体的には、次のように行います。

最初に、伝えたいことやその根拠などを、思いつくままに文章にしてみましょう。次にその文章を句読点で分解し、いくつかの短文に分け、類似のものをまとめます。このとき、必要のない短文は削除しましょう。そして、それぞれの短文の冒頭に「箇条書きするときに用いる点(ビュレットポイント)」を付けます。

最後に、文ごとに主語を明確にしましょう。日本語は主語がなくても成り立ってしまいますが、箇条書きではすべての短文に主語が入るようにします。

文章を箇条書きへと分解する方法

最初はうまくいかなくても、まずは長文で書き、そして分解するという作業を繰り返すことで徐々に慣れていきます。練習を積めば、最初から分かりやすい箇条書きを作ることが可能になります。

箇条書きの苦手を克服! 書き方のルールを徹底解説

ここからは、箇条書きのルールを解説していきます。ポイントを押さえれば、箇条書きがどんどん上手になっていくはずです。

(1)箇条書きは「1文」にまとめる
1つの項目に2文以上書くのはNGです。1つの項目は、1つの文にまとめるようにします。1項目に2つ以上の主張があると、読み手にとって理解しにくいものになるからです。
(2)箇条書きは「40字以内」にまとめる
1文の長さは40字以内を目安にします。箇条書きは、簡潔であることに価値があります。40字以上になると、読み手は負担に感じてしまい、そうなれば資料を読むのをやめてしまうかもしれません。一人歩きする資料を実現するために、1文は40字以内を目指しましょう。
(3)箇条書きは文末をそろえる
箇条書きの文末は、動詞・形容詞などの「用言」または「体言止め」でそろえます。規則性を持たせると、読み手が理解しやすくなります。
(4)箇条書きは「3項目」に整理する
いくら箇条書きが分かりやすいとはいえ、数が多くなりすぎるのは逆効果です。箇条書きの項目は「3項目」までと覚えておきましょう。どうしても4~5項目になる場合は、類似の文をまとめて3項目に絞るようにしましょう。
(5)箇条書きは順番に並べる
箇条書きの順番に意味を持たせることで、読み手に書き手の意図を伝えたり、内容を分かりやすくしたりすることができます。箇条書きの順番を決める方法には、主に次の3つがあります。金額の多寡、インパクトの大きさなどで並べる「重要度順」、時間の流れに沿って並べる「時系列順」、種類で内容を分ける「種類別」です。

「階層構造」を作ることで、箇条書きはより分かりやすくなる!

次は、箇条書きを階層化するポイントについて説明します。箇条書きを階層構造にすると、1階層の箇条書きよりも詳細な情報を整理し、より分かりやすく伝えることができます。ただし、階層が多ければよいというわけではありません。最大でも「3階層」までと覚えておきましょう。

箇条書きの階層構造の例

箇条書きの階層作りは難しい印象があるかもしれませんが、実は代表的な次の3つのパターンを活用すると作りやすくなります。

  • 因果関係
    第1階層で事実や主張を示し、第2階層でその原因や理由を示すパターンです。1つの事実や主張の背景に、複数の原因や理由がある場合に適しています。
  • 詳細
    第1階層に事実や主張の概要を示し、第2階層にその内容の詳細情報を示すパターンです。第1階層に詳細情報まで書いてしまうと文が長くなるため、第1階層には概要のみを書き、第2階層で詳細情報を書くようにします。
  • 事例
    第1階層で示した内容の具体的な事例を、第2階層で示すパターンです。具体的な事例を示すことで、説得力を高めます。「詳細」との違いは、「詳細」が第1階層の情報を網羅的に説明するのに対し、「事例」は代表的な事例の紹介にとどまることです。
階層パターンの例

このように、示したい情報が当てはまるパターンに合わせて階層を作ることで、読み手にとって分かりやすい箇条書きを作成することが可能になります。

また、箇条書きを作成する上で便利なのが、「小見出し」を付けることです。ここでいう「小見出し」とは、それぞれの箇条書きの「タイトル」の役割を果たすもの。小見出しを付けることで、箇条書きの大まかな内容を素早く理解できるようになり、読み手の負担を減らすことが可能になります。

小見出しを付けた例

ここまでスライドの表現方法で最も基本となる箇条書きのメリットや、書き方のルール、階層化などを解説しました。苦手な人も多い箇条書きですが、ポイントやコツを押さえて繰り返し書いていると、次第に上手になって、情報が整理された一人歩きする資料を作成できるようになるでしょう。まずは通常の文章を書くことから始めてみましょう。

次回は、スライドの表現方法で箇条書きと同じく苦手意識を持つ人が多い「図解」について解説します。図解には、「読み手が見た瞬間に内容を把握できる」「感覚的に論理を理解できる」という大きなメリットがあります。図の選び方や作り方などについて、詳しく説明していきます。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2022年12月