有機反応データベース
ベックマン転位 Beckmann Rearrangement
概要
オキシムの酸触媒による転位、引き続く加水分解によりアミドが得られる。環状オキシムを用いると環拡大されたアミドが得られる。シクロヘキサンオキシムからのBeckmann転位により、6-ナイロンの原料であるε-カプロラクタムが合成できる。これは工業的にも利用されている。
基本文献
- Beckmann, E. Ber. 1886, 19, 988.
- Donaruma, L. G.; Heldt, W. Z.; Org. React.1960, 11, 1.
- Gawtey, R. E. Org. React.1988, 35, 1.
- Hauske, J. R. Comp. Org. Syn.1991, 1, 98.
- Maruoka, K.; Yamamoto, H. Comp. Org. Syn.1991, 6, 763.
- Craig, D. Comp. Org. Syn.1991, 7,689.
開発の歴史
1886年にドイツの化学者ベックマンにより報告された。その名を冠してベックマン転位と呼ばれる。またベックマン温度計も彼による発明である。
Ernst Otto Beckmann
反応機構
軌道論的には、オキシムのOH基に対しトランスからの転位が優位である。しかし、酸性条件においてはオキシムのE/Z異性化は速いため、実際には転位しやすい置換基が転位する。転位のしやすさは
aryl,alkenyl > tert-alkyl > sec-alkyl > prim-alkyl
の順であり、電子豊富さと相関が高い。(参照: Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 2370.)
反応例
山本・石原らは、塩化シアヌル-塩化亜鉛触媒系がBeckmann転位が有効であることを見出している[1]。Meisenheimer Complexを経由する反応機構も興味深い。
分子内カルボニル-ene反応と組み合わせるとジヒドロピリジン環が合成できる[2]。
Pinnaic Acidの合成[3]:MSH試薬[4]を用いたBeckmann転位によって、α-四級アミンを立体選択的に構築している。
参考文献
- Furuya, Y.; Ishihara, K.; Yamamoto, H. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 11240. DOI: 10.1021/ja053441x
- 大学院講義有機化学 II, p138.
- Xu, S.; Arimoto, H.; Uemura, D. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 5764. DOI: 10.1002/anie.200701581
- Tamura, Y.; Fujiwara, H.; Sumoto, K.; Ikeda, M.; Kita, Y. Synthesis 1973, 215.
- Schinzer, D.; Bo, Y. Angew. Chem. Int. Ed. 1991, 30, 687. DOI: 10.1002/anie.199106871