本コンテンツは、お客さまがご利用のOSまたはブラウザーへ対応しておりません。
最新のOS、ブラウザーにアップデートしてください。

今日からはじめる「アンガーマネジメント」

怒りの感情と上手に付き合い、コントロールする方法を紹介します。
実践すれば仕事も人間関係もよりスムーズになるはず!

vol.2 相手への過度な期待は禁物。
上司・部下とのイライラしない付き合い方とは?

3つのステップを習慣付けしてトレーニングを重ねる

前回は、「怒り」をコントロールするアンガーマネジメントの3つのステップについて紹介しました。今回は、これらをふまえ、日常生活のなかでの具体的な取り組み方を紹介します。

①「衝動」のコントロール
怒りを感じても、すぐにぶつけるのではなく、6秒間じっと我慢する(6秒ルール)。
②「思考」のコントロール
怒りを感じた言動を、「許せる」「まあ許せる」「許せない」のいずれかに仕分けする。
「許せない」言動以外に対しては、時間経過とともに怒りが薄らいでいくので放っておく。
③「行動」のコントロール
「許せない」言動については、「重要」か「重要ではない」か、相手の言動を「変えられる」か「変えられないか」によって対処を決める。

怒りを感じるたびに、この3つのステップを踏む習慣付けをすれば、少しずつ「心の許容度」が高まり、感情のコントロールがしやすくなります。

すぐに結果が出るものではありませんが、運動やダイエットと同じように、トレーニングを重ねれば重ねるほど効果は高まるのです。ぜひ、今日からでも実践してみてください。

上司や部下への怒りはどうやって抑える?

では、具体的な「怒り」のケースをもとに、アンガーマネジメントへの取り組み方について解説しましょう。

日常生活において、特に怒りの感情が生じやすいのは職場と家庭です。職場では上司や部下、家庭では配偶者や子どもといったように、接する機会が多い相手ほど、ささいな言動でもつい目に余ってしまうからです。

職場では、例えば「上司の指示がコロコロ変わる」とか、「部下が何度も同じミスを繰り返す」といった日ごろ接する機会が多い相手に対する不満やイライラが、怒りの発火点になることも少なくありません。こうしたケースには、いかに対処すればいいのでしょうか。

いずれのケースにおいても、まずは「6秒ルール」に沿って「衝動」をコントロールします。

上司から昨日とはまったく逆の指示を受けたとしても、「話が違うじゃないですか!」とすぐに感情を爆発させるのは禁物です。6秒ほど我慢すれば理性が働いて、ひとまずその場の怒りは抑え込めるはずです。

次に、なぜ自分は上司の言葉に怒りを覚えたのかを考えます。おそらく、日ごろから上司の指示がコロコロと変わり、振り回されてばかりいるので、つい「またか!」と思ってしまったのではないでしょうか。

そこで、2番目のステップである「思考」のコントロールを行います。

この場合、上司の態度が「許せる」か「許せない」かといえば、やはり「許せない」と考える人が多いでしょう。指示が変われば、それまでやっていた仕事が無駄になってしまいます。それを何度も繰り返されたら、無駄な苦労を重ねることになってしまうのですから。

では、「許せない」とすれば、どのように対処すべきなのか。それを決定するのが3番目のステップである「行動」のコントロールです。

相手が変わるのを期待するよりも自らを変えるほうが健全

このケースは、部下にとって「重要」な問題であることに間違いはありません。問題は上司の態度を「変えられる」か、「変えられない」かです。

たとえ指示の出し方に問題があっても、話を聞いてくれる上司なら、負担を強いられていることを説明すれば、やり方を改めてくれるかもしれません。しかし、部下の言葉に耳を傾けない上司であれば、残念ながら、その態度や性格自体を変えるのは不可能に近いといえます。

その場合は、相手を変えようとするのではなく、自分の対応を変えることで怒りに振り回されなくなる方法があります。

指示がコロコロ変わることがわかっているのなら、あらかじめ変わることを想定しながら仕事を進めたり、こまめに確認したりすることで、被害を最小限に抑える対策も打てるはずです。

「指示がコロコロ変わる上司」への行動は?

いずれにしても、相手に「変わってもらえるのではないか?」と過度な期待を抱くのではなく、自らを変えて課題を解決しようという発想ができるようになれば、過度な怒りやイライラに振り回されることはなくなります。自らを変えるというと負担が大きいようですが、まずは自分の考え方、やり方を少しだけ変えてみると、周囲へのイライラという無駄なエネルギーを他のものに回せる快適さに気付くはずです。

「怒り」をコントロールするためのコツ

相手の性格や人格を変えるのは難しい。まずは自らの対応を変えて、過度な怒りに振り回されなくなる。

PROFILE

安藤 俊介
安藤 俊介あんどう・しゅんすけ
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事、アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」をアメリカから導入した日本の第一人者。教育現場から企業まで幅広く講演、研修、セミナーなどを行っている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)、他多数。書籍は中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムなどでも翻訳され、累計発行部数は58万部を超える。

記事公開:2021年1月