コーチングとは、端的に表すと「相手の考えやアイデアを引き出す技術」のこと。「どうすれば売り上げが上がると思う?」「前向きに仕事に取り組めるときとそうでないときでは、何が違う?」というように、さまざまな角度から質問して、部下に考えさせます。その答えは、自分の内面と向き合って出したものなので、自発的に実行することができるはずです。このように自発的に考えて行動することが習慣になれば、率先して組織に貢献する人材になってくれるでしょう。
そこでまずマスターしたいのが、「傾聴」「質問」「承認」「フィードバック」というコーチングの代表的な4つのスキルです。中でも傾聴はコーチングの第一歩と言えます。「傾聴」とは、ただ情報として話の内容を聞き取ることではありません。相手に興味関心を持ち、気持ちに寄り添いながらじっくり耳を傾けるのが「傾聴」なのです。
まず傾聴によって、現在部下が抱えている課題や、今それに対してどう考えているのか、といったことを聞き出します。その際、ただ黙って聞いているのではなく、うなずいたり、相づちを打ったりして、相手が話しやすくなるように心掛けるのがポイントです。
傾聴の次に大切なスキルが「質問」です。部下の話が抽象的な場合には、具体化する質問によって行動計画に落とし込むことができます。またなかなか解決策が見出せないような問題を抱えていたとしても、ものの見方を変えたり、相手の立場に立って考えてもらうことで、打開策が見つかるもの。なぜなら他人から「質問」を受けることが、日頃の思考パターンから抜け出すことにつながるからです。
そしてコーチングの大きな魅力のひとつが「承認」のスキルです。「先月と比べて売り上げが倍になったんだね」「君の情熱が伝わってきたよ」というふうに、部下の成果やあり方を認める言葉をかけましょう。結果だけでなく、相手の存在そのものを認め、プロセスを認めることが、部下から信頼され心を開いてもらえるカギとなります。
このように相手の話を傾聴し、質問や承認をしながら相手をよく観察して、感じたことを伝えるのが「フィードバック」です。表情や口調、態度など、部下から発信される“非言語”のメッセージをキャッチして伝えることで、本人が気付いていないことを意識させることができるのです。例えば「どう? プロジェクトは上手くいってる?」と質問をした際に「ええ……じゅん……ちょう……ですよ」とためらいながら部下が返答したとしましょう。
言葉だけをとらえれば「順調ですよ」となりますが、その口調を聞いていれば、決して順調ではないことをうかがい知ることができるはずです。そこで「なんだかためらっているように感じたけど……」と“フィードバック”してみるのです。ひょっとすると本人はそのような口調になっていることに気付かず、上司の言葉にハッとして「えっ? 何で分かるんですか……? 実は〇〇さんがなかなかルールを守ってくれなくて……」というふうに悩んでいることを素直に話してくれるきっかけになる可能性があります。
また、部下が仕事を上手く進められないことに対する言い訳ばかり口にすることもあるでしょう。そんなときも、まずはしっかりと受け止めて傾聴してください。共感しながら話を聞き、言い訳が出尽くしたところで「それで、君はどうすればいいと思う?」と質問するのです。そうすれば部下は、その状況を打開するための方法を考えざるを得なくなります。もし部下が「思いつきません」と答えても、すぐに助言するのではなく、自分で考えさせてください。仕事が上手く進まない原因や、進めるためにまず取り組むべきことなどを質問し、あくまでも答えは部下自身が考えて出すようにすることで、当事者意識を持って仕事に臨めるようになるはずです。
コーチングに必要な4つのスキル