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部下の力を引き出す「コーチング」の極意

部下が自発的に働くようになる、コーチングの手法と実践について解説します。

vol.1 “話下手”が武器に変わる!
コーチングの基本的なやり方とは?

部下が自ら答えにたどり着くように導くコーチング

成績が上がらない部下に「もっと積極的に働いてほしいなぁ……」と思ったことはありませんか? いくら叱咤激励してものれんに腕押しどころか、現代では叱咤すると「パワハラだ!」と訴えられるリスクも。とはいえ部下の監督は、管理職の重要な職務であることは間違いありません。部下の成績が振るわず、どうすればいいのだろうと悩みを抱える管理職は、少なくないはずです。「部下の能力を引き出すためにはどうすればいいか?」というのは、管理職にとって永遠のテーマと言えるでしょう。

部下が積極的に働くために必要なのは、実は「○○をやれ」という指示や命令ではありません。人は日常的に指示や命令を受け続けると、それに慣れてしまい自ら動こうとしなくなります。そして「やれ」と言われたことが自分の意思に沿わないものだと、反発したり消極的になってしまうもの。手取り足取り丁寧に部下を指導していたつもりが、かえって部下の積極性を奪っている可能性があるのです。部下が積極的に働くためには、自ら考えて「どう動けば良いか」という答えを出すことがカギになります。そこで、部下がその答えにたどり着くように導く技術が「コーチング」です。この連載では、現代の管理職にとって、大変有効なコーチングの基本的な方法について解説します。

4つのスキルを駆使して当事者意識を育てる

コーチングとは、端的に表すと「相手の考えやアイデアを引き出す技術」のこと。「どうすれば売り上げが上がると思う?」「前向きに仕事に取り組めるときとそうでないときでは、何が違う?」というように、さまざまな角度から質問して、部下に考えさせます。その答えは、自分の内面と向き合って出したものなので、自発的に実行することができるはずです。このように自発的に考えて行動することが習慣になれば、率先して組織に貢献する人材になってくれるでしょう。

そこでまずマスターしたいのが、「傾聴」「質問」「承認」「フィードバック」というコーチングの代表的な4つのスキルです。中でも傾聴はコーチングの第一歩と言えます。「傾聴」とは、ただ情報として話の内容を聞き取ることではありません。相手に興味関心を持ち、気持ちに寄り添いながらじっくり耳を傾けるのが「傾聴」なのです。

まず傾聴によって、現在部下が抱えている課題や、今それに対してどう考えているのか、といったことを聞き出します。その際、ただ黙って聞いているのではなく、うなずいたり、相づちを打ったりして、相手が話しやすくなるように心掛けるのがポイントです。

傾聴の次に大切なスキルが「質問」です。部下の話が抽象的な場合には、具体化する質問によって行動計画に落とし込むことができます。またなかなか解決策が見出せないような問題を抱えていたとしても、ものの見方を変えたり、相手の立場に立って考えてもらうことで、打開策が見つかるもの。なぜなら他人から「質問」を受けることが、日頃の思考パターンから抜け出すことにつながるからです。

そしてコーチングの大きな魅力のひとつが「承認」のスキルです。「先月と比べて売り上げが倍になったんだね」「君の情熱が伝わってきたよ」というふうに、部下の成果やあり方を認める言葉をかけましょう。結果だけでなく、相手の存在そのものを認め、プロセスを認めることが、部下から信頼され心を開いてもらえるカギとなります。

このように相手の話を傾聴し、質問や承認をしながら相手をよく観察して、感じたことを伝えるのが「フィードバック」です。表情や口調、態度など、部下から発信される“非言語”のメッセージをキャッチして伝えることで、本人が気付いていないことを意識させることができるのです。例えば「どう? プロジェクトは上手くいってる?」と質問をした際に「ええ……じゅん……ちょう……ですよ」とためらいながら部下が返答したとしましょう。
言葉だけをとらえれば「順調ですよ」となりますが、その口調を聞いていれば、決して順調ではないことをうかがい知ることができるはずです。そこで「なんだかためらっているように感じたけど……」と“フィードバック”してみるのです。ひょっとすると本人はそのような口調になっていることに気付かず、上司の言葉にハッとして「えっ? 何で分かるんですか……? 実は〇〇さんがなかなかルールを守ってくれなくて……」というふうに悩んでいることを素直に話してくれるきっかけになる可能性があります。

また、部下が仕事を上手く進められないことに対する言い訳ばかり口にすることもあるでしょう。そんなときも、まずはしっかりと受け止めて傾聴してください。共感しながら話を聞き、言い訳が出尽くしたところで「それで、君はどうすればいいと思う?」と質問するのです。そうすれば部下は、その状況を打開するための方法を考えざるを得なくなります。もし部下が「思いつきません」と答えても、すぐに助言するのではなく、自分で考えさせてください。仕事が上手く進まない原因や、進めるためにまず取り組むべきことなどを質問し、あくまでも答えは部下自身が考えて出すようにすることで、当事者意識を持って仕事に臨めるようになるはずです。

コーチングに必要な4つのスキル

コーチングに必要な4つのスキル

6つのステップで部下が行動しやすくなる

コーチングの基本的な流れには、6つのステップがあります。まず、できるだけ「相手が話しやすい環境を作る」ことです。第三者に話を聞かれやすい状況は避け、安心して本音で話せる環境を選びましょう。

次に、話の「テーマを決定」します。複数の課題があるときは、優先順位が高いものを部下に選ばせます。コーチングでは、コーチングを受ける人が何事も全て決めるのが基本です。ただし仕事でコーチングを行う場合は、課題の重要度や緊急性といった状況に応じて、上司がテーマを決めたり、アドバイスをしたりするなど臨機応変な対応も必要になるでしょう。テーマが決まったら、部下の話をしっかりと傾聴して「現状を整理」します。話があいまいだったり、抽象的だったりする場合は、質問によって具体化していってください。

現状を具体的に把握した後は、「目標設定」をします。未来のイメージがより具体的になるにつれて、相手は目標に向けて動き出しやすくなります。ゴールを明確にして、「その目標を達成するとどんな変化があるのか」といった質問を繰り返すことで、部下が具体的に理想の未来をイメージできるよう手助けをしてください。

目標設定に続いて行うのが「リソースの発掘」。課題解決や目標達成のために部下が活用できる資源を、徹底的に探します。過去の成功体験や新たに試したい方法、お手本にしたい人についてなど、視点を変えて質問することで、部下が自発的に行動するための材料を集めることができます。

リソースを十分に引き出すことができたら、最後に「アクションプラン作り」を行います。部下の経験や強みを踏まえて、いつまでに何をどのように行うかといった具体的な行動計画を立てさせます。ここで細部まで決めておくと、実際に行動を起こすときに迷いが無くなるはずです。また、行動した結果についても、しっかりと期日を決めて報告させるようにするのが、キチンと成果を上げるポイントです。

コーチングの6ステップ

コーチングの6ステップ

コツは相手を尊重し同じ目線に立つこと

「自分は話下手だから、会話をしながら進めるコーチングは難しそう」と思っている人がいるかもしれません。しかしコーチングは、話下手な人にこそぴったりな技術です。前述したようにコーチングに必要なのは、自分が話すことではなく相手の話を聞くことで、話の主役はあくまでも相手。相手のための質問をして、考えを聞き出し、それを要約したり、フィードバックしたりして、相手に新たな気付きを与えるのがコーチングなのです。話下手だからこそ、自分より相手に話をさせるコーチングは取り入れやすいと言えるでしょう。

コーチングは、インタビューの技術と言い換えることもできます。どんな仕事にも、さまざまな相手へのインタビューを求められる場面が必ずあります。そうしたときもコーチングが身に付いていると、しっかりと対処できるようになるでしょう。コーチングを上手く進めるコツは、相手を尊重して、同じ目線に立つこと。部下や取引先にとって、同じ目線で物事を考えてくれる上司、そして仕事相手は、とても心強いものです。仕事の話に限らず、日常会話にもコーチングの手法を取り入れることで、相手との信頼関係を築くことができます。難しく考えずに、日常会話から少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。コーチングは、経験を積めば積むほど上達します。スキルと信頼の小さな積み重ねが、コーチングの効果をさらに高めることになるはずです。

PROFILE

永田 豊志
谷口 祥子たにぐち・よしこ
株式会社ビィハイブ代表取締役。思いこみクリアリングカウンセラー。コピーライターとして活動後、ITベンチャーにて携帯コンテンツ事業の立ち上げに参画、その後コーチングに出会い、2004年よりプロコーチ・セミナー講師としての活動開始。現在はブリーフセラピー、交流分析、再決断療法などをベースに構築した独自プログラムを用い「思いこみクリアリングカウンセラー」として活動。経営者や管理職のカウンセリング、コーチング、会話のコンサルティングなどを行う。著書は『図解入門ビジネス 最新コーチングの手法と実践がよ~くわかる本』『「結果を出す人」のほめ方の極意』など。

記事公開:2019年8月