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部下の力を引き出す「コーチング」の極意

部下が自発的に働くようになる、コーチングの手法と実践について解説します。

vol.12 会議を成功に導く立役者を目指そう!
そのためのテクニックは雑談で磨ける!?

三人寄っても文殊の知恵は出ない!?

長時間の会議を終えてぐったり。でも、ふと考えてみたら重要なことはほとんど決まっていないことに気が付いてさらに疲れが……。そんな経験はありませんか? 立場が上になるほど会議の回数は増えるもので、丸1日会議をはしごしたことがある人もいるかもしれません。時間にゆとりがあるならまだしも、忙しいときの会議で何も決まらなければ、仕事そのものに対するモチベーションも下がってしまいます。

「三人寄れば文殊の知恵」ということわざ通り、できるだけ多くの人が集まって話せば何か良いアイデアが浮かぶはず、と思い込んでいる人は、意外に少なくありません。しかし、それは会議の全出席者に、事前のコンセンサスや情報の共有があってこそのものです。そうでなければ、出席者が多いほど、かえって話はまとまらなくなります。大体の場合は、意見が対立したり、同じ話が堂々巡りしたりして時間だけが無駄に過ぎていくことになるでしょう。

管理職としては、せめて自分が招集した会議くらいは、実のあるものにしたいところ。そこで今回は、会議を充実させるために役立つコーチングのスキルを紹介します。

出席者の検討や事前の準備で会議は変わる

会議を充実させるためには、まず準備が大切です。何が議題なのか、何を決めたいのかといった内容を具体的に記したアジェンダを作成し、会議の前に全出席者に配布しておきます。何かアイデアを募る場合も、事前に考えてくるように伝えましょう。

時間が限られた会議内で、良いアイデアなどなかなか出るものではありません。会議を各個人が考える場にするのではなく、それぞれが考えてきたアイデアを検討する場にする方が、はるかに効率的です。さらに社内でグループチャットを使えるサービスを利用している場合は、それを使ってアイデアを募集しておくと、会議でより深掘りできたり、場合によっては会議自体が必要なくなったりするかもしれません。

また、会議の出席者の構成についても、しっかりと検討しておくと良いでしょう。単に同じ部署やプロジェクトのメンバーというだけで集めると、議題に直接関係がない人まで出席することになる可能性があります。

会議はあくまで話し合う場なので、意見を求めたい人や意見をしたい人だけが参加すれば良いはず。情報を共有したいのであれば、会議後に決定事項を伝えたり、議事録を回覧したりすれば十分です。効率のいい会議にするためには、ただ出席しているだけ、という人がいないようにすることも大切です。

管理職がファシリテーターになれば会議はうまく進む

会議が始まったら、いよいよ「ファシリテーター」の出番です。ファシリテーターとは、会議で発言を促したり話の流れを整理したりして、話し合いを合意に導く役割を担う人のこと。従来の会議では、リーダー役は議長として、その内容と進行に強い影響力を持ってきました。しかし管理職はこのような典型的な議長ではなく、ファシリテーターを務めた方が、会議をうまく進めることができるのです。

ファシリテーターは、議論の内容に対しては中立・公平な立場を貫き、進行役に徹します。「〇〇さんからこういう案が出ています。何か意見がある人はいますか?」「△△さんの意見は、□□さんのものに近い気がしますね。それぞれの類似点と相違点について検討してみましょう」というように、自分の意見は述べずに議論を深めつつ、参加者の理解を促して合意形成に導きます。進行役に徹するというと簡単なようですが、実はファシリテーションにはかなりの傾聴力や質問力が必要です。コーチングのスキルを存分に生かすことのできる役割と言えるでしょう。

会議におけるファシリテーターの役割

各参加者が話す内容を十分に理解することはもちろん、ファシリテーター自ら、参加者の抽象的な発言を具体化するなど介入していくことも大切です。例えば「もっとうまくやれば生産性が上がるはずです」というような発言に対して「『うまくやる』方法で何か具体的な案をあげていただけますか?」というように質問するのです。そうすればより効率よく生産的な議論ができるようになるでしょう。

また、話が長い人がいれば、気分を害することのないよう介入して簡潔にまとめたり、議題から外れたときはその場の雰囲気に配慮しながら軌道修正したりすることもファシリテーターの重要な役割です。さらに、全体に目を配っておいて何か言いたそうにしている人がいれば「Aさん、今、ひらめいた! という表情をされていましたが……」というふうに投げかけて発言を促すといったことも行っていきます。

つまりファシリテーターとは、例えるなら、船乗りたちをまとめて目的地に無事たどりつくよう導いていく船長のような立場だと言えるでしょう。

毎日の雑談から「ファシリテーション力」を鍛えて
会社への貢献度をさらにアップ!

では、どうすればファシリテーション能力を磨くことができるのでしょうか? 一番の近道は、日頃の雑談などで、ファシリテーター的な役割をしてみることです。これを習慣化すると、どんな話題が出ても蚊帳の外になることなく、場を盛り上げることができる強力なスキルが身につきます。

特にファシリテーション力が磨かれるのは、自分があまりよく知らないことが話題にのぼったとき。そんな状況では多くの人が黙り込んでしまったり気まずさを感じたりしがちです。しかし、「へえ!勉強になるよ!」と承認したり、「〇〇さんも物知りだね!どこでそんな情報を手に入れるの?」と質問したり、「そういえば■■さんも面白い話知ってるんだよね〜」と、会話に参加していない人にスポットライトを当てたり……といったふうにうまくファシリテーター的な介入ができれば、会話の流れをスムーズにしながら存在感も発揮することができます。

自分が知らない話題に参加することは、時には話の腰を折ってしまう可能性もあり、難しいと思うかもしれません。しかし、重要な会議で失敗するよりも、雑談で失敗した方がはるかにマシです。そして、失敗を重ねるほど早く上達できるでしょう。自分がまったく知らない話題であっても、その会話を盛り上げることができれば、ファシリテーションスキルが上達した証。

日頃の雑談でファシリテーションスキルを磨いて会議がうまくまとまる回数が増えれば、時間の無駄を抑えるだけにとどまらず、あなたのコミュニケーションスキルも飛躍的に向上します。またリモート会議も増えて多くの職場で会議についての見直しが行われているいま、会議を生産的な時間にすることは会社への大きな貢献になること間違いありません。ぜひこの機会に、ファシリテーションスキルを身につけることをおすすめします。

PROFILE

谷口 祥子
谷口 祥子たにぐち・よしこ
株式会社ビィハイブ代表取締役。思いこみクリアリングカウンセラー。コピーライターとして活動後、ITベンチャーにて携帯コンテンツ事業の立ち上げに参画、その後コーチングに出会い、2004年よりプロコーチ・セミナー講師としての活動を開始。現在はブリーフセラピー、交流分析、再決断療法などをベースに構築した独自プログラムを用い「思いこみクリアリングカウンセラー」として活動。経営者や管理職のカウンセリング、コーチング、会話のコンサルティングなどを行う。著書は『図解入門ビジネス 最新コーチングの手法と実践がよ~くわかる本』『「結果を出す人」のほめ方の極意』など。

記事公開:2021年1月