本コンテンツは、お客さまがご利用のOSまたはブラウザーへ対応しておりません。
最新のOS、ブラウザーにアップデートしてください。

部下の力を引き出す「コーチング」の極意

部下が自発的に働くようになる、コーチングの手法と実践について解説します。

vol.13 自分らしいリーダーシップを身に付けるために
役立つコーチングの手法とは?

時代によって求められるリーダーシップは変わる

現在管理職を務める多くの人にとって、そのあり方は自分が若い頃とはだいぶ違ったものに感じられるかもしれません。昔は目標を達成できなかったり、失敗をしたりすると、上司や先輩に怒鳴られ、時には書類や灰皿を投げつけられたという話もありました。

しかし、今そんなことをすればほぼ確実に「モラハラ」「パワハラ」と訴えられるでしょう。企業のガバナンスも強化されてきた今日、管理職はハラスメントにならないよう細心の注意を払っていく必要があります。

一方で、現在も昔と変わらず管理職に求められているのが、部下を率いて担当部署の業績を伸ばすこと。そのために、強い上司権限によって部下を働かせることが難しくなった今の時代は、管理職に求められるリーダー像は変わってきているといってよいでしょう。今回は、コーチングの手法を生かした現代の管理職にふさわしいリーダーシップの身に付け方、発揮の仕方を紹介します。

リーダーシップは1種類じゃない! 自分に合った形を探せばOK

一口にリーダーシップといっても、誰にでも当てはまる正しい形が存在するわけではありません。

はっきりと自分の意見を述べるタイプや、控え目で他人の意見をよく聞くタイプなど、人それぞれコミュニケーションのとり方は違うはず。同じように、リーダーシップのとり方も人によって異なって当然です。「いじられキャラでやってきた」「人より前に出るのが苦手」などという理由で、リーダーになれないわけではありません。職場におけるリーダーシップの大きな目的は、“集団を目標達成に導くこと”、そして”集団の構成員を成長させること”。それができるように、自分に無理のないリーダーシップのとり方を身に付ければよいのです。

それでは、自分の個性を生かしたリーダーシップをとるためには、どのように振る舞うのがよいのでしょうか。

もちろんケースバイケースですが、例えば、自分がキッパリした性格で、明確に意見を述べるタイプだと自覚している人の場合、目標達成のために次々と部下に指示を出し、力強く引っ張っていく形が向いているでしょう。一方、穏やかな性格で他人の意見をよく聞くタイプなら、自分の考えを押し付けず、部下の本音を引き出しながら、一緒に目標達成を目指すといったことができるはずです。それぞれが逆のリーダーシップをとろうとしてもうまくいかないでしょう。

同時に、それぞれのリーダーシップに一長一短があるのも事実。前者だと、上司の指示に部下が押しつぶされたり、目標達成ができず脱落してしまったりするかもしれません。そのため、時には部下に手を差し伸べ、フォローしてあげることも必要になります。後者は、部下の意見を尊重するあまり、甘く見られてしまう恐れがあります。ダメなことは本気で叱るなど、部下との関係がなれ合いにならないように、明確に自分の立場を示しましょう。長所を生かしつつ、短所を改善するように少しずつ変わっていけばよいのです。

自分に合ったリーダーシップとは?

良いセルフイメージを持って、リーダーシップを磨いていく

このように、「自分に合ったリーダーシップを発揮できるようになりたい」など、人が変わりたいと思うとき、役に立つのがコーチングです。コーチングは他の人に対して1対1で行うことが多いですが、自分自身に応用することもできるのです。いわゆるセルフコーチングと言われる手法です。

コーチングでは、自分を変えたいと思っている人のセルフイメージを高める手伝いをします。これを応用して、リーダーシップを発揮できる自分になりたいのであれば、数年後に自分がどのような人間、そして上司になっていたいかを細かく、具体的に想像するとよいのです。そして、なりたい自分になったつもりで、日々の言動を少しずつ変えていってください。そうすれば自身に違和感なく、個性を生かしたリーダーシップを身に付けることができます。

また、このようにコーチングの手法を自分に使うことには、自分自身を見つめ直すことで意欲を回復させたり、生活を充実させたりできるというメリットもあります。何事にも意欲的で活力に満ちている上司は、部下にとって魅力的に見えます。逆に、上司が疲れ切って鬱々としていたり、不機嫌だったりすると、職場全体の雰囲気が悪くなります。趣味などで生活が充実している上司を持てば、部下も自分の明るい未来像を想像しやすくなり、モチベーションも上がりやすいでしょう。

リーダーシップがあるということは “他人を巻き込むのがうまい”と言い換えることもできます。部署の成績を伸ばすために部下を引っ張ることだけが、リーダーシップではありません。部下に「一緒に何かしたい!」と思わせることも、立派なリーダーシップの一つです。ぜひコーチングの手法を部下だけでなく自分自身にも用いることで、部署の士気を高め、成果アップにつなげてください。

PROFILE

谷口 祥子
谷口 祥子たにぐち・よしこ
株式会社ビィハイブ代表取締役。思いこみクリアリングカウンセラー。コピーライターとして活動後、ITベンチャーにて携帯コンテンツ事業の立ち上げに参画、その後コーチングに出会い、2004年よりプロコーチ・セミナー講師としての活動を開始。現在はブリーフセラピー、交流分析、再決断療法などをベースに構築した独自プログラムを用い「思いこみクリアリングカウンセラー」として活動。経営者や管理職のカウンセリング、コーチング、会話のコンサルティングなどを行う。著書は『図解入門ビジネス 最新コーチングの手法と実践がよ~くわかる本』『「結果を出す人」のほめ方の極意』など。

記事公開:2021年2月