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わかる!コンプライアンス

最近よく話題になるものの、意外と意識しづらいコンプライアンス。
基礎知識、違反を防ぐ方法などを解説します。

vol.13

業績を上げたい! 契約を取りたい!
その焦りが「腐敗」につながる?

A社との契約、順調みたいですね。うちも海外に進出かぁ~!
そうだね! 大きな契約だから、いろいろ大変だろうけどね
やっぱり、こういう契約を取るためなら豪華な接待も必要だったりするんですかね?
いや、それはまずいんじゃない?

意外と知らない?
腐敗防止はSDGsにも関わりが!

私たちは時折、組織の腐敗を報じるニュースを目にします。官僚や政治家による汚職、企業が関係する贈賄事件などは、権力を恣意(しい)的に行使することで特定の組織や個人に利益を与えるものです。たとえ大きなニュースにならなくとも、天下りや縁故による優遇も、組織の腐敗を示すものといえるでしょう。

「公正さが健全な競争を生み、経済を発展させる」という自由経済の基本的な考え方のもとでは、権力に群がる人々が起こす腐敗は大きなリスクとなります。

この腐敗を防止するために、1990年代末から各国が取り組みを強化しています。その一つが、「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」です。この条約は署名国が国内法を整備することで、国際商取引における外国公務員に対する賄賂を禁じ、腐敗防止を目指すものです。

1998年12月に日本も同条約に署名し、1999年には不正競争防止法18条に外国公務員への贈賄に対する処罰規定がおかれるようになりました。これにより、不当な利益の取得を目的とし、外国公務員に対して金銭等の不当な利益を供与することが犯罪と規定されました。

そして2000年4月には、旧大蔵省での汚職事件などが背景となり、国家公務員倫理法と国家公務員倫理規定が制定されています。これによって、公務員と利害関係者の間における金銭の贈与や接待などが明確に禁止されました。違反した公務員には、懲戒処分や省庁内規による処分が行われます。

さらに、現在多くの企業で取り組まれているSDGsにも、腐敗防止は関係しています。持続可能な社会を目指すための17の目標であるSDGsは、目標16に「平和と公正をすべての人に」を掲げています。この下には小目標「あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる」「あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる」も立てられており、腐敗防止が非常に重視されていることがわかるでしょう。

企業は今、腐敗リスクをコンプライアンス徹底における最重要課題の一つとして位置づけ、これを未然に防止し、対応できる社内体制を構築して、健全な経営環境を維持することが求められているのです。

1000億円超の制裁金支払いも?
外国公務員へ贈賄したら……

グローバル化の進展により、国際商取引における公正な競争の確保はますます重要になっています。より注目が高まっている国際商取引において、企業が腐敗に関わるシーンを考えてみましょう。外国公務員への贈賄防止は、国内では不正競争防止法に外国公務員贈賄罪として規定されています。

外国公務員贈賄罪の概要

外国公務員贈賄罪に規定される内容に企業が接するシーンは、海外事業の入札、契約時が多いでしょう。たとえ金品の支払いが少額であったり、商品の贈与であったりしても、それが「営業上の不正な利益」を目的としたものであれば犯罪になります。一方、旅費、食費などの経費負担や贈答は不当な目的がなければ問題がないケースもあります。

違反すると、個人に対しては5年以下の懲役、500万円以下の罰金が科されるほか、法人に対しては3億円以下という高額な罰金刑が科されます。このほかにも取引停止や入札資格のはく奪などの罰則が科されることもあり、企業の将来に大きな影を落とす結果となるのです。不当な利益供与に手を染める行為は、その額や性質を問わず、「ついうっかり」「知らなかった」「現地の慣習だからいいだろう」では済まされない、大きなリスクをもっています。

また、日本の不正競争防止法違反に加え、現地法で裁かれることもあります。そのため、取引を行う国の法律を事前に把握しておく必要があります。米国のFCPA(Foreign Corrupt Practices Act=海外腐敗行為防止法)や英国のUKBA(UK Bribery Act=贈収賄禁止法)などがよく知られており、米国ではFCPAに違反した罪で日本企業に1000億円を超える制裁金が科されたケースも存在します。

日本企業の国内外における腐敗防止のためには、
一人ひとりの認識と信頼関係が最重要!

腐敗を防止するには、企業の隅々まで、何が不正にあたるのか、不正を起こさないために何を注意すべきか、などの知識を浸透させることが大切です。そして、(1)経営のトップが腐敗を許さない明確なメッセージを社内外に提示し、(2)それをもとに腐敗防止規定を策定し、(3)それを実行できる組織を整備するという3つの取り組みがポイントとなります。

具体例としては、業務で接する公務員に対する贈答・接待等をどう処理するか、事前にルールを徹底しておくとよいでしょう。先述のとおり、外国公務員に対する贈賄にも厳重な注意が必要です。

例えば、新興国での取引では「ファシリテーション・ペイメント」と呼ばれる、行政行為をスピードアップしてもらうために渡す少額の金銭を求められるケースが多数聞かれます。金額が大きくないこともあり、都度支払うことが慣習化してしまった、という事例もあります。

しかし、こうしたものも賄賂の一種であり、慣習だからと担当者の判断で受け入れるのではなく、違法だという認識が必要です。もし金品の要求があった場合に備え、拒絶する対策をマニュアル化しておくと安心です。もしやむを得ず支払ってしまった場合にも、すぐに会社に報告できるルールを社内に周知しておきましょう。

贈賄を早期発見するなど事態の悪化を防ぎ、的確に対処するために必要なのは、処罰を恐れて担当者が隠蔽(いんぺい)することなく、責任者に気軽に相談できる風通しがよい組織全体の風土です。一見遠回りに見えても、普段からお互いを尊重し信頼してコミュニケーションをとれる基盤作りが、企業を腐敗から救います。

「腐敗が起こらない体制を構築したから問題ない」という考え方ではなく、万一腐敗につながるようなことが起きた場合についても、しっかりと想定しておくことが重要です。担当者の責任追及を目的にするのではなく、あくまで企業全体としての改善のために全力を注ぐ姿勢が腐敗防止の環境を作っていくのです。

なるほど、契約のためにはがむしゃらになりがちだけど、慎重にならなければいけないですね
そうだね。意外な落とし穴があるかもしれないから、まず学ばないとね

富士フイルムグループの取り組み

富士フイルムグループでは、コンプライアンスを「法律に違反しないということだけでなく、常識や倫理に照らして正しい行動をとること」と定義しています。企業活動の基本ポリシーとして「富士フイルムグループ 企業行動憲章・行動規範」を制定し、法令や社会倫理に則った活動の徹底を図るとともに、コンプライアンス宣言を通じて、事業活動においてコンプライアンスを優先することを富士フイルムグループ全従業員に周知徹底しています。

PROFILE

塚脇 吉典つかわき・よしのり
一般社団法人日本コンプライアンス推進協会理事。「コンプライアンス経営」に関する啓発や、情報セキュリティ対策(導入・運用・保守)支援、BCP対策など幅広く活動する。伊東市情報公開審査会/伊東市個人情報保護審査会委員。2018年JCPA出版より『組織は人、人の心を動かし、組織を変える56の法則』を出版、「見える化分析カード」を用いた企業リスク診断システムを発表。

イラスト:佐々木 公(イラストレーター)

記事公開:2022年1月