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わかる!コンプライアンス
最近よく話題になるものの、意外と意識しづらいコンプライアンス。vol.8
企業のコンプライアンスとして、反社会的勢力と接点を持たないことは大変重要です。
反社会的勢力とは、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団、半グレ集団とその協力者などを指します。「反社」と略されるこうした集団は、暴行、脅迫、迷惑行為などの不当な方法で企業の商取引に介入し、不当な利益を得ようとします。
政府は2007年に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を発表し、社会から反社会的勢力を排除することを宣言しました。この中では、反社会的勢力による被害を防止するための基本原則として、下記の5つが掲げられています。
現在、多くの企業が反社会的勢力と一切の関係を持たない取り組みを進めていますが、それに呼応するように、反社会的勢力は外からはそれとはわからない姿で社会へ溶け込み、資金獲得活動は巧妙化しています。反社会的勢力と知らずに経済取引を行ってしまうと、企業は行政処分や上場廃止、融資の停止など、大きなダメージを負うことになります。
なぜ企業は細心の注意を払っていても、反社会的勢力と関わりを持ってしまうのでしょうか。その理由のひとつには、暴力団を背後において活動する「フロント企業」の存在があります。1992年に施行された「暴力団員による不当行為の防止等に関する法律」(暴対法)では、指定暴力団の構成員が暴力的要求行為をした際、公安委員会が中止を命令し、それに違反すると罰則が科せられるようになりました。この暴対法から逃れるために増加したのが、反社会的勢力であることを隠し、企業活動を装うフロント企業です。
こうしたフロント企業を含む反社会的勢力との接点で、懸念されることのひとつが「マネーロンダリング」への加担です。マネーロンダリングとは、犯罪行為で得た資金の出どころを消し、正当な手段で得たと見せかけること。資金洗浄とも呼ばれ、捜査機関による口座凍結、差し押さえ、摘発、徴税等を逃れるために行います。
その際、送金の繰り返し、株や債券の購入、大口の寄付を行いますが、その通過点として企業の口座が利用されます。昨年、国際的なマネーロンダリングに、日本の中小企業経営者が関与していたという事件が報じられました。
これらの企業は、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)罪などに問われました。組織犯罪処罰法に違反した場合、5年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。たとえ経営者が不起訴となっても、法人口座が犯罪に使われた場合は新規口座の開設ができなくなります。「法人口座への入金」だけでも、それが犯罪に関係した資金であった場合は、企業にとって必要不可欠な金融取引が制限されるという重大な事態を引き起こすことになるのです。
企業活動において反社会的勢力を排除するには、取引を行う前の「反社チェック(コンプライアンスチェック)」が重要です。社の方針として「反社会的勢力とは一切の接点を持たない」ということは理解されていても、社員一人ひとりが具体的に何をすればよいのか、明確になっていない職場はまだ多いのではないでしょうか。
反社会的勢力を排除する意識を組織に浸透させるには、まずリスクをしっかり把握することが重要です。政府、自治体、金融庁、証券取引所など、企業を取り巻く環境が反社会的勢力の排除に向かう中で、反社会的勢力と接点を持つことは下記のような大きなリスクを秘めています。
こうしたリスクを回避するには、取引前の反社チェックが重要です。自社で調査する、専門機関に依頼する、行政機関に照会(相談)するなどの方法がありますが、一度チェックしたから安心、というわけではありません。企業が後から反社会的勢力に乗っ取られてしまう場合もあるので、定期的なチェック、そして疑わしい事項が出てきた際に必要に応じてチェックを行うことが重要になります。
社会の中で巧妙に隠蔽された反社会的勢力から会社を守るには、担当者がその存在を感じた場合、すぐに上司や取締役に懸念情報を伝え、相談できる環境をつくることが大切です。従業員が一人で悩みを抱え込まない風土が、さまざまな観点からのチェックを可能にし、リスクの早期発見と排除につながるといえるでしょう。
富士フイルムグループでは、コンプライアンスを「法律に違反しないということだけでなく、常識や倫理に照らして正しい行動をとること」と定義しています。企業活動の基本ポリシーとして「富士フイルムグループ 企業行動憲章・行動規範」を制定し、法令や社会倫理に則った活動の徹底を図るとともに、コンプライアンス宣言を通じて、事業活動においてコンプライアンスを優先することを富士フイルムグループ全従業員に周知徹底しています。
イラスト:佐々木 公(イラストレーター)
記事公開:2021年7月
情報は公開時点のものです