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わかる!コンプライアンス

最近よく話題になるものの、意外と意識しづらいコンプライアンス。
基礎知識、違反を防ぐ方法などを解説します。

vol.9

よりよいイノベーションには不可欠!
「不正競争防止法」とは?

次のイベントで配るノベルティの企画、こんな感じでどうでしょう?
あれ? このロゴデザイン、なんだか見たことがある気がする……
実は、今人気のブランドをまねてみたんです。売るわけじゃなくて無料で配るものなので、問題ないかと思っていたんですが……

「正々堂々と競い合うためのルール集」、
 不正競争防止法の歴史は、意外に古い

不正競争防止法は、ビジネスパーソンならぜひしっかりと押さえておきたい法律といえます。これは、もともと「国民経済の健全な発展」を最終目的として制定されたもの。経済活動に参加する事業者が正々堂々と競い合うことで、国民経済全体を発展させるというビジョンを背景としています。

私たちの豊かな生活を支えるさまざまなモノには、それを考え生み出した人や組織があります。新しい技術やデザインを生み出した権利を保護することが企業努力のインセンティブとなり、社会全体のイノベーションにつながるといえるのです。

日本の不正競争防止法の歴史は、明治時代にさかのぼります。1909年に制定された「ドイツ不正競争防止法改正」に触発された明治政府は、日本国内の法整備の検討を始めました。ところが、国内産業が発展途上にあったことや、権利侵害でない行為に法的責任は認められないという民法の解釈によって、制定は一度見送りに。

その後、貿易産業の成長に伴い、工業所有権の保護に関するパリ条約を批准することになった政府は、条約の義務を果たすため1934年に不正競争防止法を制定しました。そして、時代の変化に応じたさまざまな改正を経て、現在の条文になっています。

「やったらNG!」な10項目とは?
法律も時代に合わせてバージョンアップ

では、現代の不正競争防止法を詳しく見てみましょう。体系は以下の図のようになっています。

不正競争防止法の体系
【出典】経済産業省「不正競争防止法の概要」より作図

このうち、多くのビジネスパーソンに関係深いのが、不正競争に関するものでしょう。条文にはさまざまな場面での不正競争が想定されています。禁止されている行為は、以下の10項目です。

①周知な商品等表示の混同惹起(わずかな違いを残した模倣)
需要者に広く知られている商標、容器、看板、商品の形態等と同一または似た表示を使用し、オリジナルの商品や営業と混同させる行為。
②著名な商品等表示の冒用(コピー)
他人の商品や営業表示(商品等表示)として著名なものを、自己の商品・営業の表示として使用する行為。
③他人の商品の形態等を模倣した商品の譲渡等(コピー商品の取引)
模倣した商品を譲渡や貸し渡しのために展示、輸出、または輸入する行為。
④営業秘密に係る不正侵害
営業秘密(営業情報や技術情報等)を、窃盗等の不正な手段によって取得し、自ら使用、もしくは第三者に開示する行為。
⑤限定提供データの不正取得等
関係者に限定して提供されたデータを窃取等の不正手段によって取得、自ら使用し、もしくは第三者に開示する行為。
⑥技術的制限手段に対する不正取得(いわゆるプロテクト破り)
アクセスが制限されているコンテンツの視聴や記録、プログラムの実行、情報処理を可能とする行為。
⑦ドメイン名に係る不正取得等(転売等の利益を目的としたドメイン取得)
利益を得る目的で他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有、またはそのドメイン名を使用する行為。
⑧商品・サービスの原産地、品質等の誤認惹起表示(原材料の偽装等)
原産地、品質、内容等を誤認させるような表示、またはその表示をした商品を譲渡する等の行為。
⑨信用毀損行為(不当なライバルの蹴落とし)
競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知、または流布する行為。
⑩代理人等の商標冒用
工業所有権を保護するパリ条約の同盟国等において、商標に関する権利を有する者の代理人が正当な理由なく商標を使用する行為。

昨今、私たちの社会がITでより便利になるなかで、人々の興味・関心や行動履歴を記録した膨大なデータの塊「ビッグデータ」が大きな価値を持つようになってきました。こうした変化に伴い2018年に改正されたのが、上記の「⑤限定提供データの不正取得等」です。それまでの映像やプログラムに加え、新たにデータが保護対象として追加されました。社会の公正な競争のために、法律も変化していることがわかります。

罰金最大10億円!
一瞬で経営を傾かせる不正競争防止法違反の内訳とは

では、不正競争防止法に規定された行為に手を染めると、どんな結末が待っているのでしょうか。不正競争防止法に違反すると、民事と刑事の措置があります。民事上の措置には、以下のようなものがあります。

  • 差止請求:権利侵害の停止または予防、侵害の行為を組成した物の廃棄
  • 損害賠償請求:違反行為で被った損害額を推定し、請求
  • 信用回復措置請求:違反行為で失った信頼を回復する措置を要請

さらに、違法性が高いとされるものには、刑事罰が規定されています。前述の①~④、⑥、⑧は刑事罰の対象で、中でも「④営業秘密に係る不正侵害」は、10年以下の懲役または2000万円以下の罰金(併科可)、日本国外におけるものは10年以下の懲役または3000万円以下の罰金(併科可)と、罪が重くなっています。それ以外も5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科可)となっており、決して軽く済む罪状ではありません。

さらに、不正競争防止法違反では、法人も刑事罰の対象となります。業務上の犯罪では行為者に加え、その者が所属する法人もそれぞれ処罰(罰金)の対象となります(22条1項)。法人に課せられる罰金は、なんと最高で10億円。④の営業秘密侵害罪により生じた財産等は、裁判所の判断により、犯人および法人両罰が適用された法人から上限なく没収することができるとされています(21条10項、11項)。

法人の不正競争防止法違反が摘発された場合、その経営は大きく傾きます。莫大な罰金、長く続く民事裁判、消費者の信用失墜等、その損害ははかりしれないものになるでしょう。「自分さえ、自社さえ勝てればよい」という視野の狭さではなく、企業の健全な競争こそが社会全体をよりよい方向に進めるということを忘れてはいけないのです。

コピー商品は譲渡しても罪になるんですね……売らなければいいと思い込んでいました
コピー商品が出回ると、オリジナルの会社を苦しめることにもなるからね
たしかに、うちの会社の製品もコピーされたらたまらないですね。反省して再度企画を考えます!

富士フイルムグループの取り組み

富士フイルムグループでは、コンプライアンスを「法律に違反しないということだけでなく、常識や倫理に照らして正しい行動をとること」と定義しています。企業活動の基本ポリシーとして「富士フイルムグループ 企業行動憲章・行動規範」を制定し、法令や社会倫理に則った活動の徹底を図るとともに、コンプライアンス宣言を通じて、事業活動においてコンプライアンスを優先することを富士フイルムグループ全従業員に周知徹底しています。

PROFILE

塚脇 吉典つかわき・よしのり
一般社団法人日本コンプライアンス推進協会理事。「コンプライアンス経営」に関する啓発や、情報セキュリティ対策(導入・運用・保守)支援、BCP対策等幅広く活動する。伊東市情報公開審査会/伊東市個人情報保護審査会委員。2018年JCPA出版より『組織は人、人の心を動かし、組織を変える56の法則』を出版、「見える化分析カード」を用いた企業リスク診断システムを発表。

記事公開:2021年9月