


本コンテンツは、お客さまがご利用のOSまたはブラウザーへ対応しておりません。
最新のOS、ブラウザーにアップデートしてください。
わかる!コンプライアンス
最近よく話題になるものの、意外と意識しづらいコンプライアンス。vol.9
不正競争防止法は、ビジネスパーソンならぜひしっかりと押さえておきたい法律といえます。これは、もともと「国民経済の健全な発展」を最終目的として制定されたもの。経済活動に参加する事業者が正々堂々と競い合うことで、国民経済全体を発展させるというビジョンを背景としています。
私たちの豊かな生活を支えるさまざまなモノには、それを考え生み出した人や組織があります。新しい技術やデザインを生み出した権利を保護することが企業努力のインセンティブとなり、社会全体のイノベーションにつながるといえるのです。
日本の不正競争防止法の歴史は、明治時代にさかのぼります。1909年に制定された「ドイツ不正競争防止法改正」に触発された明治政府は、日本国内の法整備の検討を始めました。ところが、国内産業が発展途上にあったことや、権利侵害でない行為に法的責任は認められないという民法の解釈によって、制定は一度見送りに。
その後、貿易産業の成長に伴い、工業所有権の保護に関するパリ条約を批准することになった政府は、条約の義務を果たすため1934年に不正競争防止法を制定しました。そして、時代の変化に応じたさまざまな改正を経て、現在の条文になっています。
では、現代の不正競争防止法を詳しく見てみましょう。体系は以下の図のようになっています。
このうち、多くのビジネスパーソンに関係深いのが、不正競争に関するものでしょう。条文にはさまざまな場面での不正競争が想定されています。禁止されている行為は、以下の10項目です。
昨今、私たちの社会がITでより便利になるなかで、人々の興味・関心や行動履歴を記録した膨大なデータの塊「ビッグデータ」が大きな価値を持つようになってきました。こうした変化に伴い2018年に改正されたのが、上記の「⑤限定提供データの不正取得等」です。それまでの映像やプログラムに加え、新たにデータが保護対象として追加されました。社会の公正な競争のために、法律も変化していることがわかります。
では、不正競争防止法に規定された行為に手を染めると、どんな結末が待っているのでしょうか。不正競争防止法に違反すると、民事と刑事の措置があります。民事上の措置には、以下のようなものがあります。
さらに、違法性が高いとされるものには、刑事罰が規定されています。前述の①~④、⑥、⑧は刑事罰の対象で、中でも「④営業秘密に係る不正侵害」は、10年以下の懲役または2000万円以下の罰金(併科可)、日本国外におけるものは10年以下の懲役または3000万円以下の罰金(併科可)と、罪が重くなっています。それ以外も5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科可)となっており、決して軽く済む罪状ではありません。
さらに、不正競争防止法違反では、法人も刑事罰の対象となります。業務上の犯罪では行為者に加え、その者が所属する法人もそれぞれ処罰(罰金)の対象となります(22条1項)。法人に課せられる罰金は、なんと最高で10億円。④の営業秘密侵害罪により生じた財産等は、裁判所の判断により、犯人および法人両罰が適用された法人から上限なく没収することができるとされています(21条10項、11項)。
法人の不正競争防止法違反が摘発された場合、その経営は大きく傾きます。莫大な罰金、長く続く民事裁判、消費者の信用失墜等、その損害ははかりしれないものになるでしょう。「自分さえ、自社さえ勝てればよい」という視野の狭さではなく、企業の健全な競争こそが社会全体をよりよい方向に進めるということを忘れてはいけないのです。
富士フイルムグループでは、コンプライアンスを「法律に違反しないということだけでなく、常識や倫理に照らして正しい行動をとること」と定義しています。企業活動の基本ポリシーとして「富士フイルムグループ 企業行動憲章・行動規範」を制定し、法令や社会倫理に則った活動の徹底を図るとともに、コンプライアンス宣言を通じて、事業活動においてコンプライアンスを優先することを富士フイルムグループ全従業員に周知徹底しています。
イラスト:佐々木 公(イラストレーター)
記事公開:2021年9月
情報は公開時点のものです