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「分け方」を変えればその問題は解決する!

vol.1

なぜ宅配ピザは「8等分」なのか?
「分け方」は、あらゆる問題解決の糸口になる。

「分け方」を変えると新しい“何か”が生まれる

世の中のあらゆるモノやコトは、何らかのルールによって分けられています。

たとえば宅配ピザは、どのお店のものも大抵「8等分」にされています。なぜ7等分や9等分ではなく、8等分なのでしょうか?

第1に考えられるのは「切りやすさ」。円形のピザを半分ずつにカットしていけば、2分の1→4分の1→8分の1となります。これなら調理に慣れていないアルバイトでも簡単に切れるはずです。

次に考えられるのは「食べやすさ」。ひとつのピースがあまりにも大き過ぎると、手に収まりにくく、口に入れにくいものです。ほかにも、「8分の1サイズのカロリーがちょうどいい」「見た目がいちばん美しい」など、いろいろな理由が考えられます。

また、日本でも毎年数多くの書籍や音楽が作られています。小説の多くは「起・承・転・結」の4つに、音楽の多くは「Aメロ・Bメロ・サビ」の3つに分けて作られていますが、その分け方が多いのにも理由があるでしょう。

このほかにも、野球は「9イニング」、サッカーの選手は「11人」といったように、それぞれの物事には、決められた数や「分け方」があります。

普段は当たり前だと思っていることでも、よくよく考えると「そういう理由があったのか」と気付かされることもあれば、「もっといい分け方があるのではないか?」と別のアイデアがひらめくこともあるはずです。

「分け方」を変えることは、既存の常識やルールを打ち破って、新しい“何か”を生み出すきっかけになるのです。

この連載では、「分け方」を変えることで、世の中をもっと快適にする方法、自分が狙った方向性へ人にスムーズに動いてもらう方法、商品やサービスが飛ぶように売れるようにする方法などを紹介していきます。

8等分されたピザ。絶妙なバランスだ!

スペースの限られているオフィスに追加スペースを確保するには?

「分け方」には、宅配ピザの8等分のように理想形にたどり着いたものもあれば、時代の変化によって、そぐわなくなってしまっているものもあります。

もしもあなたが、仕事や生活で何らかの問題にぶつかっているのであれば、「分け方」を変えてみてはどうでしょうか? それによって、一気に問題が解決するかもしれません。

たとえば、一般に会社のオフィスは「執務(個人机)スペース」「会議・打ち合わせスペース」「その他スペース」の3つに分かれており、それぞれ6:2:2ぐらいの比率でスペースを確保するのが今までの常識でした。

ところが、最近は社員同士のコミュニケーションの重要性が高まったことから、「会議・打ち合わせスペースをもっと増やしてほしい」というニーズが増えています。

もちろん増やす分は、ほかのスペースを減らして確保しなければなりません。おのずと執務(個人机)スペースを減らさざるを得なくなりますが、それでは社員の方々の個人机が収まりきらなくなってしまいます。

そこで、私の勤めるコクヨが1997年にいち早く導入したのが「フリーアドレス」という方法です。ここ10年でかなり一般的になってきたのでご存じの方も多いと思いますが、フリーアドレスとは、1人ひとりに机を割り当てるのではなく、図書館の閲覧室のように空いている机を誰でも自由に使えるようにする仕組みです。

すべての社員に机を割り当てるとオフィススペースは広くなりますが、営業職のように日中外出する社員が多いと、その分の空きスペースが無駄になります。そこで、日中の在席率を踏まえて社員数よりも少ない数の机を置き、割り当てをなくして誰でも使えるようにするのです。

社員は好きな席を選べるので、プロジェクトの担当者同士が集まったり、普段はあまり接点のない部門の社員と隣り合わせに座ったりすることもできます。

実は「分け方」の転換から生まれたオフィスのフリーアドレス

これなら、「会議・打ち合わせスペースを広げて社員同士のコミュニケーションを活性化させる」という目的を果たせますし、社員が好きな場所で執務することで、他部門とのコミュニケーションの活発化や気分転換などの効果も期待できます。

「どうやったら目的を実現できるか?」と徹底的に考え抜いたことが、「オフィススペースは6:2:2でなければならない」という固定概念を打ち破り、「同じスペースを互いに分かち合う」(共有する)という新しい「分け方」を生み出したのです。

フリーアドレスは、「オフィスの机は1人にひとつなければならない」という常識を覆したイノベーティブなアイデアですが、このように画期的なアイデアやイノベーションの多くは、実は「分け方」を変えることによって生み出されることも多いのです。

難しく考えなくても、「分ける」という視点を持つだけで世の中の見方はガラリと変わり、新しい仕組みや、ありそうでなかった商品やサービスを生み出すことができるのです。

この連載では、問題解決や、新たなモノ、コトを生み出すための手法として、「分け方」を変えてみる方法を紹介していきます。次回は、「分け方」を変えることで、商品やサービスが売れるようにする方法について考えてみましょう。

“分け方”のポイント
「どうすれば問題を解決できるか?」という視点で、今までの「分け方」を見直してみる

PROFILE

下地寛也しもじ・かんや
コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタント。コクヨ入社後、オフィスの設計に従事。その後、働く環境と従業員の行動に関する分析・研究などの業務を担当。現在は経営管理本部でコクヨグループの働き方や風土・文化の改革にも取り組んでいる。著書に『一発OKが出る資料 簡単につくるコツ』(三笠書房)、『困ったら、「分け方」を変えてみる。』(サンマーク出版)など。

記事公開:2018年7月