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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.16

データを視覚的に分かりやすく表現する!
伝わる「グラフ」の大原則(1)

円グラフは原則NG!?  他のグラフに代替し視覚的に理解しやすくする

人を動かす一人歩きする資料の表現方法3つのうち、これまで「箇条書き」「図解」について解説してきました。今回は「グラフ」です。単に数字を表で見せるよりも、グラフで可視化した方が、より効果的で伝わりやすい資料になります。

しかし、グラフが重要な表現方法だということは理解していても、どのグラフを選べばいいのか分からず、何となく使っているという方は多いのではないでしょうか。効果的なグラフの表現のポイントは「選び方」と「見せ方」です。この2点によって相手への伝わり方は大きく左右されます。そこで、今回から2回に分けて解説していきます。

グラフに苦手意識を持つ要因として、グラフの特性や、どのグラフを使えば効果的にデータを示せるかを知らないといったことが挙げられます。グラフの作成は「グラフを選ぶ」ところから始めます。グラフにはいろいろと種類がありますが、次の4種類が基本となります。まずはこれらを覚えましょう。

基本となる4種類のグラフ
(1)積み上げグラフ
(2)横棒グラフ
(3)縦棒グラフ
(4)折れ線グラフ

4種類の中に「円グラフ」は含んでいません。円グラフは一般的によく使われますが、一人歩きする資料の作成時には基本的に使用しないことをおすすめします。なぜなら項目間の比較が難しいからです。円グラフで表現したいことは、ほとんどの場合、積み上げグラフや縦棒グラフで代替可能です。

円グラフを別のグラフで代替できることを示した例

ちなみに、2つの項目の割合を明確に示したいときや、比較する3つの項目のうち1つの割合が極端に少ないときは、円グラフを使うとよいでしょう。

基本の4種類をマスターしてグラフに強くなる!

ここからは、基本となる4種類のグラフの特徴と用途について、詳しく解説していきます。

(1)「積み上げグラフ」:データの内訳を見せる
「データの内訳」を比較することに適したグラフです。データ全体の大きさを見せながら、その全体を構成する個別のデータの大きさや割合を視覚的に見せることができます。例えば、会社の地域別売上、売上構成、業界における市場シェアの時系列比較などに使われます。
(2)「横棒グラフ」:棒の長さで量を比較する
棒が長ければデータの量が多く、短ければ少ないことを表現できるグラフです。例えば、売上や利益、生産量、アンケートの回答の比較などで使用されます。項目名が長いときにも対応できます。縦棒グラフに代替できることが多いです。
(3)「縦棒グラフ」:棒の高さで量の大小を示す
棒の高さで変化を示すグラフで、左から右にデータを読んでいくのが特徴です。例えば、売上、販売数量、利益など、時間の経過に伴い変化していくデータの比較などに適しています。
(4)「折れ線グラフ」:増減や傾向を示す
「点で示す」「線で示す」という2つの特徴を持つグラフです。割合(%)や指数(過去のある年を100としたときの数値)のデータ比較に適しています。また、複数のデータの傾向を一度に示せることが強みで、複数の企業や商品の売上推移、市場シェアの推移を時系列で比較するときなどにも最適でしょう。
基本となる4種類のグラフ

「比較したいこと」が分かれば、使用するグラフが決まる

次に、どのような場合にどのグラフを選べばいいのか見ていきます。4種類の中から適切なグラフを選ぶために、「構成要素比較」「項目比較」「時系列比較」という3つの比較の種類ごとに、グラフを選ぶ基準を把握しましょう。比較するデータに応じてグラフを使い分けることで、伝わりやすい資料を作成できます。

(1)構成要素比較(データの内訳を比較する) ⇒ 「積み上げグラフ」を選ぶ
ある企業の地域別・商品別の売上の内訳など、ある1つの会社・商品の売上や利益を構成する要素を比較する場合には、「積み上げグラフ」を選びましょう。
(2)項目比較(独立したデータを比較する) ⇒ 内訳の比較は「積み上げ」、項目名が長い場合は「横棒」、項目名が短い場合は「縦棒」を選ぶ
複数の企業の売上データや、アンケートの回答データなど、互いに独立した項目同士を比較します。例えば次の図のように、複数の企業の売上比較では各社の売上データは互いに直接関係しませんし、アンケートの回答項目も互いに直接関係するわけではないため、項目比較となります。

この項目比較を行う場合は、「積み上げ」「横棒」「縦棒」の3種類からグラフを選びます。データの内訳を示す場合には、「積み上げグラフ」を使います。項目名が長い場合は「横棒グラフ」が、短い場合は「縦棒グラフ」がおすすめです。
構成要素比較、項目比較で選ぶグラフの例
(3)時系列比較(データの時系列での変化を比較する) ⇒ 内訳の比較は「積み上げ」、複数種類や%・指数の比較は「折れ線」、1種類のデータ比較は「縦棒」を選ぶ
データを時間で並べて、その変化を比較します。例えば、売上高の推移を見る場合がこれに当たります。また、市場規模や市場シェアの変動を比較することで、市場環境の把握や将来予測にも使われます。
時系列比較を行う場合は、「積み上げ」「折れ線」「縦棒」の3種類の中からグラフを選びます。

・データの内訳を時系列で比較する場合は「積み上げグラフ」
構成要素比較と時系列比較を組み合わせて示すことができます。例えば、自社の地域別売上高推移などを示す場合に使用します。

・%や指数、複数のデータを時系列で比較する場合は「折れ線グラフ」
例えば、自社の営業利益率推移や、前年同月を100としたときの月ごとの売上指数推移などを示すことができます。また、複数の企業や商品の売上推移や、市場シェア推移など、複数のデータを時系列で比較する場合にも向いています。

・上記以外を時系列で比較する場合は「縦棒グラフ」
1種類のデータ比較、特に%や指数などの加工された数字ではなく、売上高などの実数を示す場合に向いています。折れ線グラフでも実数を示せますが、データの大小を強調したいときは縦棒グラフの方が分かりやすいでしょう。
時系列比較で選ぶグラフの例

ここまで、グラフの選び方について見てきました。同じデータであっても、グラフの選び方や並べ方しだいで資料の印象が大きく変わってしまうこともあります。グラフは何となく選ぶのではなく、適切なものを選びましょう。

次回は「グラフの見せ方」です。より効果的なグラフの見せ方を身に付けて、説明いらずの一人歩きする資料の作成に役立てましょう。グラフの強調の仕方や、スマートに見える整え方について詳しく紹介していきます。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2023年5月