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5分でわかる 仕事効率化のツボ

アウトプットに圧倒的差を生む、仕事を効率化するポイントを紹介します。

vol.12

時短のために時間を使う!?
効率化を実現する「時間投資」とは。

時間に投資することで、スキルアップと業務の効率化を実現!

仕事の効率化を促すツールを使いこなす。これは時短の実現にはかなり有効な方法です。例えば、エクセルの関数やマクロ、あるいはコミュニケーションツールや管理ツールといった各種クラウドサービスなどを駆使すれば、大幅な効率化が可能になります。

実際に、私は次のような経験をしたことがあります。以前、私の部下で日々、4時間程度エクセルのデータ集計に手を取られている者がいました。彼が手を焼いていたのは、単純な繰り返し作業でした。私は、マクロを使えば定型作業を自動化できて一発で終わるはずだから、勉強してはどうかとアドバイスしました。しかしその後も、彼がマクロの勉強をしている気配はうかがえず、これまでと同じやり方を繰り返していました。

そこで、効率化のために勉強することの大切さを彼に知ってもらえるよう、私はその日からマクロの勉強を始めました。予備知識のないところから始めたので、トータル30時間ほどかかりましたが、私は彼が毎日約4時間かけていた仕事を数クリックで終わらせることに成功しました。

この例から、マクロを組む30時間の投資は、わずか8日間で元が取れ、その先もずっとその仕事に時間をかけずに済むことが分かります。

ビジネスパーソンの場合、自分のスキルアップに目を向ける人は案外少なく、この部下のように「目の前の仕事が忙しいときに、これ以上何かをやる余裕なんてない」と考え、今の仕事のやり方に疑問を持たなくなってしまいがちです。

しかし、実は忙しいときほど、問題解決のための「時間投資」が必要なのです。一時的に今以上に忙しくなるかもしれませんが、投資した時間よりも多くの余裕をきっと手に入れられるはずです。

そして何より、スキルアップのための投資は、長く使い続けられる何ものにも代えがたい自分の財産になるのです。

時間に投資する人と投資しない人の例

専門分野以外を学ぶ時間投資で、周りと差をつける!

さらに周りと差をつけるには、専門分野以外の知識も身に付ける姿勢が重要です。

例えば、営業職の場合、多くの工数をかけてようやく受注にこぎつけても、その後の契約段階で各種法律に苦戦してしまうというケースがあります。どのような業界であってもビジネスと法律は深く関係しており、民法、独占禁止法、不正競争防止法など、契約にまつわる法律は多岐にわたります。

法律の知識がないと、契約書のチェックは法務部門などに丸投げすることとなり、取引先との調整においても、商談を円滑に進められなくなってしまう可能性があります。

また、会計知識がないと、経理部門とスムーズにコミュニケーションを取ることが難しくなってしまいますし、ITリテラシーが乏しいと、情報システム部門からリスクや問題点を指摘され、対処に追われて進めるべき業務が滞ってしまうかもしれないのです。

他部門が絡む業務プロセスでうまくいかない原因として、自分の専門分野以外の知識が不足していることが挙げられます。

そこで重要になるのが、投資した時間で何を勉強するかです。自分の業務において軸となる専門スキルを伸ばすのはもちろんですが、苦手意識を持ちやすい周辺分野にも目を向けてみましょう。

基礎的な部分だけでも取り組んでみれば、それほど難しい内容ではないことに気づけるかもしれません。しかも、一度身に付けてしまえば、他部門とのトラブルも少なくなり、よりスムーズに業務を進められるようになるでしょう。

専門分野以外で何を学べばいいか分からないという場合は、ビジネスにおける「現代の三種の神器」と言われる「英語・会計・IT」、それに「法律」を加えたものの中から、業務に必要かつ苦手と思う分野を選んで勉強してみてはいかがでしょうか。

専門分野に加え、もう一つ何かの分野に精通していると、つまずきやすいポイントに対し、早めに対処でき、他の人よりスピーディーに仕事を進められます。ひいては、さらなる仕事の効率化につながる、というわけです。こうした人は、社内外で重宝されるでしょう。

集中タイムで、投資する時間をつくりだそう

時間に投資することの大切さは分かったものの、その時間を日常的につくりだすのが大変と思われるかもしれません。そこでおすすめしたいのが、仕事の「生産性」をもう一度見直してみるということです。

例えば、自分がどの時間帯に集中力が高まるか、把握しているでしょうか?

人の体調はさまざまで、活動しやすい時間帯も異なります。スロースターターなら、午前中に雑務や打ち合わせを多めに入れて体と頭を起こし、午後に集中力が必要な仕事に取り組めばいいのです。反対に朝型なら、スタートダッシュで集中して仕事を処理し、集中力が途切れがちな午後からは雑務や打ち合わせを多めにすると、効率が上がります。大切なのは、自分が集中しやすい時間帯を知ることです。

また、上司や部下の行動パターンをつかんで、それに合わせた集中タイムをつくることも一つの方法です。上司や部下がよく声をかけてくる時間帯には、集中タイムが邪魔されがちだからです。

1日を漫然と過ごすのではなく、自分の集中タイムを軸にして仕事を組み立てることで、仕事の効率を改善することにつながります。そうすることで時間的余裕が生まれ、自分自身に投資する時間がつくれるようになるでしょう。

仕事を効率化する基本は、手を動かすスピードを上げることではなく、時間を有効に使っているか、つまり「今やるべきことに専念しているか」です。

「今日やるべきことに集中する」
「『Must』か『Want』か? ムダな仕事に時間を費やさない」
「『自分でやった方が早い』は大きな勘違い」

など、これまで本連載で紹介してきた考え方や手法を活用することで、仕事の効率化や時短を実現できることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。即効性のあるものもあれば、徐々に効果を上げるものもありますが、大切なのは少しずつでも実践することです。そうすることで、アウトプットの質と量の向上につながるでしょう。皆さんも未来の自分のために、今できることに取り組んでみてください。

PROFILE

各務 晶久
各務 晶久かがみ・あきひさ
株式会社グローディア代表取締役。特定非営利活動法人人事コンサルタント協会理事長。中小企業診断士。大阪市人事に関する専門委員、大阪市特別参与、大阪商業大学大学院非常勤講師などを歴任。著書に『人材採用・人事評価の教科書』(同友館)、『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下』(朝日新聞出版社)、『会社では教えてもらえないアウトプットがすごい人の時短のキホン』(すばる舎)など。

記事公開:2022年11月