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5分でわかる 仕事効率化のツボ

アウトプットに圧倒的差を生む、仕事を効率化するポイントを紹介します。

vol.2

その仕事、今日の仕事?
「明日の前倒し」がムダなわけ。

「今日も残業だけど、仕方ない」? なぜ残業しているのかを改めて見直してみる

「仕事を先回りして片付ける人は有能」と言う人がいます。一見すると、正しい意見のように感じられますが、果たしてそうでしょうか?

一般的に、人が先回りして仕事を片付けようとする行為には、「今のうちに少しでも片付けておきたい」という心理が働いています。特に新人や若手の場合、実力や経験不足による不安から、何かとつい先に進めておきたくなってしまうものです。経験が浅いうちは、その姿勢が周囲から「一生懸命さ」や「ひたむきさ」として評価されることがあるかもしれません。しかし、これはベテランになっても続けるべきこととはいえないでしょう。

毎日10の業務をこなせばよいところを、前倒しして12も13も片付けてしまおうとすれば、残業が増えてしまうのは当然の結果です。さらに、これを周囲の人が見た場合、仕事にも慣れたはずの社員が、残業せずにこなせる分の仕事しか担当していないのにもかかわらず、余裕のない状態で残業をしているように感じられます。つまり、「仕事のできない人」に見えてしまうのです。

「前倒し」の仕事は悪循環を生んでいる

そうなると、よりレベルの高い仕事がその人に与えられる機会は減らされ、誰でもできる雑用ばかり押しつけられるようになっていきます。仕事を先回りして片付けて余裕を持たせるつもりが、空いたはずの自分の時間が雑用で埋められてしまいかねないのです。自らのスケジュールは雑用でかき乱されるうえに、生産性の低い雑用ばかりやっているわけですから、評価も上がらず、キャリアアップからも遠ざかります。

もしも、仕事の残業が続いているのであれば、まずその理由を整理してみましょう。先回りして少しでも仕事を片付けておこうという意図で残業しているのであれば、すぐにやめるべきです。

残業がもたらす疲労は、「よい仕事」の見えない敵

仕事を先回りして片付けておこうと思って残業してしまうことの最大のデメリットは、残業による疲労です。長時間働けば、それだけ疲れて思考力は低下します。残業をしたがために、本来発揮できるはずのパフォーマンスができなくなるのは、本末転倒です。

なぜなら、会社が求めているのは「残業代を増やす人」ではなく、「成果を出す人」だからです。特に、経験を積んだ社員の多くには、売り上げアップ方法の立案、新企画・新事業の立ち上げなど、創造的な仕事が求められます。しかしながら、残業で疲労が蓄積した身では思考力が低下し、仕事の効率化は望めず、創造的に仕事をする姿勢も失われていくばかりです。

つまり、ポジションが上がるほど「残業して頑張る」という働き方は見直されるべきなのです。特に、在宅勤務やリモートワークなど、働き方が多様化している今は、普段自分がなぜ残業しているのか、どれくらい疲労をためているのか、そして本来自分に求められているものは何かを見直すよいタイミングともいえるでしょう。

万が一、「会社から遅くまで働くように強制されている」というのなら、転職を考える以外に解決策はないかもしれません。しかし、「個人の成績が悪いから残業する」「頑張っている姿勢を見せなければならないから残業する」という場合は、残業に励むのをよしとするのではなく、成果や効率を重視する考え方に切り替えましょう。

よりよい職場を作るために。「早く上がる先駆者」になろう!

仕事を先回りして片付けるよりも大事なのは、「今日やらなければならない仕事を見きわめる」ことです。「今日やっておきたい仕事」を探し始めると、あれもこれも……と考えてしまい、誰しもが結果的に残業するはめに陥ってしまうものです。毎日、仕事を始める前に「今日やらなければならないタスク」をリストアップすることをおすすめします。

このリストアップは新人の頃、日報などで半ば義務として行っていても、年を経るにしたがって省略してしまっている人も多いかもしれません。しかし、朝にはっきりと書き出した「今日やらなければならないタスク」だけに絞りこんで、定時までの間にそこだけに集中する癖をつければ、仕事を効率的に進めやすくなります。なぜなら、残業ありきで考えて仕事をすると、効率を意識しないまま、だらだらと進めてしまいがちですが、限られた時間で仕事を片付けようとすると、自然と効率を意識して仕事をするようになるからです。

また、今日やらなければならないことだけに集中すれば、時間のうえでも気持ちのうえでも余裕が生まれるため、よいアイデアが生まれて創造的な仕事がしやすくなります。時間に余裕ができたら、自分を磨く勉強の時間にあててもいいでしょう。

「職場に何となく、自分だけ早く帰るのが気まずい雰囲気がある」というのなら、「まず自分が率先して早く帰る」のを心がけてみるのも手です。新人の頃より自由が利きやすい立場で行動を起こせば、その後輩や部下も気兼ねなくムダな残業から解き放たれて、本来の実力を発揮しやすくなるはずです。

残業が慢性化しているような職場、組織には、いつまでたっても業績の向上や将来性、ひいては一人ひとりの働きがいは期待できません。重ね重ねになりますが、仕事で重要なのは成果が出ることなのです。

PROFILE

各務 晶久
各務 晶久かがみ・あきひさ
株式会社グローディア代表取締役。特定非営利活動法人人事コンサルタント協会理事長。中小企業診断士。大阪市人事に関する専門委員、大阪市特別参与、大阪商業大学大学院非常勤講師などを歴任。著書に『人材採用・人事評価の教科書』(同友館)、『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下』(朝日新聞出版社)、『会社では教えてもらえないアウトプットがすごい人の時短のキホン』(すばる舎)など。

記事公開:2021年4月