仕事のマニュアルは後任者のためだけのもの?
仕事では、「型」が重要とされます。
仕事における「型」とは、これまで前任者や諸先輩が作り上げてきたやり方のことであり、そこには効率的な方法、間違いを犯さないための工夫が凝縮されています。
武道においても「型」は重視されており、武道の型には、効率的な力の使い方やケガをしないための所作が凝縮されています。型を身に付けずに試合をするとケガをしてしまうので、きちんとした型を身に付けるまでは試合をさせてもらえません。
同様に、仕事を進めるうえで前任者が作り上げてきたやり方を無視して自己流で挑むと、ケガ(失敗)のもとになります。
それは、年齢を重ねて企業の慣習に慣れても、ポジションが上がっても変わりません。部署を異動したり、取引先が変わったりといった場合は、やはり型を身に付けるところから始めるべきだといえるでしょう。そして、いつも仕事でばたついていて「なぜか効率的に進まない」と嘆いている人は、仕事の型が身に付いていない場合が少なくありません。
仕事の型を早く正しく身に付けること、つまり、業務の習熟に大きな影響を与えるのがマニュアルです。
マニュアルというと、一般的には「マニュアル人間」「マニュアル的なサービス」などと、マイナスなイメージで捉えられがちですが、ビジネスにおけるマニュアルは、実は効率化のためのありがたいお手本です。
例えば、定期的にこなしているはずの請求書作成のような仕事でも「あれ、先月分はどう処理したっけ?」と昔のデータを見返したり、「何か仕様変更の連絡があった気がする」とメールを探したりすることはないでしょうか。こんなときも、マニュアルさえあれば仕事の流れが理解しやすくなるうえに、ミスも減らせてサクサクと進められる「参考書」になるのです。
ただし、マニュアルを参考書にできるのは、「内容がきちんと整えられていれば」という前提があればこそです。ところが、マニュアルが必要となる複雑な仕事ほど、マニュアル作りに手間がかかるため、内容がきちんと整備されてないケースが多いのです。
そういうときには、自分でマニュアルを作ってしまいましょう。
マニュアルは、後任への引き継ぎに作るものだと考えている人も多いですが、自分自身が業務を覚える、さらに改善して効率化を進めるのに非常に役立つものなのです。
また、マニュアルがある場合でも、自分の使いやすいように改良に取り組んでみるとよいでしょう。一見時間がかかるように見えても、日々の仕事に忙殺される中で、頼れるマニュアルがあるというのは非常に心強いものです。
特に、ポジションが上がって仕事が増えている状況にある人は、自分が抱えている仕事に関して、あらためて明文化しマニュアルを作成してみるのをおすすめします。マニュアルは後任のためでなく、自らの時短のために役立つのですから。