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5分でわかる 仕事効率化のツボ

アウトプットに圧倒的差を生む、仕事を効率化するポイントを紹介します。

vol.7

効率化に必須の
「上司と納期のマネジメント」とは?

上司の無茶振りはなぜ起きる? 対処の武器になる「一言」とは

一般的にビジネスパーソンは、社内でポジションが上がると、複数の案件を並行して進めていくマルチタスク型の仕事スタイルに切り替わります。そうなると、締め切り前の仕事がいくつか並行し、余裕のない状態が続くことも珍しくありません。

ところが、そういう状況のときに限って上司から飛び込みで仕事を振られてしまう……というのは、よくある話です。

なぜこんなことが起こるかといえば、上司は、自らの仕事におけるTO DOリストを作成して仕事を管理していても、あなたのTO DOリストまで管理しているわけではないからです。中には、「自分のTO DOリストをシステムで上司と共有している」と安心している人もいるかもしれませんが、上司が逐一それを把握して部下に仕事を指示しているとは限りません。あなた自身を振り返ってみても、上司や後輩が抱えている日々の仕事を把握できていないのではないでしょうか。

このように上司から急に仕事を振られた場合、あなたを救う方法があります。それは「お急ぎでしょうか?」と、一言聞くことです。

そう聞かれた上司は、「何か無茶振りでもしたかな?」と思い、あなたに「他に急ぎの仕事があるの?」と質問するはずです。そこで「急ぎの仕事でこれとこれを抱えていますが、そちらをお急ぎですか?」と、事実をきちんと伝えて相談するようにしましょう。

仕事を振られたときは「一言」を忘れずに

上司から急に仕事を振られたときは「ふたつ返事で引き受けるのが正しい」と考えてしまいがちです。もしかしたら、若手社員のうちは無茶振りにどんどん応え、思わぬタイミングでいろいろな仕事を経験できることにやりがいが感じられた人もいるかもしれません。それで万が一自分のキャパシティーを超えてしまっても、周囲に「若手だから仕方ない」と許してもらった経験がある人もいるでしょう。

しかし、ある程度のポジションを得た段階で、仕事を抱え込みすぎて他の急ぎのものを放置してしまったり、自分のキャパシティーを超えて誰かに迷惑をかけたり、ということがあれば、周囲の目には「責任感のない人」と映ります。上司の信用、そして職場での信頼を一気に失う結果になりかねません。

一方で、仕事を引き受ける際に優先順位を確認してくる部下は、上司にとって「しっかり考えながら仕事をする頼もしい存在」に見えます。また、そういう部下は、上司から無茶振りをされづらくなります。

そして、大事なのは、たとえ無茶振りをされた場合でも「自分から仕事を断らない」ということです。上司の指示に前向きに応じる姿勢を示しつつ、抱えている仕事との兼ね合いを相談するのが、望ましい対応といえます。

仕事に取りかかる前に「納期」を決めて上司と共有する

飛び込みの仕事を上司から振られたときに「お急ぎですか?」と確認することで、自らの仕事の優先順位を調整しやすくなるのと同じように、一言質問するだけで仕事を進めやすくなる方法が、もう一つあります。「いつまでにやればいいですか?」と言って、お互いの共通認識となる納期を決めてしまうことです。

納期を起点にスケジュールを組み立てれば、それに向けてどういう手順を踏むのか、どう進めれば効率的かを考えやすくなり、段取りを調整しやすくなります。
現在から未来を考えるのではなく、決まった長さの「未来」を起点にして現在にさかのぼりながら、各時点でのやるべきことを決めていく手法を「バックキャスティング」といいますが、目の前の仕事にもその考え方は応用できるのです。

反対に、納期を曖昧にしたまま進めると、細かな点にこだわり続け、いつまでたっても仕事が終わらないという結果に陥りやすくなるものです。仕事を頼んだ側の感覚としても、納期が決まっていないと「頼んだ仕事がまだ終わっていない」とすぐに感じやすくなります。だから上司は、納期を確認してこない部下に対しては、不安を感じて仕事をむやみにせかしたり、頻繁に報告を求めたりしがちになります。コミュニケーションコストを抑えるためにも、納期の決定は有効です。

急ぎの仕事を振られたときは納期を決める

そして、納期を決めて仕事を進めるうちに、決めた期間では最低限の品質を確保できないと気づいたら、その段階で上司に相談し、納期を再調整してもらいましょう。想定される問題点は、先回りしてつぶしておくのが仕事の効率化のポイントです。

振られるとわかっている仕事は主導権を取って印象アップも図る

急に上司に仕事を無茶振りされる以外でも、自分に割り振られるとわかっている仕事を「他の仕事もあるので後回しにしたい」と思うような状況も、年を経るごとに増えてくるでしょう。

こういう場合は、自分から上司に一言伝え、その仕事を後回しにさせてもらうのが最善の解決策です。

しかし、上司に後回しにさせてもらう交渉をする気にはなれない人も多いでしょう。上司の立場に立ってみれば、仕事を頼んだ部下に「明日でいいですか?」と言われると、自分の指示を軽んじられているように感じてしまい、快く思わないのも事実です。

このような場合に上司からの印象をうまくコントロールするには、来るとわかっている仕事を指示されるより前に、こちらから「例の件ですが、今これとこれで手いっぱいなので、明日でよろしいでしょうか?」と伝えるのが効果的です。「仕事を明日に回したい」と伝えていることには変わりありませんが、上司に与える印象がまるで違います。

来るとわかっている仕事は先回りして主導権を握る

自分のところへやってくるとわかっている仕事は、たいてい予想どおり自分がやることになります。それなら、こちらから上司に働きかけて主導権を握り、スケジュールを効率的にコントロールするほうが得策です。

それに対して、受け身のままでは、上司が主導権を握って部下の都合は軽視されがちになり、仕事の効率化が進まない結果となるのは目に見えています。

このように、仕事の効率化には、上司対策と納期コントロールが不可欠であると心得ましょう。さらに、後輩、部下にも納期の確認を徹底するように指導できれば、職場全体での働き方改革も進むはずです。

PROFILE

各務 晶久
各務 晶久かがみ・あきひさ
株式会社グローディア代表取締役。特定非営利活動法人人事コンサルタント協会理事長。中小企業診断士。大阪市人事に関する専門委員、大阪市特別参与、大阪商業大学大学院非常勤講師などを歴任。著書に『人材採用・人事評価の教科書』(同友館)、『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下』(朝日新聞出版社)、『会社では教えてもらえないアウトプットがすごい人の時短のキホン』(すばる舎)など。

記事公開:2022年1月