さらに、Aさんの行動の特徴として、集中力が途切れる約90分おきに、電話をまとめて掛けるという点が見られました。しかも、他部門から問い合わせがありそうな件については、相手が電話を掛けてくる前に先回りしていたのです。
例えば、「提出物が遅れているため、相手から催促される前に先回りして電話連絡する」「そろそろ進捗確認が入りそうな件で、先回りして報告する」「取引先から電話が入る予定日なので、こちらから掛ける」といった具合です。
自分の都合のいいときに電話を掛けるのと、相手の都合で掛かってくるのとでは、仕事のペースの乱され方がまるで違ってきます。この点はメールについても同じで、やるべき作業を中断される可能性がある場合、こちらから働き掛けてさばいておくのが、自分の時間を確保するコツです。
Aさんの行動を見ていて気付いたのですが、Aさんは時間の効率化を意識して動いているというより、業務のマネジメントが「能動的」なのです。
「何事も先回りして考え、トラブルや失敗の種に対処しておけば、効率化にもつながる」
これが大事です。成り行き任せの行動は、管理職にとって、最も避けるべきものと心得ましょう。
さて、私はこのようなAさんの時間の使い方を参考にして、コンサルティングで関わった会社に対して、1日のうちで「打ち合わせを集中して行う時間帯」と「電話連絡を集中して行う時間帯」を全社的に取り決め、全社員の行動予定に組み込みました。
「打ち合わせの時間帯」については、これまで管理職が自分の手を止められても「後にしてほしい」と言い出せずにいたのが、「それは打ち合わせの時間帯にしよう」とルールを持ち出すだけで済むことになりました。また、部下の方も、上司の思い付きで話し掛けられる回数が減ったため、作業効率がアップしました。
一方、「電話連絡の時間帯」については、内線電話が集中して相手につながりにくくなるという問題が起きたため、主に外線電話の利用に絞ることにしました。それでも、このルールの運用から3カ月後に取り組みの効果を測定したところ、管理職の業務中断が「約15分に1回」から「約30分に1回」へと半減しました。一般社員の業務中断も、「約30分に1回」から「約50分に1回」に減りました。
打ち合わせや連絡によって業務が中断する頻度を減らす取り組みは、雑務に時間を取られずに知的作業に集中する時間を増やすことにもつながり、ひいては、会社の生産性向上が期待できます。この機会にぜひ取り組んでみてください。