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5分でわかる 仕事効率化のツボ

アウトプットに圧倒的差を生む、仕事を効率化するポイントを紹介します。

vol.9

管理職の仕事は15分に1回、中断させられている!?
中断されない時間をつくる秘訣とは。

思い付きで部下に状況確認、その場で打ち合わせをするのは非効率

管理職になると、一般的に部下の数に比例して打ち合わせが多くなるものです。具体的には、部下からの報告、決裁に際しての説明、相談、他部門や顧客からの電話などですが、このような時間が増えれば、集中して考えたり、検討するのに頭を働かせたりといった、知的作業に没頭するまとまった時間が取りにくくなります。

私がコンサルティング業務を通じて顧客の行動分析を行った結果では、管理職はオフィスにいる間、平均して約15分に1回のペースで(一般社員は約30分に1回)、誰かに呼び掛けられ、作業を中断しています。

また、思い付いたときに部下の進捗(しんちょく)を確認しようとして声を掛け、問題を抱えていそうだと分かったら、そのまま打ち合わせに突入してしまう管理職も少なくありません。

しかしこうしたケースでは、部下の方は問題点を整理できていない状態であることが多く、聞かれてもしどろもどろになってしまい、詰問や説教を受けている気分になります。さらに、思い付くたびに話し掛けるため、部下も自分も業務を中断する回数がどんどん増えてしまいます。

部下との打ち合わせは、自分の都合のいい時間帯にまとめて行う

私が出会った管理職の方で、平均45分以上のまとまった時間を確保している人がいます。仮に、その人をAさんとします。Aさんの仕事は一人で完結するものではなくチームで行うもので、また、Aさんの部下の数がほかの管理職に比べて特に少ないわけでもありません。

なぜ、Aさんがまとまった時間を確保しながら、管理職として仕事ができるのかというと、打ち合わせを自分の都合のよい時間にまとめて行うよう、うまくコントロールしているからです。

例えば、午前中に部下の業務の進捗確認を行って、打ち合わせが必要だと判断したら、「今日の○時に時間を空けておくから、詳しく話そう」というふうに伝えます。

部下の方は、それまでに準備をして打ち合わせに臨めるため、論点を絞ることができて、結果的に打ち合わせは短時間で済みます。

Aさんは、1日3回の打ち合わせの時間帯をあらかじめ決めておいて、部下からの相談や決裁などは、その時間帯でまとめて行うようにしています。

Aさんから打ち合わせを持ち掛ける場合は、必ず時間帯を設定し、またAさんの予定が空いていれば、部下は自由に予定を押さえてよいことになっています。そうすると、部下もAさんの都合を心得ている分、お互い集中して話せるようになるのです。

もちろん、急を要する件は、その都度打ち合わせを行いますが、なるべく自分と部下の時間が細切れにならないよう工夫します。

打ち合わせや連絡を行う時間帯を決めるメリット

仕事のペースが乱されないよう、先回りして行動する

さらに、Aさんの行動の特徴として、集中力が途切れる約90分おきに、電話をまとめて掛けるという点が見られました。しかも、他部門から問い合わせがありそうな件については、相手が電話を掛けてくる前に先回りしていたのです。

例えば、「提出物が遅れているため、相手から催促される前に先回りして電話連絡する」「そろそろ進捗確認が入りそうな件で、先回りして報告する」「取引先から電話が入る予定日なので、こちらから掛ける」といった具合です。

自分の都合のいいときに電話を掛けるのと、相手の都合で掛かってくるのとでは、仕事のペースの乱され方がまるで違ってきます。この点はメールについても同じで、やるべき作業を中断される可能性がある場合、こちらから働き掛けてさばいておくのが、自分の時間を確保するコツです。

Aさんの行動を見ていて気付いたのですが、Aさんは時間の効率化を意識して動いているというより、業務のマネジメントが「能動的」なのです。

「何事も先回りして考え、トラブルや失敗の種に対処しておけば、効率化にもつながる」
これが大事です。成り行き任せの行動は、管理職にとって、最も避けるべきものと心得ましょう。

さて、私はこのようなAさんの時間の使い方を参考にして、コンサルティングで関わった会社に対して、1日のうちで「打ち合わせを集中して行う時間帯」と「電話連絡を集中して行う時間帯」を全社的に取り決め、全社員の行動予定に組み込みました。

「打ち合わせの時間帯」については、これまで管理職が自分の手を止められても「後にしてほしい」と言い出せずにいたのが、「それは打ち合わせの時間帯にしよう」とルールを持ち出すだけで済むことになりました。また、部下の方も、上司の思い付きで話し掛けられる回数が減ったため、作業効率がアップしました。

一方、「電話連絡の時間帯」については、内線電話が集中して相手につながりにくくなるという問題が起きたため、主に外線電話の利用に絞ることにしました。それでも、このルールの運用から3カ月後に取り組みの効果を測定したところ、管理職の業務中断が「約15分に1回」から「約30分に1回」へと半減しました。一般社員の業務中断も、「約30分に1回」から「約50分に1回」に減りました。

打ち合わせや連絡によって業務が中断する頻度を減らす取り組みは、雑務に時間を取られずに知的作業に集中する時間を増やすことにもつながり、ひいては、会社の生産性向上が期待できます。この機会にぜひ取り組んでみてください。

PROFILE

各務 晶久
各務 晶久かがみ・あきひさ
株式会社グローディア代表取締役。特定非営利活動法人人事コンサルタント協会理事長。中小企業診断士。大阪市人事に関する専門委員、大阪市特別参与、大阪商業大学大学院非常勤講師などを歴任。著書に『人材採用・人事評価の教科書』(同友館)、『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下』(朝日新聞出版社)、『会社では教えてもらえないアウトプットがすごい人の時短のキホン』(すばる舎)など。

記事公開:2022年3月