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分かりやすい!説明のコツ

分かりやすく説明する「型」やポイントを紹介します。

vol.01

上手な説明には「型」がある!
まずは3つの基本の型を覚えよう。

話のポイントが見えないと相手は耳を傾けなくなる

「説明力」は、顧客への営業や、上司へのプレゼンテーションを日常的に行っているビジネスパーソンにとって必須のスキルです。ところが、「一生懸命説明しているのに、まったく聞いてもらえない」とか、「何をどう説明したらいいのか、分からない」と悩んでいる方が、意外に少なくありません。

この連載では、そうした方々のために、どうすれば「聞いてもらえる説明」「分かってもらえる説明」ができるのかについて、実践的な活用例を交えながら解説します。

加えて、ただ聞いてもらう、分かってもらうだけでなく、説明によって相手の「行動変化」を促し、変化した行動を「持続させる」ための方法についても紹介していきます。

こうした「説明のコツ」は、営業の方ならお客さまに商品やサービスを「買ってもらい」「買い続けてもらう」ことに、人事の方なら従業員に「学んでもらい」「学び続けてもらう」ことに役立つはずです。もちろん、ほかにもさまざまなビジネスシーンで活用できますので、ぜひ試してみてください。

説明の3つのフェーズ 説明の3つのフェーズ

この連載で解説する「聞いてもらえる説明」「分かってもらえる説明」とは、言い換えれば、「相手に伝わりやすい説明」です。

相手に伝わりにくい説明、例えば「何を言っているのか、分からない」「話のポイントが見えない」ような説明を受けると、人はそれ以上耳を傾けようと思いづらくなるものです。場合によっては、そんな説明を延々と聞かされるのは「時間の無駄」だと受け取られてしまい、説明する人への評価も下がってしまいかねません。

一方で、説明する人にとっても、時間をかけて説明してもなかなか理解してもらえないのでは、コストパフォーマンスがよくありません。その上、ポイントをつかんでもらえず、言いたいことを誤解されてしまったら、大きな損失につながる恐れもあります。

つまり、「伝わりにくい説明」はコストやリスクを増大させかねないのです。

なぜ、結論から先に言っても伝わらないのか?

では、どうすれば「相手に伝わりやすい説明」ができるのでしょうか?

大切なのは、話の「組み立て方」です。

よくある失敗の1つが、話の組み立てをせずに説明を始めてしまうことです。思いついた順や、自分が話したい順に説明しようとすると、伝えたいことが分散し、着地点を見失ってしまいます。その結果、相手にとっては分かりにくい説明になり、「で、結局、何が言いたいの?」と思われてしまうわけです。

「それならば、1つのパターンを決めて常にその順番で説明しさえすればいいのか」と思うかもしれませんが、コトはそう簡単ではありません。なぜなら、説明の組み立て方は、話す相手や説明の目的、シチュエーションなどによって変わってくるからです。

相手に伝わりやすい説明のセオリーとして、「結論から先に言う」ことをアドバイスする方もいますが、これは決して万能の方法ではありません。説明の目的や、そのテーマに関連する相手の知識、説明する状況によっては、「結論ファースト」で話を始めることが逆効果になる場合もあるのです。

例えば、ITやテクノロジーの知識が乏しい上司に、「わが社の生産性を飛躍的に向上させるには、生成AIの導入が必須です」と結論から言っても、なかなか伝わりにくいでしょう。「生成AIの導入」が説明の最終目的だとしても、相手の知識が不十分なら、まずは生産性向上の重要性から説き起こし、そもそも生成AIとはどんな技術なのか、その導入によってどのような効果が得られるのか、といったことを簡潔に順序よく説明するのが望ましいといえます。

話す相手や説明の目的、シチュエーションは千差万別ですから、説明の組み立て方も、それらに合わせて最適なものを選ぶ必要があります。

私はもともと、塾や予備校の講師として20年ほど登壇し、生徒たちにさまざまな説明を行ってきました。独立後も、コンサルティングやプレゼン、営業、商談などの仕事を通じて説明を数多くこなし、今日に至っています。

その経験をもとに、説明の組み立て方を「型」として分類しました。どんなシチュエーションで、どの型が使えるのかということを詳しく解説していきます。

基本の3つの型「CRF法」「SDS法」「PREP法」

1回目となる今回は、基本の型として「CRF法」「SDS法」「PREP法」の3つを紹介します。

●CRF法
Cは「結論(Conclusion)」、Rは「理由(Reason)」、Fは「事実(Fact)」。結論から先に伝え、その理由を説明した上で、理由を下支えする事実を提示します。具体的には、以下のようになります。

C「今年は、人材育成の予算を昨年の1.5倍にしたいと考えています」
R「何とか離職率を下げたいからです」
F「現に、昨年の離職率は過去最悪で、中には『成長実感が得られない』という理由で退職した新入社員もいます」

この型は、短い時間で相手の反応を引き出せるため、さまざまなビジネスシーンで活用できます。相手がすでに聞く態勢を取れていたり、前提を共有できていたりする場合は非常に効果的です。
●SDS法
まず、説明する内容の「概要(Summary)」を伝え、次に内容の「詳細(Details)」を説明。最後にもう一度「まとめ(Summary)」を伝え、相手の記憶に残りやすくします。以下に例を示します。

S「今回の企画はデザインがポイントです」
D「詳しくお話しすると、従来はデザインに難があり、購入を控えた方もいたようです」
S「以上をまとめますと、デザインの見直しこそが販売の後押しになるのです」

説明の概要だけなど、相手にこれだけはどうしても覚えてもらいたいという情報があるときに有効な型です。会議などでの報告・連絡・相談にも使いやすいでしょう。
●PREP法
最初に自分の主張や提案の「結論(Point)」を伝え、次に結論の根拠となる「理由(Reason)」を添えます。さらに理由のイメージが湧く「具体例(Example)」を挙げ、最後にもう一度「結論(Point)」を提示します。例えば、次のようなものです。

P「まず結論としては、このサービスは続けるべきだと思います」
R「理由としては、お客さまからこれだけの要望があるからです」
E「例えば、先日もこんなメールをいただきました」
P「以上、このサービスについては継続したほうがよいというのが今回の結論です」

PREP法は、CRF法とSDS法のハイブリッドともいえる型です。プレゼンや会議、報告など、幅広いビジネスシーンで活用できます。
基本の3つの型「CRF法」「SDS法」「PREP法」の違い 基本の3つの型「CRF法」「SDS法」「PREP法」の違い

次回からは、より個別の状況に応じた説明の型を紹介していきます。

わかりやすい説明のコツ

分かりやすい説明のコツ

まずは、基本の3つの型である
「CRF法」「SDS法」「PREP法」をマスターする

PROFILE

犬塚 壮志いぬつか まさし
(株)士教育 代表取締役。東京大学大学院学際情報学府を修了。駿台予備学校講師を経て独立。講座開発や教材作成のサポート、講師養成のプロデュース事業を開始。企業向け研修講師としての登壇実績も豊富で、「説明力」をテーマにした研修プログラムは官公庁や大企業から中小企業まで人気を博している。専門領域は、「学習」「知能」。言語化やコミュニケーション、思考法の指導を得意とする。著書に『説明組み立て図鑑』『頭のいい人の対人関係』など。
犬塚 壮志

記事公開:2024年4月