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分かりやすい!説明のコツ

分かりやすく説明する「型」やポイントを紹介します。

vol.02

認識のズレ、方向性のブレを防ぐ!
「前提共有」「テーマ設定」の型とは。

相手に誤解を与えるような説明を避けるには?

今回からは、シチュエーション別に、相手に理解してもらいやすい説明の「型」を紹介していきます。

説明をするときに絶対に避けなければならないのは、相手に誤解を与えてしまうことです。もちろん、わざと誤解を招くような説明をすることはないと思いますが、認識や理解のズレによって、聞き手に意図と違う解釈をされてしまうといったことはよくあるものです。

そこで今回は、相手との認識のズレをなくして誤解を与えないようにするための、使える説明の「型」を紹介します。さらにもう1つ、会議や打ち合わせなどで、話題の方向性がブレないようにするための「型」もお教えします。

「かみ合わない」がなくなる!? 相手と認識を合わせる「前提共有」の型

まずは、相手との認識合わせに役立つ「前提共有」の型です。

ここでは、顧客への営業を例に挙げて説明しましょう。どんなに優秀な営業担当者でも、思い通りに契約が取れることはそう多くありません。お客さまのもとに何度も足を運び、商品やサービスの魅力を繰り返し伝えた結果、ようやく成約を勝ち取れるというのが一般的ではないでしょうか。

しかし、お客さまも忙しいため、なかなかすぐには会ってもらえません。前回の訪問から数週間、数カ月経って、ようやく2度目のアポイントが取れた、なんてことも珍しくないはずです。

「前提共有」の型は、そんな、「前回話したときから時間が空いてしまった場合」の説明に有効な「型」です。

具体的には、次のようなステップで説明を進めます。

ステップ1 前提を共有する
「前回は、◯◯まで話が進んでいたかと思います」
ステップ2 その前提に基づいた、以降の説明の合意をとる
「この前提に則って説明していきますね」
ステップ3 本題のテーマや結論を伝える
「そこでお伝えしたいことは……」

もし、お客さまが前回の話を覚えていなかった場合は、ステップ1から2に移る前に、まずは前回の話をおさらいしましょう。

「ああ、そうだったね」と、お客さまが思い出せば、その後の説明もスムーズに聞いてもらえるはずです。「ここまでは理解できている」という共通の「前提」があるからこそ、追加の情報(ステップ3)も受け入れやすくなるのです。

逆に、前回の話はすっかり忘れてしまっているのに、自分は分かっているからといって話を進めようとすると、お客さまは混乱してしまいます。

説明を始める前に「前提」を共有すること(ステップ1)は、お客さまとの認識のズレや誤解をなくすためにも重要です。このステップを省略してしまうと、思わぬトラブルや損失を招いてしまう可能性があるため、くれぐれも注意しましょう。

例えば、今回は決裁の判断をしてもらうつもりで話を進めていたのに、お客さまはまだその段階の話とは考えていなかった場合、「まだ検討中」とか「それは聞いていない」という反応をされてしまい、話がかみ合わなくなる可能性があります。

リスク回避のためにも、「前提共有」はしっかりと行うことが大切です。

会議で話題の方向性を定める「テーマ設定」の型

次に、会議や打ち合わせで話題の方向性がブレないようにする説明の「型」を紹介しましょう。

「テーマ設定」の型というもので、その名の通りテーマを先に示し、参加者が考える道筋や議論の方向性を1つにします。

具体的には、次のように進めます。

ステップ1 テーマ(お題)を伝える
「本日のミーティングのテーマは◯◯です」
ステップ2 トピック(事項)の数を示す
「議論していただきたいトピックは3つあります」
ステップ3 具体的なトピック名を伝える
「具体的には、A、B、Cについて話し合っていただきます」

この「型」は、具体的に議論してもらったり、理解してもらいたかったりすることが複数あり、説明が細部にわたる場合に用いると、より効果を発揮します。

例えば、会議の進行役から、何の前触れもなく突然「今日のトピックは、新製品の価格の取り決めとイベント実施とメディアへの告知方法です」と言われたら、あなたは何から考えたらいいのか理解できるでしょうか?

この場合、「今日は、来月発売する新商品のプロモーション戦略について議論したいと思います」と、前置き(テーマ)を入れたほうが分かりやすいはず。

このように「テーマ設定」の型は、これから説明する内容でどんなことを考えてほしいのか、どういった議論をして、最終的にどのような結論を導き出したいのかを方向付けるのに有効です。

この「型」を利用する際のポイントは、トピックを具体的なイメージや議論ができるレベルまで分解することです。テーマとトピックは、次の図のように抽象と具体の関係にあります。

テーマとトピックの関係

「新商品のプロモーション戦略」という抽象的なテーマだけでは、「何を話し合えばいいのか?」となりがちですが、「価格の設定」「イベントの実施」「メディアへの告知」というように具体的なトピックに落とし込めば、参加者は考えたり、議論したりしやすくなるはずです。

注意したいのは、トピックの数をあまり多くしないこと。3つ以内にとどめたほうが参加者の心理的負担は減り、議論も活発化するでしょう。

早速、次のミーティングや打ち合わせで試してみませんか?

わかりやすい説明のコツ

分かりやすい説明のコツ

「前提共有」の型で
お客さまとの認識のズレをなくし、
「テーマ設定」の型で
話題の方向性を定める

PROFILE

犬塚 壮志いぬつか まさし
(株)士教育 代表取締役。東京大学大学院学際情報学府を修了。駿台予備学校講師を経て独立。講座開発や教材作成のサポート、講師養成のプロデュース事業を開始。企業向け研修講師としての登壇実績も豊富で、「説明力」をテーマにした研修プログラムは官公庁や大企業から中小企業まで人気を博している。専門領域は、「学習」「知能」。言語化やコミュニケーション、思考法の指導を得意とする。著書に『説明組み立て図鑑』『頭のいい人の対人関係』など。
犬塚 壮志

記事公開:2024年6月