まずは、相手との認識合わせに役立つ「前提共有」の型です。
ここでは、顧客への営業を例に挙げて説明しましょう。どんなに優秀な営業担当者でも、思い通りに契約が取れることはそう多くありません。お客さまのもとに何度も足を運び、商品やサービスの魅力を繰り返し伝えた結果、ようやく成約を勝ち取れるというのが一般的ではないでしょうか。
しかし、お客さまも忙しいため、なかなかすぐには会ってもらえません。前回の訪問から数週間、数カ月経って、ようやく2度目のアポイントが取れた、なんてことも珍しくないはずです。
「前提共有」の型は、そんな、「前回話したときから時間が空いてしまった場合」の説明に有効な「型」です。
具体的には、次のようなステップで説明を進めます。
- ステップ1 前提を共有する
- 「前回は、◯◯まで話が進んでいたかと思います」
- ステップ2 その前提に基づいた、以降の説明の合意をとる
- 「この前提に則って説明していきますね」
- ステップ3 本題のテーマや結論を伝える
- 「そこでお伝えしたいことは……」
もし、お客さまが前回の話を覚えていなかった場合は、ステップ1から2に移る前に、まずは前回の話をおさらいしましょう。
「ああ、そうだったね」と、お客さまが思い出せば、その後の説明もスムーズに聞いてもらえるはずです。「ここまでは理解できている」という共通の「前提」があるからこそ、追加の情報(ステップ3)も受け入れやすくなるのです。
逆に、前回の話はすっかり忘れてしまっているのに、自分は分かっているからといって話を進めようとすると、お客さまは混乱してしまいます。
説明を始める前に「前提」を共有すること(ステップ1)は、お客さまとの認識のズレや誤解をなくすためにも重要です。このステップを省略してしまうと、思わぬトラブルや損失を招いてしまう可能性があるため、くれぐれも注意しましょう。
例えば、今回は決裁の判断をしてもらうつもりで話を進めていたのに、お客さまはまだその段階の話とは考えていなかった場合、「まだ検討中」とか「それは聞いていない」という反応をされてしまい、話がかみ合わなくなる可能性があります。
リスク回避のためにも、「前提共有」はしっかりと行うことが大切です。