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分かりやすい!説明のコツ

分かりやすく説明する「型」やポイントを紹介します。

vol.03

時間がないときの説明に役立つ!
「抜粋」「要約」の型とは。

高い意思決定権を持つ相手ほど「話を聞いてもらえる時間」は限られている

ビジネスシーンでは、伝えたい情報をなるべく短く、簡潔に伝える必要に迫られることが珍しくありません。

特に、社長や役員などの高い意思決定権を持つ方々は、多忙で仕事の相談や打ち合わせの時間があまり取れないことが多く、せっかく面会のチャンスが得られても「手短に話してほしい」と急かされることも少なくないでしょう。

伝えたいことはたくさんあるのに、限られた時間の中では全てを伝えきれないことが予測される場合、どんな説明の方法をとればいいのでしょうか?

今回紹介する「抜粋」の型、「要約」の型は、そんなシチュエーションできっと役に立つ説明法です。

大事な部分だけに絞って説明する「抜粋」の型

まずは、「抜粋」の型です。これは、本来伝えたいと思っている情報全体の中から、部分的な情報を最大で3つ、理想的には1つだけ抜き出して説明する方法です。

例えば、次のようなステップで説明を展開していきます。

ステップ1 本来伝えたい情報量の全容を提示する
「すべてを話すと2時間かかってしまうのですが……」
ステップ2 その中から1つを抜き出すことを宣言する
「時間の都合上、○○だけに絞ってお伝えします」
ステップ3 その1つを抜き出した理由を伝える
「この○○は、全テーマの中で最も重要なテーマだからです」

まずはステップ1のように、本当は伝えたい情報が膨大であることを、相手に正直に伝えましょう。「実際には本1冊分の情報量なのですが……」「聞いていただきたいテーマは全部で20あるのですが……」といったように、情報の多さをあえて明らかにしてしまうのです。

その上で、ステップ2のように伝える情報を絞り込むと、相手は「それなら時間もかからないだろうから、聞いてみようか」という気持ちになるはずです。さらに、ステップ3のように「絞り込んだ情報が、実は最も重要」といったフレーズを聞かされると、「限られた時間で、有益な情報が得られる」というコスパのよさを相手に感じてもらうことができるでしょう。

ちなみにステップ3では、説明の前置きとして「最も」というワードを付けるのが効果的です。このワードを入れることで、相手は「ほかの情報は聞いていないけれど、この情報を知るだけで十分なのだろう」という納得感が得られるからです。

逆に、何の前置きもなく「この情報だけお伝えします」とすると、他の情報がカットされたことに相手は不満を抱くかもしれません。実際にはすべての情報を聞く時間はないとしても、です。

注意したいのは、抜粋する情報の数をあまり多くし過ぎないこと。情報が5つも6つもあると、「そんなにあるのか」と相手に思われてしまい、たくさんの情報の中から有用な情報を選び出してもらえたという印象が弱まってしまいます。理想は1つ、多くとも3つ以内にとどめましょう。

時間がない中で全体像を伝える「要約」の型

続いて、「要約」の型です。こちらは、伝えたい内容の細部よりも、全体像を分かってもらいたいときに使える説明法です。

対話のステップは、次のように進めます。

ステップ1 本来伝えたい情報量の全容を提示する
「すべてを話すと2時間かかってしまうのですが……」
ステップ2 その情報を要約したことと、その分量を伝える
「今回は要約した内容を30分でお話しします」
ステップ3 要約した内容を伝える
「要は、………です」

ステップ1で、本来伝えたい情報量の全容を包み隠さず知らせるのは、「抜粋」の型と同じです。

その上でステップ2として、要約してどれだけの時間に圧縮するのかを具体的な数字で示します。本来2時間かかる話が、4分の1の30分間に要約されるのなら、相手にとっては負担が減ったと感じられるため、「聞いてみてもいいかな」という気持ちになってもらえる可能性が高いはずです。

ただし、あまり短く要約し過ぎるのも好ましくありません。例えば、本来であれば説明に1時間かかる情報を「1分間で要約します」と伝えてしまうと、相手が「本当にこれで十分なのか?」と不安になったり、理解不足に陥ったりする恐れもあります。要約の目安としては、本来説明するのに必要な時間の3分の1から10分の1程度にとどめるのが望ましいでしょう。

ステップ3では、実際に要約した内容を伝えます。結論がひと言で済む場合は、「要は、………です」と最初に前置きして、結論に至るまでの説明を手短に行うのが効果的です。

「抜粋」の型と「要約」の型との違いは、前者が大量の情報の中の一部分だけを伝えるのに対して、後者は情報の全体像やエッセンスを相手に把握してもらうことです。

「抜粋」の型と「要約」の型の違い

説明の組み立て方としては、「抜粋」の型は本来の情報を「切り取る」「ある程度そのまま抜き出す」といったイメージですが、「要約」の型は本来の情報を「圧縮する」「重要な部分だけを抜き出してつなぎ合わせる」というイメージです。

話のポイントだけを伝えたい相手には「抜粋」の型、話の全容をかいつまんで伝えたい相手には「要約」の型を使ってみるのがおすすめです。話の内容や相手に合わせて、上手に使い分けてみましょう。

わかりやすい説明のコツ

分かりやすい説明のコツ

的を絞って情報を伝えたいときは
「抜粋」の型
話の全容を知ってもらいたいときは
「要約」の型を使おう

PROFILE

犬塚 壮志いぬつか まさし
(株)士教育 代表取締役。東京大学大学院学際情報学府を修了。駿台予備学校講師を経て独立。講座開発や教材作成のサポート、講師養成のプロデュース事業を開始。企業向け研修講師としての登壇実績も豊富で、「説明力」をテーマにした研修プログラムは官公庁や大企業から中小企業まで人気を博している。専門領域は、「学習」「知能」。言語化やコミュニケーション、思考法の指導を得意とする。著書に『説明組み立て図鑑』『頭のいい人の対人関係』など。
犬塚 壮志

記事公開:2024年8月