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分かりやすい!説明のコツ

分かりやすく説明する「型」やポイントを紹介します。

vol.05

複雑なこともスッキリ理解できる!
「用語解説」「因数分解」の型とは。

専門用語や業界用語は相手の理解を阻む“壁”になりやすい

新規顧客を開拓する営業の方々からよく聞く悩みのひとつは、「商品やサービスの説明をしても、なかなか理解してもらえない」というものです。

身近なものや、分かりやすい特徴を持つ商品・サービスであれば、シンプルな説明でも「なるほど」と思ってもらえるのでしょう。しかし、相手があまり馴染みのないものや詳しくないものだったり、専門知識がないとメリットを理解できないものだったりすると、単純に説明しただけではチンプンカンプンになってしまいます。

特にクラウドやAI(人工知能)といったテクノロジー関連の商品・サービスや、投資信託・保険などの金融商品は、相手のリテラシーの度合いによって理解力に大きな差が出やすいため、十分な説明をするにはそれなりのテクニックを要します。

ポイントは、まず、相手がどこまでの知識を持っているのかを探り出すこと。そしてそのレベルを知った上で、分かりにくい専門用語や業界用語を簡潔に説明しながら、少しずつ商品・サービスへの理解を深めてもらうことです。

端的に専門用語を分かってもらう「用語解説」の型

そこでぜひ試してみてもらいたいのが、「用語解説」の型です。

相手が知らないであろう専門用語や業界用語を、簡潔に説明したいときに活用できます。具体的な説明のステップは、以下のとおりです。

ステップ0 その用語を相手が知っているかを確認する
「『AR』という言葉を聞いたことがありますか?」
ステップ1 用語の「定義」を一言で伝える
「『AR』とは、デジタル機器を使って、現実世界に架空の情報や景色を付け足すことで、現実を拡張するものです」
ステップ2 用語そのものの「意義」(理由や目的)やメリットを伝える
「『AR』は、目の前に見えている世界に情報を加えたいときに便利です」
ステップ3 具体化したり、事例を出したりする
「例えば、スマホの位置情報とカメラを使い、現実の風景に仮想のキャラクターを重ね合わせる人気ゲームは、『AR』技術活用の代表例です」

まず、相手がその用語を知っているかどうかを確認します(ステップ0)。ここで相手の理解度を見て、ステップ1以降での説明のボリュームやレベルを調整します。相手がほぼ知らないであろう用語を説明する場合には、このステップは省略しても構いません(そのため、ステップ0としています)。

ステップ1の「定義」の説明は、なるべく平易に行うことが重要です。定義があやふやな場合は、辞書や専門書で調べる習慣をつけましょう。

ステップ2の「意義」(理由や目的)の説明では、「なぜ、それが存在するのか?」「それがあることで、どのようなメリットが得られるのか?」ということを、具体的に説明します。

ただし、説明が抽象的になりすぎると、相手の思い描くイメージもあやふやになってしまいかねません。そこで、ステップ3のように事例を挙げると、より具体的にイメージしてもらいやすくなるはずです。例として挙げたゲームのように、相手が見たことや聞いたことがありそうな例を示すと、「あぁ、あれか!」と、すっきり理解してもらえることでしょう。

たくさんある話の焦点を絞って説明する「因数分解」の型

専門的なことを説明するときに苦労するのは、用語そのものを理解してもらう必要があるからだけではありません。

専門的な説明であればあるほど、相手が知らない用語はたくさん出てくるものです。Aという用語とBという用語はどうかかわり合っているのか? 同じものなのか? 関連するものなのか? 関係がない全く別のものなのか? といった関係性が分からないと、頭の中が混乱してしまうかもしれません。

そんなときに、ぜひ試してほしいのが「因数分解」の型です。因数分解のように、要素をシンプルに整理して伝えることで、相手の頭に入りやすくなります。

これは、相手に理解してもらいたい対象が広大で、さまざまな要素が含まれているとき、いま話すことが全体のどの部分であるのかを焦点を絞って説明したいときに有効な型です。営業やプレゼン、会議、研修などで役に立つでしょう。

具体的には、次のようなステップで説明を行います。

ステップ1 理解してもらいたい対象が要素に分解できることを伝える
「Webアプリケーションは、2つの要素で構成されています」
ステップ2 理解してもらいたい対象を要素に分解し、具体的に示す
「その2つとは、『バックエンド』『フロントエンド』です」
ステップ3 分解した要素の中で、重要なものに焦点を当て、さらに分解する必要がある場合には分解していく
「この中の『バックエンド』は、さらに『Webサーバ』と『データベースサーバ』に分かれます」
ステップ4 分解した要素の中で、特に説明が必要な要素や、最重要視している要素をピックアップする
「この中から、ビッグデータ時代に特に重要な『データベースサーバ』について説明します」

この説明の型におけるポイントは、要素をどのように分解し、その中で、どの要素について語ろうとしているのかを理解してもらうことです。すべての要素を頭の中に思い浮かべてもらうのは大変なため、ホワイトボード上に「ロジックツリー」や「フローチャート」「ピラミッドチャート」などを描きながら説明してみるのもいいでしょう。
要素を分解して示した例

あらかじめ、こうした図をパワーポイントで用意しておくのもおすすめです。

わかりやすい説明のコツ

分かりやすい説明のコツ

専門用語を理解してもらうには「用語解説」の型
話の焦点を絞って説明するには「因数分解」の型が有効

PROFILE

犬塚 壮志いぬつか まさし
(株)士教育 代表取締役。東京大学大学院学際情報学府を修了。駿台予備学校講師を経て独立。講座開発や教材作成のサポート、講師養成のプロデュース事業を開始。企業向け研修講師としての登壇実績も豊富で、「説明力」をテーマにした研修プログラムは官公庁や大企業から中小企業まで人気を博している。専門領域は、「学習」「知能」。言語化やコミュニケーション、思考法の指導を得意とする。著書に『説明組み立て図鑑』『頭のいい人の対人関係』など。
犬塚 壮志

記事公開:2025年1月