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押さえておきたい
「健康経営」の知識

今さら聞けない健康経営に関する基礎知識、健康リテラシーを高めるポイントを解説します。

vol.
01

企業価値向上に欠かせない!?
いま知っておくべき健康経営とは。

人間にとって健康であることは大きな財産ですが、それは企業経営にとっても同様です。
いま、従業員の健康に投資する「健康経営」に注目が集まっています。
従業員の意欲や能力を引き出し、生産性向上や組織の活性化を図り、
結果的に業績や企業価値の向上と持続的な成長につながると考えられているからです。
取り組みが必須となりつつある、健康経営について考えてみましょう。

企業は待ったなし!?
投資という観点で健康を捉える「健康経営」

健康経営とは、従業員の健康を経営上の問題と捉え、従業員が心身ともに健康であることで組織を活性化し、生産性や企業価値の向上を目指すことです。企業が存続し続けるためにはさまざまなものが必要ですが、最も大切なものは「人」です。組織を支える従業員一人ひとりの健康は、実は会社の利益に直結しています。経営者が従業員の健康にどれだけ投資をするかで、会社の将来は大きく変わってきます。別な言い方をすれば、健康経営は投資の観点から健康を捉えることでもあります。

健康経営が注目されるようになった背景には、3つの理由があります。そのひとつは、少子高齢化による労働力不足です。現在の日本は老年人口である65歳以上が増加し、働く人たちを示す生産年齢人口(15~64歳)は減少傾向にあります。国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口(令和5年推計)(出生中位(死亡中位)推計)によると、2065年には4,809万人になると予測されています。

高齢化の推移と人口減少
【出典】国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要」より作図

もうひとつは日本の雇用環境です。昭和の時代に当たり前だった終身雇用制は崩れつつありますが、いまでも多くの企業では定年まで勤めることを見据えた雇用が行われています。企業は従業員が高齢や病気になっても、それを理由に解雇することはできません。かつて55歳だった定年は65歳に移行しつつありますが、60歳になると約4分の1の人が健康面で何らかの問題を抱えるようになります。

最後は国民医療費の増大です。企業は従業員の健康保険料を半分負担していますが、高齢化による医療費の増大は、健康保険組合の財政悪化を招きます。健康保険料の増加は、企業にとっても大きな負担となります。

こうした状況の中で、従業員が定年まで元気に働くことができ、豊かなセカンドライフを送ることの価値が注目されるようになりました。国としても経済産業省が中心となり、健康経営を行う企業を顕彰する「健康経営銘柄」の選定や、「健康経営優良法人制度」などを通して、健康経営を推進しています。

従業員の健康は生産性向上に不可欠!?
企業の損失をどう防ぐ?

企業が健康経営に取り組まないと、どんなリスクが予測されるでしょうか。そこでポイントとなるのが、世界保健機関(WHO)が提唱している「プレゼンティーイズム」と「アブセンティーイズム」という指標です。

・プレゼンティーイズム:
働くことはできるが、健康上の問題で生産性が低下している状態(高血圧、肥満、運動不足、睡眠不足、ストレスなどが危険因子に挙げられる)
・アブセンティーイズム:
病気やけがなどによる休業で生産性がゼロの状態

経済産業省によると、従業員の健康に関する企業の負担(健康関連総コスト)はプレゼンティーイズムが77.9%、アブセンティーイズムが4.4%という結果が示されています。つまり、企業に与える損失という観点でみると、プレゼンティーイズムの方が深刻なことが分かります。心身の健康問題が発生しないよう事前に対策を講じ、従業員全体の健康上の問題を改善することが、企業の労働損失軽減につながり、さらに社会的価値を創造するうえで必要不可欠な取り組みとなります。

従業員の健康維持に最も効果的なのは、予防です。健康状態が悪化してから手を打つのではなく、早いうちから病気にならない環境をつくることが健康経営の土台を構築することにつながります。若く健康な従業員が多くてもその健康を維持できる環境を整え、さらにリスクの芽をチェックし、発見次第すぐに摘み取ることが重要です。

心身の不調を防ぐための健康経営の実践例
・社員食堂のヘルシーメニュー
・ウォーキングイベントなどの運動促進
・リラックスできる休憩室
・睡眠セミナー
・敷地内全面禁煙
・健康を考える勉強会

健康経営は「人」を大切にする意識から!
従業員の健康が企業のイノベーションを生み出す

近年、利益を出しているにもかかわらず人手不足により倒産する企業が生まれていますが、これは経営における「人」の重要性を示しているといえるでしょう。ITやAIなどのテクノロジーがどれだけ進化しても、企業は「人」がいなければ存続できません。企業を支える「人」の健康は、グローバル化が進む環境においても持続的に発展し、成長させていくことができる企業の体力、競争力、創造力の欠かせない基盤となっています。

健康経営の取り組みは、経営者が「人を中心とした経営」を意識することから始まり、経営者・管理者・従業員のコミュニケーションがそれを推進していきます。そこには従業員一人ひとりの健康リテラシーの向上も欠かせません。

日々の仕事やプライベートの忙しさに、つい見過ごされがちな「健康」に改めて注目することで、新しい時代に対応する力を身に付けられるよう、健康経営について、本連載で学んでいきましょう。

富士フイルムグループの取り組み

富士フイルムグループは、企業理念に「健康増進に貢献し、人々の生活の質のさらなる向上に寄与する」ことを掲げています。この理念を実現するための、2030年をターゲットとした中長期CSR計画では、重点課題の一つが「健康」であり、ヘルスケア事業を通じて「健康的な社会をつくる」ことに取り組んでいます。
そして、企業理念、目指す姿(ビジョン)を実践するための基盤となる、従業員の健康維持増進を重要な経営課題として捉え、2019年には「富士フイルムグループ健康経営宣言」を制定しました。グループ全体の従業員の健康増進に対する取り組みを加速させており、社会、会社、事業が共に成長していくことを目指して、健康長寿社会の実現に貢献していきます。

PROFILE

岡田 邦夫
岡田 邦夫おかだ・くにお
NPO法人健康経営研究会理事長。大阪市立大学大学院医学研究科修了後、大阪ガス産業医。その後、健康経営研究会を設立し、理事長に就任し、健康経営についてさまざまな形で啓発活動を行っている。厚生労働省、文部科学省のメンタルへルスに関する委員等を歴任。経済産業省健康・医療新産業協議会健康投資ワーキンググループ委員。著書に『「健康経営」推進ガイドブック』、『職場の健康がみえる』(監修)ほか多数。

記事公開:2023年7月

* 「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。