企業は待ったなし!?
投資という観点で健康を捉える「健康経営」
健康経営とは、従業員の健康を経営上の問題と捉え、従業員が心身ともに健康であることで組織を活性化し、生産性や企業価値の向上を目指すことです。企業が存続し続けるためにはさまざまなものが必要ですが、最も大切なものは「人」です。組織を支える従業員一人ひとりの健康は、実は会社の利益に直結しています。経営者が従業員の健康にどれだけ投資をするかで、会社の将来は大きく変わってきます。別な言い方をすれば、健康経営は投資の観点から健康を捉えることでもあります。
健康経営が注目されるようになった背景には、3つの理由があります。そのひとつは、少子高齢化による労働力不足です。現在の日本は老年人口である65歳以上が増加し、働く人たちを示す生産年齢人口(15~64歳)は減少傾向にあります。国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口(令和5年推計)(出生中位(死亡中位)推計)によると、2065年には4,809万人になると予測されています。
もうひとつは日本の雇用環境です。昭和の時代に当たり前だった終身雇用制は崩れつつありますが、いまでも多くの企業では定年まで勤めることを見据えた雇用が行われています。企業は従業員が高齢や病気になっても、それを理由に解雇することはできません。かつて55歳だった定年は65歳に移行しつつありますが、60歳になると約4分の1の人が健康面で何らかの問題を抱えるようになります。
最後は国民医療費の増大です。企業は従業員の健康保険料を半分負担していますが、高齢化による医療費の増大は、健康保険組合の財政悪化を招きます。健康保険料の増加は、企業にとっても大きな負担となります。
こうした状況の中で、従業員が定年まで元気に働くことができ、豊かなセカンドライフを送ることの価値が注目されるようになりました。国としても経済産業省が中心となり、健康経営を行う企業を顕彰する「健康経営銘柄」の選定や、「健康経営優良法人制度」などを通して、健康経営を推進しています。