健康経営は、健康リスクを理解することから
株式や不動産と同じように、健康経営の投資もリスクの把握から始めます。職場での健康問題について、従業員が健康を損ないかねない要因(健康リスク)は、大きく分けると下記の2つになります。
(1)生活習慣病:肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病など
(2)労働環境病:過重労働、パワハラ、セクハラ、メンタルヘルスの不調、業務起因性災害など
皆さんご存じの通り、生活習慣病とは、食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が原因となり発症する病気の総称で、日本人の死因の上位を占めるがん、心臓病、脳卒中も含まれます。自覚症状がないからといって、適切に対処せず放置した場合、従業員の生産性低下や休業、退職につながる可能性があります。従業員の平均年齢が若かったり、忙しかったりする職場では、従業員自身が健康に無関心になりがちで、リスクを把握していない傾向があります。
一方、労働環境病は、働く環境に問題があることで生じます。過重労働やハラスメントが続くと、従業員の心身に負担がかかり、さまざまな健康障害を引き起こす可能性があります。放置すれば、うつ病や脳・心臓疾患を招きかねません。人手不足の中で、貴重な人財を失うことは、会社にとって大きな損失となるでしょう。
さらに過重労働やハラスメントを放置し、従業員から安全配慮義務違反で訴えられ、損害賠償請求を命じられた場合、企業の社会的信用は失墜しかねません。企業は従業員の健康を守るさまざまな義務が課せられていますが、残念ながらこうした事実を知らないまま職務に就いている管理者は少なくありません。例えば、時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として月45時間・年360時間で、違反すると企業に罰則が科せられます。