オフィスで従業員の健康を保持・増進する行動には、大きく分けて下記の7つがあります。
●健康を保持・増進する7つの行動
(1)快適性を感じる
例えば、太陽光や目に優しいライト、室内の緑化やアロマテラピーの自然で爽やかな香りをほのかに漂わせるほか、パーソナルスペースの確保など、従業員がオフィスにいて心地いいと感じられるよう環境を整備する。
(2)コミュニケーションする
例えば、気軽に話す・相談できる、同僚の業務内容や会社の目標について知るなど、従業員同士が交流しやすい空間を導入する。
(3)休憩・気分転換する
例えば、飲食や雑談できる、仮眠がとれる、マッサージが受けられるなど、仕事から離れてリラックスできる空間を取り入れる。
(4)体を動かす
例えば、デスクワークを減らし、スタンディングワークができる、ストレッチや体操ができるなど、歩いたり体を動かせたりするレイアウトやスペースを設ける。
(5)適切な食行動をとる
例えば、昼食や間食をとるスペースを設ける、社内食堂で健康メニューを提供するなど、健康を意識した食生活を促すための環境を整える。
(6)清潔にする
例えば、手洗いやうがいの徹底、換気の習慣化、整理整頓、感染症対策用品の設置など、職場の安全衛生管理のため、オフィスの清潔さを保つ環境を整備する。
(7)健康意識を高める
例えば、健康管理やセルフケアに役立つ情報の提供、健康アプリの導入など、従業員の健康意識が高まるよう働きかける。
こうした行動を日常的に行うことで、健康の保持・増進効果として「運動器・感覚器障害」「メンタルヘルス不調」「心身症(ストレス性の内科疾患)」「生活習慣病」「感染症・アレルギー疾患」の予防・改善が期待されます。従業員のパフォーマンスを下げる要因を取り除く7つの行動は、健康経営を目指す企業にとって、投資効果がある項目ともいえます。
これら7つは、すべてを実践しなければならないというわけではなく、どれを行うかは企業によってさまざまです。中にはすでに環境が整っている項目もあるでしょう。健康経営オフィスの実現で最初に取り組むべきは、自社の現状把握です。すべてを一気に実施しようとするのではなく、まずは自社がどのような状態かチェックします。そこで足りないポイントを見極め、その部分に選択的に投資するのが効果的です。
また、それぞれの項目をどう実現するかは、企業によって異なります。例えば若手が多いかベテラン世代が多いか、男性が多いか女性が多いか、グローバル人財の割合などによって、健康経営オフィスの形は変化します。経営者は自社の状況を捉えたうえで、大切な従業員一人ひとりが快適に仕事に集中できる多様な環境とは何かを考えるとよいでしょう。
この7つの行動の中でこれからの時代にとりわけ大切なのは、コミュニケーションです。生産年齢人口の減少による人手不足を解決する鍵の一つは、多様な人財の活用ですが、そこには一人ひとりに孤独感を抱かせないことが求められます。上司・部下という関係にかかわらず、例えばコーヒーを飲みながら気軽にコミュニケーションがとれる場は、従業員の間に信頼関係を醸成し、創造性や危機を突破する力を生み出します。部下を指導する場合も、会議室よりもこうした開放的な場を選ぶことで部下の緊張がほぐれ、パワハラと受け取られるリスクを減らすことにつながるでしょう。
コロナ禍によるリモートワークの拡大は、「職場=会社あるいは自宅」という新たな選択肢をもたらしました。自宅は一人で集中して仕事を進められるという魅力がある反面、孤独と背中合わせといえます。全国の16歳以上の男女2万人を対象にした調査では、20代から50代の働き盛りで、孤独を感じる割合が高くなっています。孤独感はメンタルヘルス不調を誘発するリスクがあるため、リモートワーク実施率が高い企業では、在宅の孤独感を軽減する工夫も大切です。