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押さえておきたい
「健康経営」の知識

今さら聞けない健康経営に関する基礎知識、健康リテラシーを高めるポイントを解説します。

vol.
06

職場のメンタルヘルス対策とは?
知っておきたい向き合い方。

頼りにしていた従業員が突然の休職。その原因はメンタルヘルスの不調だった……
そんなことが起こるかもしれません。従業員のメンタルヘルス対策は、
健康経営に取り組む企業にとって大きな課題のひとつになっています。
メンタルヘルス不調とそれを引き起こす要因、その対策などについて解説します。

職場の深刻な問題となっている、
メンタルヘルス不調とは?

健康経営では、企業の成長戦略のひとつに従業員の健康増進を位置づけています。働く人々が直面する健康問題にはさまざまなものがありますが、今回はメンタルヘルスについて考えてみましょう。

メンタルヘルスとは、その名の通り「心の健康」を指します。健康には心の健康、体の健康の両面がありますが、心の健康が損なわれると、パフォーマンスが低下し、業務の遂行が難しくなり、ひいては休職や退職につながってしまうことがあります。職場で発生するこうしたメンタルヘルス不調の例を見てみましょう。

●職場で発生するメンタルヘルス不調の例

  • うつ病:気分の落ち込みなど抑うつ状態が長い期間続く。日本人の約15人に1人が人生で一度は経験するといわれる身近な病気。プライベートや職場での環境変化や人間関係、気質など、さまざまな要因が発症のきっかけとなりうる。仕事や家事など日常生活にも影響が出る。
  • 適応障害:日常生活の出来事や環境にうまく対処できず、心身にさまざまな症状が現れて仕事や社会生活に支障が生じる。人間関係や、業務、職場環境の変化といったストレスが原因となる。
  • 睡眠障害:心身のストレス、痛みやかゆみなどの身体疾患、薬剤の副作用などで眠れなくなったり、日中に過度の眠気が生じたりする。睡眠の質が下がることで日中の疲労や集中力の低下が起こり、仕事や生活に支障をきたす。

近年、従業員のメンタルヘルス対策は企業にとって重要な課題のひとつとなっています。パソコンやインターネットなどICT(情報通信技術)の進展で業務効率が向上した結果、従業員一人が担当する業務範囲は拡大しています。さらに近年の人手不足によって労働密度が高まり、一人あたりの業務量が大幅に増加しているケースは珍しくありません。限られた時間内で多くの仕事をこなすことが求められる中で、従業員の心理的な負荷は増え続けています。厚生労働省が2022年度に行った調査によると、現在の仕事に関して「強いストレスを感じる」と答えた人の割合は82.2%でした。その原因の第1位は「仕事の量」で36.3%でした。

また同調査で、メンタルヘルス不調で連続1カ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.6%、メンタルヘルス不調により退職した労働者がいた事業所の割合は5.9%でした。生産年齢人口の減少によって会社を支える人財の確保がますます難しくなりつつある今、従業員のメンタルヘルスをケアし、休職や退職による人手不足を防ぐことが経営者に強く求められています。

職場でのメンタルヘルス不調、その要因は上司?

では職場で発生するメンタルヘルス不調は、何が引き起こしているのでしょうか。仕事の量や質、労働時間、人間関係、人事異動や配置転換に伴う環境の変化など複合的な要因が関連しますが、中でも注目されているのが「本人の適性や能力に合わない仕事」です。自分に合わない仕事から生じるストレスは徐々に増大し、メンタルヘルス不調につながってしまいます。

企業にとって貴重な人財に活躍してもらうためには、従業員一人ひとりの特性や資質を見極める必要があります。適性に見合ったポジションに配置することで、従業員の意欲や生産性の向上が期待できるからです。そのために重要となるのが身近にいる上司の役割です。適材適所の実現はコミュニケーションから始まります。上司は部下と1対1で話す時間をこまめに取り、日頃から部下の話に耳を傾けるなどして関心を持つことで、部下の小さな変化にも気付けるようになり、職場でのメンタルヘルス不調の予防につながります。

行動や感情の異変など、不調の兆しは人によってさまざまですが、例えば「最近遅刻や早退が多い」「単純なミスが目立つ」「表情がさえない」など、いつもと様子が違うと感じたら、面談で話をする機会を設けたり、産業医の受診をすすめたりするなど、部下の心身の不調の原因を見極め、適切な対応を取ることが必要になります。

一方で、近年、パワハラによって労災が認定されるケースが増加しています。厚生労働省による精神障害の労災補償状況において、最も多い出来事は「上司などからのパワハラ」です。部下をメンタルヘルス不調にさせないためにはコミュニケーションが大切ですが、こうした結果から適切なマネジメントができていないケースもあることが考えられます。

部下へのハラスメントはもっての外ですが、上司も職場で大きなストレスを抱えていることがあるため、上司自身の心の健康にも気を配る必要があります。メンタルヘルス不調の原因は労働時間や職場環境など複合的なものであるため、誰もが陥る可能性があるのです。職場でのメンタルヘルス不調を予防するためにも、経営者や管理者は働き方や労働時間、コミュニケーションなど、従業員が働く職場環境全体に配慮していくことが大切です。

4つのケアで取り組む、企業のメンタルヘルス対策

最後に、職場でのメンタルヘルス不調に対し、現段階でどのような対策がとられているのか見てみましょう。厚生労働省は職場におけるメンタルヘルス対策の指針として、次の4つのケアを継続的に行うことを提唱しています。職場だけでなく、産業医や産業保健総合支援センターなど外部機関とも連携しながら、開かれた環境で働く人々の心の健康を守ろうとしています。

●メンタルヘルス対策の4つのケア

(1)セルフケア
従業員一人ひとり(管理者を含む)がストレスやメンタルヘルスについて理解し、自らのストレスを予防し、対処する。十分な睡眠時間をとっていても眠い、食欲がない日が続いている、何日もだるさがとれないといった身体症状は、メンタルヘルス不調によって生じている可能性がある。
(2)ラインによるケア
メンタルヘルスに関して日頃の職場環境の把握と改善、部下からの相談対応などを、職場のライン上にいる管理監督者(直属の上司)が主体となって行う。
(3)事業場内産業保健スタッフなどによるケア
産業医や保健師、人事労務管理など、職場内のスタッフが職場のメンタルヘルス対策を提言・推進するとともに、従業員や管理者を支援する。
(4)事業場外資源によるケア
都道府県に設置された産業保健総合支援センターなど、職場外の専門機関や専門家による情報提供や支援を受け、従業員のメンタルヘルスケアに役立てる。
メンタルヘルス対策の4つのケア
【出典】厚生労働省「職場における心の健康づくり」より作図

部下のメンタルヘルス不調には早めの対処が必要ですが、管理者が「自分だけで解決しなければ」と焦るのは禁物です。上述したように、メンタルヘルス不調には、多くの要因が関連しているため、対策は多面的に考えなければなりません。管理者、産業保健スタッフ、事業場外資源が連携しながら、メンタルヘルス対策の基本となる4つのケアを継続的に行い、働き方、働く時間、コミュニケーションなど、さまざまな観点で職場環境を改善していくことが必要です。

企業がメンタルヘルス対策を行うことは、メンタルヘルス不調を抱える従業員だけでなく、すべての従業員の健康を支援する取り組みであり、従業員の意欲や生産性、企業の競争力や価値を向上させることにつながります。

企業が持続的に成長していくには、従業員一人ひとりの心身の健康が欠かせません。健全な組織づくりを目指して、企業の成長へとつなげましょう。

富士フイルムグループの取り組み

富士フイルムグループは、企業理念に「健康増進に貢献し、人々の生活の質のさらなる向上に寄与する」ことを掲げています。この理念を実現するための、2030年をターゲットとした中長期CSR計画では、重点課題の一つが「健康」であり、ヘルスケア事業を通じて「健康的な社会をつくる」ことに取り組んでいます。
そして、企業理念、目指す姿(ビジョン)を実践するための基盤となる、従業員の健康維持増進を重要な経営課題として捉え、2019年には「富士フイルムグループ健康経営宣言」を制定しました。グループ全体の従業員の健康増進に対する取り組みを加速させており、社会、会社、事業が共に成長していくことを目指して、健康長寿社会の実現に貢献していきます。

PROFILE

岡田 邦夫
岡田 邦夫おかだ・くにお
NPO法人健康経営研究会理事長。大阪市立大学医学部卒業後、大阪ガス産業医。その後、健康経営研究会を設立し、理事長に就任し、健康経営についてさまざまな形で啓発活動を行っている。厚生労働省、文部科学省のメンタルへルスに関する委員、経済産業省次世代ヘルスケア産業協議会健康投資ワーキンググループ委員などを歴任。著書に『「健康経営」推進ガイドブック』、『職場の健康がみえる』(監修)ほか多数。

記事公開:2024年5月
情報は公開時点のものです

* 「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。