職場の深刻な問題となっている、
メンタルヘルス不調とは?
健康経営では、企業の成長戦略のひとつに従業員の健康増進を位置づけています。働く人々が直面する健康問題にはさまざまなものがありますが、今回はメンタルヘルスについて考えてみましょう。
メンタルヘルスとは、その名の通り「心の健康」を指します。健康には心の健康、体の健康の両面がありますが、心の健康が損なわれると、パフォーマンスが低下し、業務の遂行が難しくなり、ひいては休職や退職につながってしまうことがあります。職場で発生するこうしたメンタルヘルス不調の例を見てみましょう。
●職場で発生するメンタルヘルス不調の例
- うつ病:気分の落ち込みなど抑うつ状態が長い期間続く。日本人の約15人に1人が人生で一度は経験するといわれる身近な病気。プライベートや職場での環境変化や人間関係、気質など、さまざまな要因が発症のきっかけとなりうる。仕事や家事など日常生活にも影響が出る。
- 適応障害:日常生活の出来事や環境にうまく対処できず、心身にさまざまな症状が現れて仕事や社会生活に支障が生じる。人間関係や、業務、職場環境の変化といったストレスが原因となる。
- 睡眠障害:心身のストレス、痛みやかゆみなどの身体疾患、薬剤の副作用などで眠れなくなったり、日中に過度の眠気が生じたりする。睡眠の質が下がることで日中の疲労や集中力の低下が起こり、仕事や生活に支障をきたす。
近年、従業員のメンタルヘルス対策は企業にとって重要な課題のひとつとなっています。パソコンやインターネットなどICT(情報通信技術)の進展で業務効率が向上した結果、従業員一人が担当する業務範囲は拡大しています。さらに近年の人手不足によって労働密度が高まり、一人あたりの業務量が大幅に増加しているケースは珍しくありません。限られた時間内で多くの仕事をこなすことが求められる中で、従業員の心理的な負荷は増え続けています。厚生労働省が2022年度に行った調査によると、現在の仕事に関して「強いストレスを感じる」と答えた人の割合は82.2%でした。その原因の第1位は「仕事の量」で36.3%でした。
また同調査で、メンタルヘルス不調で連続1カ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.6%、メンタルヘルス不調により退職した労働者がいた事業所の割合は5.9%でした。生産年齢人口の減少によって会社を支える人財の確保がますます難しくなりつつある今、従業員のメンタルヘルスをケアし、休職や退職による人手不足を防ぐことが経営者に強く求められています。