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押さえておきたい
「健康経営」の知識

今さら聞けない健康経営に関する基礎知識、健康リテラシーを高めるポイントを解説します。

vol.
07

毎日の生活習慣が、ビジネスパーソンの武器をさびつかせる!?
今から始める未来の健康づくり。

仕事が忙しいと、つい健康とはほど遠い生活になりがちです。
そんな毎日の先に待っているのが、突然死のリスクもある生活習慣病です。
ビジネスパーソンにとって、健康は欠かせない武器のひとつ。
いつでも良好なパフォーマンスを発揮し続けるために、
生活習慣に潜むリスクを今から減らしましょう。

不健康な生活習慣は、
気付かないうちにじわじわと命を削っていく

人生の折り返し地点といわれる40代に突入すると、人間ドックなどで体を総点検する人が増えてきます。その年代になると気になりだすのが、生活習慣病。生活習慣病とは、食事や運動、休養(睡眠)、飲酒などの毎日の何気ない習慣が発症の要因となる疾患の総称です。生活習慣病には、日本人の死因の上位を占めるがん、心臓病、脳卒中のほかに、糖尿病なども含まれます。

体によいものを食べ、適度な運動をして十分な睡眠をとる。これが重要と分かっていても、忙しくてなかなか実行できないのが働き盛り世代でしょう。しかし不健康な生活習慣は、気付かないうちにじわじわと命を削っていく、恐ろしい「サイレントキラー」です。さらに複数のよくない習慣は複雑に絡み合い、より深刻な結果を引き起こす可能性があります。

生活習慣と生活習慣病の関係
【出典】厚生労働省「生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について(意見具申)」より作図

不健康な生活習慣を続けている状態は、少しずつ負債が積み重なっていくようなもので、その恐ろしさに気付きにくいものです。厚生労働省の調査(令和元年「国民健康・栄養調査報告」)によると、食習慣・運動習慣を「関心はあるが改善するつもりはない」人はおよそ4人に1人でした。「改善したいができない」理由として最も割合が高かったのは、「仕事(家事・育児等)が忙しくて時間がないこと」でした。

生活習慣病を予防するために、役立つ考え方とは?

生活習慣病を予防する第一歩は、自分の健康状態を把握することです。下記の2つの視点で、定期的に体をチェックしましょう。

(1)主観的健康感(一時的ではなく、継続するもの)
だるい、腰が痛い、寝足りない、など
(2)客観的健康度(健康診断や人間ドックの結果)
中性脂肪が高い、血糖値が高い、内臓脂肪が多い、など

主観的健康感と客観的健康度の双方が「異常なし」であれば、健康状態についてはおおむね問題なしといっていいでしょう。主観的健康感が元気で問題ないように感じても、客観的健康度で「異常」となるケースがあります。その最たるものは糖尿病です。逆に主観的健康感に異常があり、客観的健康度に問題がない場合、メンタルヘルスの不調が隠れていることもあります。

主観的健康感は、始まった時期・期間・頻度を確認することで原因が判明し、解決策が見えてくることがあります。例えば、腰が痛い原因が長時間のデスクワークと分かれば、定期的に席を立ち、短時間でも体を動かすなど日常でできる運動を取り入れることで改善するかもしれません。

健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力を「ヘルスリテラシー」といいます。日本では従業員の健康診断が法律で義務付けられているため、会社で働く多くの人には自分の健康上の問題に気付く機会が用意されています。さらに、コンビニや飲食店を気軽に利用でき、都市部ならフィットネスジムもあり、最近では快眠グッズも話題です。

このように健康をチェックする機会に恵まれ、食事・運動・睡眠の豊富な選択肢があるにもかかわらず、残念ながら日本のヘルスリテラシーは諸外国に比べると低い水準となっています。これは、健康診断で自分の健康についての問題に気付いても、それを解決する方法を探し出し、実行する力が足りていないということでしょう。

生活習慣病予防におけるヘルスリテラシー

疾病と生活習慣の関係についても、正確な知識が広まっているとはいえません。例えば、健康診断で脂質異常症を指摘される人は比較的多いのですが、なぜ中性脂肪が高くなるのか正しく理解している人は少数派です。食べすぎや飲みすぎ、夜食、運動不足などだけでなく、果物のとりすぎも中性脂肪の増加につながります。健康的な食生活のためにビタミン豊富な果物を積極的に食べると、逆効果になるケースもあるのです。正しい知識を持っていないことで、「異常」だという状況を甘く考え、問題に対処できず、症状が悪化してしまうケースは珍しくありません。日本人にありがちな「楽をして早く健康になろう」とする傾向も、ヘルスリテラシーの浸透を妨げているといえます。

ヘルスリテラシーを高めることは、生活習慣病の予防に限らず、一生の健康につながります。ビジネスにとっては職場の健康診断の結果を見て終わりではなく、それをどう生かすのかが大切です。

健康的な生活習慣は、5つの柱を意識することから

病気にならない生活習慣を考える際、それぞれの柱は下記になります。

病気にならないための生活習慣のポイント

  • 食事 → 食べすぎない、バランスを考える、食べ方に注意する
  • 運動 → 日々のウォーキングなど定期的に適度な運動を行う
  • 休養(睡眠) → 1日7~8時間の睡眠をとる
  • 飲酒 → 適量を守る、または飲まない
  • 喫煙 → 吸わない

※必要な睡眠時間は一律ではなく個人によって異なります。睡眠休養感が大切です。

私たち医師が使う「3本の杉」という例え話があります。普段から食べすぎ、飲みすぎ、吸いすぎのビジネスパーソンは、3本の杉を抱えてメタボリックシンドロームという山を着実に登っているようなものです。さらに、そこに「働きすぎ」の1本が加わると、突然死につながるリスクが高まるというものです。健康づくりは、ご自身がこの「すぎ」をどうコントロールするかが重要です。

食事と飲酒の関係で特に注意したいのは、飲みすぎが空腹感を招くことです。飲酒前にしっかり食べていても、アルコールで血糖値が下がることでおなかが減り、つい締めで何か食べたくなってしまうのです。飲んだ後のラーメンやお茶漬けなどで取った糖質は内臓脂肪を増やし、メタボリックシンドロームに直結します。

飲酒はがんをはじめとする生活習慣病の原因となりますが、そこに喫煙が加わるとそのリスクはさらに大きくなります。特に飲酒しながらの喫煙は、アルコールがニコチンの溶媒となり、危険性を高めます。近年、酒類メーカー各社がこぞってノンアルコール飲料を発売していますが、これは社会全体が健康に関心を持つようになり、業界も変化していることを示しています。

健康的な習慣を身に付けるために必要なのが、成功体験です。たとえ小さなことでも、自分の選択や行動の結果として生まれたよい変化に注目しましょう。継続することで体調がよくなり、健康診断の結果が改善すれば、それが成功体験となります。しかし、健康のためであっても、長期間大きな我慢を続けることは、誰にとっても難しいものです。最近では、減塩やカロリーオフの調味料など、快適さと健康を両立できるアイテムが発売されています。それらを活用するのもいいでしょう。

不健康な習慣が長く続くとそれに慣れてしまいますが、働き盛りの時期に健康診断で生活習慣病のリスクを突き付けられ、がくぜんとする人は少なくありません。自分の持つ能力を最大限に発揮できるのは、心身ともに健康であってこそ。ビジネスパーソンにとって健康は、ビジネスという戦場で使う重要な武器のひとつといえるでしょう。いざというときに刀がさびていたら、戦うことはできません。健康診断をきっかけに生活習慣を見直し、改善する方法を見つけて実践することで、仕事を楽しめる自分を維持しましょう。

富士フイルムグループの取り組み

富士フイルムグループは、企業理念に「健康増進に貢献し、人々の生活の質のさらなる向上に寄与する」ことを掲げています。この理念を実現するための、2030年をターゲットとした中長期CSR計画では、重点課題の一つが「健康」であり、ヘルスケア事業を通じて「健康的な社会をつくる」ことに取り組んでいます。
そして、企業理念、目指す姿(ビジョン)を実践するための基盤となる、従業員の健康維持増進を重要な経営課題として捉え、2019年には「富士フイルムグループ健康経営宣言」を制定しました。グループ全体の従業員の健康増進に対する取り組みを加速させており、社会、会社、事業が共に成長していくことを目指して、健康長寿社会の実現に貢献していきます。

PROFILE

岡田 邦夫
岡田 邦夫おかだ・くにお
NPO法人健康経営研究会理事長。大阪市立大学医学部卒業後、大阪ガス産業医。その後、健康経営研究会を設立し、理事長に就任し、健康経営についてさまざまな形で啓発活動を行っている。厚生労働省、文部科学省のメンタルへルスに関する委員、経済産業省次世代ヘルスケア産業協議会健康投資ワーキンググループ委員などを歴任。著書に『「健康経営」推進ガイドブック』、『職場の健康がみえる』(監修)ほか多数。

記事公開:2024年11月
情報は公開時点のものです

* 「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。