分かっていてもなかなか抜け出せない!?
不健康な食生活を阻む「慣れ」の恐ろしさとは?
健康診断の結果に「要注意」の項目が増え、保健指導を受けると、健康的な食生活の実践を心に誓う方は多いのではないでしょうか。ところが、ひと月くらいは健康的な食事を意識できたとしても、3カ月もたつと元の食生活に戻ってしまう方は少なくありません。
不健康な食生活の背景には、「慣れ」が関係しています。この「慣れ」は、子どもの頃から徐々に形成されるものです。濃い味付けの家庭に育った子どもは、大人になっても濃い味を好む傾向があります。好きなものを好きなだけ食べられる環境で育った場合、食べすぎに対する意識が薄れやすくなります。また、健康的な食生活を送る家庭で育った方でも、社会人になって外食の頻度が増えると、体によくない食生活に「慣れ」てしまうこともあります。
現代の日本では、いつでも食べたいものを食べられる環境が整っているため、一度不健康な食生活に「慣れ」てしまうと抜け出すのは難しいといえるでしょう。特に仕事や家事、育児で忙しいと、手軽に食べられて満足感を得られる、炭水化物中心の味付けが濃いものを選びがちになります。厚生労働省の調査(令和元年「国民健康・栄養調査」)によると、働き盛り世代の健康な食習慣を妨げる要因は「仕事(家事・育児等)が忙しくて時間がないこと」(20~50代で約35~50%)、「面倒くさいこと」(20~50代で約25~40%)を挙げた人が多くなっていました。
一度身に付いてしまった良くない「慣れ」を変えるには、一定の時間がかかります。大切なのは、不健康な食生活に「慣れ」る前に、健康的な食生活に「慣れ」ておくことです。例えば、普段から濃い味付けの炭水化物中心の食事をしていると、野菜中心で薄味の食事が物足りなく感じられることがあります。しかし、こうした方でも、例えば糖尿病で入院して病院食をしばらく食べ続けると、次第に薄味に「慣れ」ていきます。すると退院後は、それまで食べていた外食などの普通の味付けを「しょっぱすぎる」と感じるようになるケースも見られます。