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押さえておきたい
「健康経営」の知識

今さら聞けない健康経営に関する基礎知識、健康リテラシーを高めるポイントを解説します。

vol.
08

毎日の食事が未来を変える!
健康的な食生活を送るには。

健康経営では、従業員の健康をつくる食生活にも注目します。忙しいからと
いって「1食くらい何を食べても問題ない」という考えを積み重ねてしまうと、
いつか大きなダメージとなって返ってくるかもしれません。
食生活への投資は、健康的な未来をつくる大切な要素。
「食欲のままに食べる」から「健康のために食べる」へバージョンアップし、
健康的な食生活を実現するためのヒントをご紹介します。

分かっていてもなかなか抜け出せない!?
不健康な食生活を阻む「慣れ」の恐ろしさとは?

健康診断の結果に「要注意」の項目が増え、保健指導を受けると、健康的な食生活の実践を心に誓う方は多いのではないでしょうか。ところが、ひと月くらいは健康的な食事を意識できたとしても、3カ月もたつと元の食生活に戻ってしまう方は少なくありません。

保健指導で指摘される不健康な食生活の例

不健康な食生活の背景には、「慣れ」が関係しています。この「慣れ」は、子どもの頃から徐々に形成されるものです。濃い味付けの家庭に育った子どもは、大人になっても濃い味を好む傾向があります。好きなものを好きなだけ食べられる環境で育った場合、食べすぎに対する意識が薄れやすくなります。また、健康的な食生活を送る家庭で育った方でも、社会人になって外食の頻度が増えると、体によくない食生活に「慣れ」てしまうこともあります。

現代の日本では、いつでも食べたいものを食べられる環境が整っているため、一度不健康な食生活に「慣れ」てしまうと抜け出すのは難しいといえるでしょう。特に仕事や家事、育児で忙しいと、手軽に食べられて満足感を得られる、炭水化物中心の味付けが濃いものを選びがちになります。厚生労働省の調査(令和元年「国民健康・栄養調査」)によると、働き盛り世代の健康な食習慣を妨げる要因は「仕事(家事・育児等)が忙しくて時間がないこと」(20~50代で約35~50%)、「面倒くさいこと」(20~50代で約25~40%)を挙げた人が多くなっていました。

一度身に付いてしまった良くない「慣れ」を変えるには、一定の時間がかかります。大切なのは、不健康な食生活に「慣れ」る前に、健康的な食生活に「慣れ」ておくことです。例えば、普段から濃い味付けの炭水化物中心の食事をしていると、野菜中心で薄味の食事が物足りなく感じられることがあります。しかし、こうした方でも、例えば糖尿病で入院して病院食をしばらく食べ続けると、次第に薄味に「慣れ」ていきます。すると退院後は、それまで食べていた外食などの普通の味付けを「しょっぱすぎる」と感じるようになるケースも見られます。

1日3食の積み重ねが突然働く力を奪う?
従業員の食生活をサポートする企業も増加中

私たちの体は、日々の食事からつくられています。1日3食、何を食べるかという小さな選択の積み重ねが、未来の自分の健康を左右するのです。不健康な食生活は時間をかけてゆっくりと、そして確実に体をむしばんでいきます。その結果、高血圧、糖尿病、高脂血症といった日本人の死因の上位を占める三大生活習慣病(がん、心疾患、脳血管疾患)が、ある日突然、ビジネスパーソンから働く力を奪うこともあります。

特に注目したいのが糖尿病です。日本人は糖尿病になりやすい遺伝的傾向をもつといわれています。さらに、健康診断では発見されにくい「隠れ糖尿病」のリスクも指摘されています。厚生労働省の調査(令和4年「国民健康・栄養調査」)によると、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性18.1%、女性9.1%となっています。

一方で、定年再雇用をはじめとする制度改正が進められる中で、働く期間はますます長くなっています。これからは、定年にとらわれず身に付けた知識や技術を生かして働き続ける人が増えるでしょう。そのためにも、健康は不可欠です。健康診断で問題を指摘された方はもちろん、現時点で問題がない方も、今のうちから「健康をつくる食事の知識」と「健康的な食事を選ぶ習慣」を身に付けましょう。

経営する側にも目を向けてみましょう。少子高齢化で生産年齢人口が減少している日本では、企業にとって人材の確保は深刻な課題となっています。そこで多くの企業は、食事の面から従業員の健康を増進させる健康経営の施策で、企業を支える力を確保しようとしています。

健康経営銘柄を取得したある商社では、朝型勤務を推奨。午前8時までに出社した従業員に無償で朝食を提供するなど働き方改革を進めました。社長が率先して進めたこの施策は、従業員を朝型にすることで健康的な生活習慣を目指したものです。これによって残業時間を減らし、労働生産性を向上させることにつながりました。

このほかにも、健康に配慮したメニューを社員食堂に導入する企業が増えています。一食の中で主食・主菜・副菜がそろい、野菜がたっぷりで塩分のとりすぎにも配慮した「スマートミール」も健康経営を目指す企業の注目を集めています。社員食堂に管理栄養士を配置し、毎日の献立を通じて栄養の情報を発信し、従業員の食生活に関する知識向上を目指す企業もあります。

健康的な食生活に「投資」しよう!
食事を戦略的に考えるヒントとは?

では健康的な食生活を実践するには、何から始めればよいのでしょうか。そこでまず意識したいのは、「投資」という観点です。健康的な食生活への投資は、健やかな心身と、仕事を楽しめる豊かな人生という形になって返ってきます。しかし不健康な食生活を続けて病気になれば、治療費という損失が生じます。仕事ができなくなり、家族を養うことが難しくなれば、損失はさらに深刻です。不健康な食生活が、自分や家族の将来を変えてしまうかもしれないのです。今から健康な食生活への投資を始めましょう。

下記に健康的な食生活を送るためのヒントをご紹介します。

食欲ではなく、「頭」で食べる
食欲のままに好きなものを好きなだけ食べるのではなく、「頭」で食べることを意識しましょう。コンビニで食事を選ぶときは糖質が多いものを避け、栄養バランスがよいものを選びます。飲食店であれば、箸をつける前にまず目の前の料理を見渡し、カロリーや栄養バランスをチェックして食べる量を決めます。食事中は自分のおなかの状態をチェックし、腹八分目になったらそこで箸を置くようにしましょう。
食べる順番を意識する
糖尿病を防ぐには、血糖値を一気に上げないことが重要です。そのために食べる順番に注目しましょう。野菜を先に食べると、繊維質が血糖値の上昇を緩やかにするといわれています。これを「ベジファースト」といいます。例えば、からあげ定食であれば、付け合わせのキャベツや野菜の小鉢を最初に食べる。カレーやパスタなら、サイドメニューにサラダをプラスする。野菜やタンパク質をとってから、ご飯や麺、パンといった糖質を食べると効果的です。
セカンドミール効果を活用する
先にとった食事が、次の食事の後の血糖値にも影響を及ぼすことを、「セカンドミール」効果といいます。例えば朝食で大豆製品や野菜を多くとると、そこに含まれる食物繊維が消化・吸収を遅らせ、昼食後の血糖の上昇も抑えてくれます。外食では糖質が多い食事になりがちなため、毎日少なくとも1食は食物繊維の豊富な食事をとりましょう。
空腹感を意識する
空腹を感じる食生活は、健康的といえます。常に満腹で空腹を感じない状態は、ずっと胃腸に負担がかかっているということです。不健康な夜遅い飲酒と食事は、朝の空腹感を阻害します。朝起きたときに、おなかが空いているかどうかは、健康のバロメーターといえます。

健康な食生活は、ビジネスパーソンにとって自分自身への投資です。企業にとっても、従業員が健康であることは、会社の成長と存続のために必要不可欠です。近年、健康志向の高まりによって、多くのメーカーがより体によい食品を開発し、市場に次々と送り出しています。これまでの「食べたいものを食べる」から、「体によいものを選ぶ」へ。その小さな食生活の積み重ねが、未来を明るく照らします。

富士フイルムグループの取り組み

富士フイルムグループは、企業理念に「健康増進に貢献し、人々の生活の質のさらなる向上に寄与する」ことを掲げています。この理念を実現するための、2030年をターゲットとした中長期CSR計画では、重点課題の一つが「健康」であり、ヘルスケア事業を通じて「健康的な社会をつくる」ことに取り組んでいます。
そして、企業理念、目指す姿(ビジョン)を実践するための基盤となる、従業員の健康維持増進を重要な経営課題として捉え、2019年には「富士フイルムグループ健康経営宣言」を制定しました。グループ全体の従業員の健康増進に対する取り組みを加速させており、社会、会社、事業が共に成長していくことを目指して、健康長寿社会の実現に貢献していきます。

PROFILE

岡田 邦夫
岡田 邦夫おかだ・くにお
NPO法人健康経営研究会理事長。大阪市立大学医学部卒業後、大阪ガス産業医。その後、健康経営研究会を設立し、理事長に就任し、健康経営についてさまざまな形で啓発活動を行っている。厚生労働省、文部科学省のメンタルへルスに関する委員、経済産業省次世代ヘルスケア産業協議会健康投資ワーキンググループ委員などを歴任。著書に『「健康経営」推進ガイドブック』、『職場の健康がみえる』(監修)ほか多数。

記事公開:2025年1月
情報は公開時点のものです

* 「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。