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押さえておきたい
「健康経営」の知識

今さら聞けない健康経営に関する基礎知識、健康リテラシーを高めるポイントを解説します。

vol.
09

運動と睡眠はパフォーマンスの源泉!
充実した毎日を送れる、健康のサイクルを手に入れよう。

適度な運動と質の高い睡眠は、仕事のパフォーマンスを上げる大切な要素です。
しかし、忙しい毎日の中で、その重要性は忘れられがちです。
特にデスクワークで日々の疲れを感じ、週末にはだらだらしてしまう方こそ、
運動と睡眠の見直しが必要です。運動と睡眠の深い関係性を理解し、
両者をバランスよく取り入れることで、仕事もプライベートも充実させる
グッドサイクルを手に入れましょう。

ビジネスパーソンの運動習慣と睡眠の現状は?

忙しい日々の中で、仕事を優先するあまり、運動や睡眠を後回しにしてしまうことは少なくないでしょう。気が付けば1日中デスクからほとんど動かなかったり、平日の睡眠不足を週末の「寝だめ」で補おうとしたりという状況は珍しくないかもしれません。しかし、仕事で高いパフォーマンスを発揮するには、運動習慣と質の高い睡眠を取り入れることが欠かせません。本連載最終回となる今回は、運動と睡眠の重要性について考えてみましょう。

厚生労働省によると、日本人の平日の座位時間は世界20カ国中で最長です。特にデスクワークの場合、椅子に座ったまま過ごす時間が長くなりがちですが、座位の時間が長いほど健康への悪影響が懸念されます。例えば、同じ姿勢を長時間とることで血栓ができやすくなり、その結果、肺の静脈が詰まるエコノミークラス症候群を引き起こす可能性があります。座りっぱなしの生活は命を危険にさらすこともあるのです。さらに、日本人の1日の平均歩数は男性6,628歩、女性5,659歩で、運動不足も課題となっています。また1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している人の割合は、男性36.2%、女性28.6%でした。

運動量が多い人に比べて少ない人は、循環器系疾患、2型糖尿病、がん、ロコモティブシンドローム、うつ病、認知症といった健康リスクが増加することが指摘されています。さらにWHO(世界保健機関)は、身体活動や運動の不足を全世界における死亡原因の危険因子の第4位に位置付けています。忙しい中でも、運動習慣を身に付けることで、健康的な生活をより長く維持することが可能です。

次に睡眠について見てみましょう。厚生労働白書によると、日本人の平均睡眠時間は女性7時間37分、男性7時間46分と、他国と比較して短い傾向があります。慢性的な睡眠不足は、仕事の効率や集中力を低下させるだけでなく、肥満やメタボリックシンドローム、循環器系疾患、うつ病などの健康リスクを高めるとされています。

睡眠時間の国際比較
【出典】厚生労働省「令和6年版 厚生労働白書」より作図

日本のビジネスパーソンに求められるのは、単なる睡眠時間の確保だけでなく質のよい睡眠を得ることです。運動と睡眠の改善は、仕事の効率を上げ、健康的な生活を支える重要な基盤となります。

運動習慣と睡眠が従業員のパフォーマンスを向上させる

健康経営が注目され、多くの企業が従業員の健康を意識し、運動習慣や睡眠改善の支援に取り組んでいます。その一例として「パワーナップ(積極的仮眠)」が挙げられます。オフィス内に仮眠スペースやリラックスできる環境を整え、昼休みに20分程度の短い仮眠をとることで頭をリフレッシュさせ、仕事の効率向上や、業務中の事故防止につながると期待されています。

また、ウェアラブル機器を活用した運動イベントを実施する企業や、フィットネスクラブと法人契約して従業員に利用を促す企業もあります。体力テストを導入して労災リスクの軽減に成功した事例もあり、こうした運動促進の取り組みを進める企業には、スポーツ庁が「スポーツエールカンパニー」として認定するなどの動きも見られます。

しかし、こうした企業のサポートだけでなく、従業員自身がセルフケアとして運動や睡眠を見直すことも大切です。運動と睡眠の改善に役立つヒントをご紹介します。

・良質な睡眠は運動から生まれる
運動することでよく眠れるようになります。意外に思われるかもしれませんが、仕事で疲れていても、座りっぱなしでほとんど体を動かさなければ、よい睡眠を得ることは難しいものです。運動によって生じる適度な体の疲労感が、よい睡眠をもたらします。
・デスクワークの疲労は運動で和らげる
長時間のデスクワークは、体だけでなく精神的にも疲労感をもたらします。そんなときこそ、軽い運動で体を動かすことが大切です。ストレッチやウォーキングといった軽い運動は気分転換やストレス解消につながります。じっとしているよりも、できる範囲で体を動かしてみましょう。精神的ストレスは、身体的運動によって軽減することができるのです。
・重視したいのは睡眠休養感
厚生労働省は1日6時間以上の睡眠を推奨していますが、必要な睡眠時間には個人差があります。「何時間眠ったか」よりも、「よく眠れた」「疲れがとれた」という実感(睡眠休養感)を重視しましょう。平日の睡眠不足を週末の「寝だめ」で補う場合、その不足分を取り戻せたとしても、それ以上のプラスの効果は期待できません。日々の睡眠での回復が鍵となります。
・運動と睡眠のよいサイクルを習慣に
運動と睡眠は相互に関連しており、これをよいサイクルに変えることができます。疲れをとるために休日をだらだらと過ごすより、思いきって体を動かすことで、その夜にぐっすり眠れることを実感できるでしょう。疲れているときこそ少し頑張って体を動かし、運動と睡眠の好循環を習慣化していきましょう。
運動と睡眠による休息サイクルのイメージ

今日からできる!? 運動習慣とよい睡眠で健康になるコツとは?

健康を手に入れるための第一歩は、無理をせず、自分に合った方法で取り組むことです。激しい運動を急に始める必要はありません。自分のペースで取り組むことで、継続が可能になるでしょう。おすすめの取り組みをいくつかご紹介します。

●運動

・無理せずできる範囲から始める
厚生労働省は「1日60分以上の身体活動」や「1日約8,000歩以上」を推奨しています。例えば、ストレッチなら1日10分程度、筋トレなら週2回など、無理のない範囲で取り組める内容からスタートしましょう。過度な運動はケガや睡眠を妨げることがあるため、安全に配慮し、自分に合った運動量を心がけてください。
・普段の生活に少し負荷を加える
今の生活に少しだけ負荷を加えるだけでも、体に確かな変化をもたらすことができます。例えば、デスクワークが多い方はポモドーロ・テクニック(25分集中・5分休憩サイクルの時間管理術)を活用し、25分ごとに5分間立ち歩いてみる。立ち仕事が多い方は、普段より速いペースで歩くなど、小さな工夫から始めてみましょう。

●睡眠

・朝の起床時間を一定にする
よい睡眠のためには、生活リズムを一定に保つことが重要です。たとえ就寝時間が前後しても、起床時間を一定にすることで、自然と眠りの質が向上します。朝起きたらまず太陽の光を浴びる習慣をつけると、体内のリズムが整いやすくなります。
・飲食に気を付ける
遅い時間に食事をとると、睡眠中にも胃腸が活動して深い眠りを妨げます。夕食は寝る2時間前までに済ませ、カフェインやアルコールは睡眠の質を低下させる原因になるため、控えるようにしましょう。また、寝る前のスマホやパソコンの使用も脳の興奮を引き起こすため、控えることが望ましいです。

運動と睡眠は、ビジネスパーソンにとって仕事の効率を高め、健康的な生活を実現する重要な要素です。そして従業員の健康に配慮する企業の取り組みは、未来への投資です。健康経営の推進は、単に従業員の健康を守るだけでなく、企業価値の向上や社会の持続的発展にもつながります。

「健康であること」は、社会や企業に多大な価値をもたらし、創造性や持続可能性を生み出していく鍵になります。健康経営は今後ますます注目されるテーマであり、私たちが取り組む課題でもあるのです。

富士フイルムグループの取り組み

富士フイルムグループは、企業理念に「健康増進に貢献し、人々の生活の質のさらなる向上に寄与する」ことを掲げています。この理念を実現するための、2030年をターゲットとした中長期CSR計画では、重点課題の一つが「健康」であり、ヘルスケア事業を通じて「健康的な社会をつくる」ことに取り組んでいます。
そして、企業理念、目指す姿(ビジョン)を実践するための基盤となる、従業員の健康維持増進を重要な経営課題として捉え、2019年には「富士フイルムグループ健康経営宣言」を制定しました。グループ全体の従業員の健康増進に対する取り組みを加速させており、社会、会社、事業が共に成長していくことを目指して、健康長寿社会の実現に貢献していきます。

PROFILE

岡田 邦夫
岡田 邦夫おかだ・くにお
NPO法人健康経営研究会理事長。大阪市立大学医学部卒業後、大阪ガス産業医。その後、健康経営研究会を設立し、理事長に就任し、健康経営についてさまざまな形で啓発活動を行っている。厚生労働省、文部科学省のメンタルへルスに関する委員、経済産業省次世代ヘルスケア産業協議会健康投資ワーキンググループ委員などを歴任。著書に『「健康経営」推進ガイドブック』、『職場の健康がみえる』(監修)ほか多数。

記事公開:2025年3月
情報は公開時点のものです

* 「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。