とても便利で使いやすいのに
売上に結びつかなかったハサミ
あるメーカーが、刃が複数重なったハサミを「海苔切りバサミ」として販売しました。
料理のトッピングに使う刻み海苔を手軽に作れる、便利なハサミです。とはいえ、その限られた用途もあってか売上数は3万本ほど……。
そもそも海苔切りバサミは、一枚の海苔にたった一度ハサミを入れるだけで、重なった刃によって海苔を細かく均等に、千切りにする仕組みです。海苔以外の食材にも使えますが、料理をしない人や、あらかじめ刻まれた海苔を買う人には必要のないものともいえます。そのため、購買層がある程度限られてしまうのが欠点でした。
そんなある日、メーカーの担当者は「海苔ではなく紙を切っている」というユーザーの声を耳にします。郵便物などを捨てる際に、海苔切りバサミで郵便物を細かく切ってから捨てているというのです。
早速、そのメーカーは、海苔切りバサミを違う名称、パッケージにして、シュレッダー用のハサミとして文具用品売り場で販売することにしました。すると、個人情報の取り扱いに敏感な時代なのも相まって、100万本も売り上げるヒット商品に。
つまり、最初の問いの「あること」とは、「使い道」が答えです。
同じような例として、ティッシュペーパーが挙げられます。ティッシュペーパーは元々、アメリカのメーカーが、戦場で兵士の治療に使う脱脂綿が不足したために、代用品として製造したもの。戦後は、女性の化粧落とし用の紙として発売されました。
そんなとき、「ティッシュを鼻紙として使っている」というユーザーが現れます。当初は「鼻をかむために使うなんて」と喜ばなかったそうですが、よくよく考えてみると鼻紙は、女性だけでなく老若男女が使いますよね。そこで鼻紙用として売り出したところ、ティッシュペーパーは現代の生活に欠かせない日用品となったのです。