本コンテンツは、お客さまがご利用のOSまたはブラウザーへ対応しておりません。
最新のブラウザーにアップデートしてください。

“ひらめき力”を磨くヒント
常識にとらわれず、自由に発想する「ラテラルシンキング」。
ラテラルシンキングによって成功したエピソードをもとに、“ひらめき力”を身につけるコツをご紹介します。

基準に満たない大きさのトマト。
ある加工をすることで、全く新しい商品に。
その加工とは?

vol.3

基準すれすれで
出荷できなかったトマト

岡山県産の「桃太郎トマト」といえば、大玉で甘いことが特徴のブランドトマト。大きさなど、その基準を満たすものだけが「桃太郎トマト」として出荷されます。
もちろんトマトすべてが大玉に育つといいのですが、なにぶん自然が相手ですから、なかには基準に満たないサイズのトマトもできてしまいます。捨てるのはもったいないので、他の商品として売り出せないかと考えますよね。
さて、大きさだけ基準に満たないトマト、あなたならどんな商品にして売り出しますか?

「トマトを潰して作る商品」、そう考える人が大半ではないでしょうか。確かに、トマトジュースやトマトペースト、トマトジャムなど、トマトを潰して作る商品は多々あります。ですが、ジュースなどにすると、出荷価格が大幅に下がってしまうのが難しいところ。とくに桃太郎トマトの合格基準すれすれのトマトは、潰してしまうにはもったいないですよね。
そこで、基準値に満たないトマトに、ある工夫をして売り出したところ、高値でありながらヒット商品になりました。

その工夫とは、「トマトをそのまま、まるごとゼリーにした」です。

トマトをペーストにしてゼリーにするのではなく、トマト1個をまるごとゼリーカップに詰め、ゼリーにしてしまったのです。小さいといっても他と比べれば大ぶりなトマトですから、まるごとゼリーにしてしまうと、かなりインパクトがある商品になります。それを高級スーパーやコンビニで販売したところ、デザートとしてだけでなく、ランチのサラダ代わりに食べるOLも現れました。その口コミや評判からメディアに取り上げられるようにもなり、ヒット商品へと繋がったのです。

抗酸化作用があるリコピンが含まれているトマト。品種も豊富だ

まるごとトマトゼリーは、
既存の容器ギリギリ 最大サイズで倍の値段

桃太郎トマトを使ったまるごとゼリーは、トマトまるごと1個というインパクト、そしてそのゼリーの大きさで消費者の目を引きました。
そもそもは、桃太郎ブランドとして売り出すには基準を満たしていなかったためにゼリーにしたトマト。本来の「桃太郎トマト」としては落ちこぼれだったのです。落ちこぼれトマトといえどゼリーとして見れば、既存のゼリー容器ギリギリの最大サイズとなります。さらに、トマトの売り場を「野菜売り場」から「スイーツ売り場」に変えることによって、「大きなトマトゼリー」として新たなブランド価値をつけられたのです。

ところが当初、地元の岡山では、高すぎて売れませんでした。ゼリーといえば、高くてもせいぜい2~300円です。一方、まるごとトマトゼリーは500円。完熟トマトは潰れやすく、すべての工程で手作業を必要とするため、安くならないのです。そうすると、普通ならトマトを半分にカットし、量を減らして値下げすることを考えてしまいがちですよね。
けれどもこのケースでは、「そもそもゼリーは300円が上限なのか?」という常識を疑い、高級品の集まる東京・六本木の東京ミッドタウンで売り出すことにしました。そのあたりで働く人たちにとっては、お店で食べるランチよりは安く、でもちょっぴり贅沢なランチサラダになるのです。
つまり、「販売すべき場所」と、「販売すべき価格」という基準を疑い、それを変えることで、インパクトある商品を作ることができたのです。

今回のケースでは、桃太郎トマトという、今ある「基準」を疑い、新しい「基準」に変えるだけでヒット商品が生まれました。
それにしても、大きさの「基準」を満たさなかった落ちこぼれトマトを、ゼリーという「基準」に変えることで、インパクトある新しい商品に作り変えたというのは、なんとも興味深いことですね。

“ひらめき力”のポイント
今ある「基準」を疑い、
「基準」を変えることで
新しいものや違う価値を生み出す

PROFILE

木村尚義きむら・なおよし
経営コンサルタント。ソフトウェア開発会社勤務、OAシステム販売会社、パソコンショップの立て直しなどを行い、外資系IT教育会社に転職。その後、創客営業研究所を設立。六本木ライブラリー、メンバーズコミュニティ個人事業研究会会長なども務める。著書に『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』など。

記事公開:2017年7月