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知っておきたい
医療のはなし

vol.3

見えない「光」で、身体を見る?
医療に活用されるX線と赤外線。

目には見えないけれど、聞き慣れた言葉になっているのが
「X線」や「赤外線」です。健康診断などの検査でよく用いられるX線と、
温度を可視化するサーモグラフィーなどに利用される赤外線。
これらで何が撮影できるのか、知らない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「X線写真」と「赤外線写真」ではどのようなものが
見えるのか、医療でどのように活用されているのかについて解説します。

密度の低い物質を通過する「X線」
私たちの身体からも出ている「赤外線」

医療機関ではさまざまな検査を行います。ここでは身体を傷つけずに「光」を使って調べることができる「X線」と「赤外線」について考えてみましょう。

X線も赤外線も光の仲間です。光は、空間を伝わっていく波の一種で電磁波とも呼ばれます。電磁波はその波長によってγ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波に分類され、それぞれが異なる性質を持っています。「可視光線」(紫、藍、青、緑、黄、橙、赤の7色)以外は、私たちは目で見ることができませんが、肌が日焼けする「紫外線」は可視光線よりも波長が短い見えない光です。この紫外線よりさらに波長が短いと「X線」、可視光線より波長が長いと「赤外線」になります。波長が短いほど物質を通り抜けやすくなります。

X線の特徴は、密度が低い物質を通り抜けることです。検査で人体に使用されるX線は皮膚や臓器は通過しますが、密度が高い骨や歯などでは止まります。この特徴を活用し、人為的にX線を発生させて身体の内部を透視するのがX線撮影です。レントゲン撮影と呼んだ方がなじみ深いかもしれません。

一方、赤外線は、体温を持つ私たちの身体からも放射されており、物体にぶつかったときに熱を発する特徴を持ちます。可視光線に近いものから近赤外線、中赤外線、遠赤外線に分けられます。身近なところでいえば、近赤外線はリモコンの赤外線通信や暗視カメラなどに、中~遠赤外線は暖房や調理器具などに使われています。

■光(電磁波)と波長

X線写真と赤外線写真。
医療の現場ではどう使われている?

目に見えないX線や赤外線が医療機関の検査でどう活用されているのか、詳しく見ていきましょう。

X線の代表的なものは、X線(レントゲン)写真です。医療機関では、X線照射装置とフィルムやイメージングプレートの間に身体を置き、X線を一方向から照射して身体の内部を撮影します。X線が通過した皮膚や臓器は黒く、通過できない骨や歯は白く写し出されます。得られる画像は2次元です。X線撮影を行う箇所は胸部、腹部、体幹部、四肢、頭部など全身に及びますが、乳房を調べる場合はマンモグラフィー(乳房X線検査)と呼ばれる装置が用いられます。

これに対してX線を通さないバリウムなどの造影剤を使って、通常写すことができない臓器や血管を撮影するのは、造影X線写真と呼ばれます。健康診断でおなじみのバリウムを飲んでから行う胃の検査は、造影X線写真になります。

またCT(Computed Tomography)では、身体の周囲からX線を照射し、身体を通過したX線の量をデータとして集めてコンピューターで処理し、身体の断面を画像にします。画像処理することで、3次元画像が得られます。X線写真を進化させ、さまざまな角度からの確認を可能にしたCTは、病気の早期発見や治療に役立っています。

一方、赤外線は、医療機関においては主にサーモグラフィーに使われています。サーモグラフィーは身体が発する赤外線を検出し、温度情報を分布図として画像化し、血流や神経の障害や痛みの有無を調べます。通常、温度が高いところは赤く、低いところは青く表示されるため、直感的に理解することができます。最近は新型コロナウイルスの感染対策として、非接触で体温を検知する機器をよく見かけるようになりましたが、これも人体が発する赤外線を検知しています。

■X線写真と赤外線写真の例

さらに高精細に、安全に!
デジタル化とAIが、画像診断を進化させる

医療の世界におけるX線や赤外線を使った画像診断は、今も進化を続けています。その大きな要因の一つは、デジタル化にあります。X線撮影は直接フィルムに焼き付ける方式から、データとして画像を取得するデジタル方式に変わりました。従来のフィルムでは、ほぼ実物大だった撮影画像がデジタルでは高解像度になり、より細かく患部を確認することができるようになりました。また、撮影データから自動的にノイズを低減できる機能などで撮影の失敗による撮り直しを減らせたり、低線量でも視認性の優れた画像を実現できたりと、技術の進歩により、患者の被ばく線量の減少にもつながりました。

X線画像のデジタル化は、画像の病院間での共有や遠隔での画像診断を実現し、近年の通信環境の高速化を背景に、医療の質を目覚ましく向上させつつあります。またコンピューターの処理速度の向上は、CTで撮影した膨大なデータの高速処理を可能にしました。それによって、手術前に臓器や血管の位置を立体的に把握したり、切除領域が最小になるようシミュレーションしたりすることができるようになりました。

進化のもう一つの要因は、AIです。デジタルデータとして蓄積された大量の画像をビッグデータとしてAIが解析し、医療を強力に支援することができるようになりました。例えば、患者の画像データをAIが再構成し、必要な情報だけをセグメンテーション(領域抽出)することで、限られた医療資源を効率的に活用できるなど、新たな診断価値の提供につながっています。また、AI技術を画像診断の補助として活用することで、見落とし防止が期待されるほか、医師の読影効率化にもつながると考えられます。

目に見えない「光」を医療に活用する技術は、デジタル化とAIによって可視化できる領域が次々と拡大されつつあります。これまで見つけることができなかった病変も、より鮮明な画像とAIによって早期発見につながっていくことでしょう。見えない世界を見る技術は、私たちの健康で豊かな社会を支え、今後も進化を続けていきます。

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記事公開 2022年5月