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知っておきたい
医療のはなし

vol.5

受けた方がいい?
内視鏡検査で分かるもの、できることとは。

日本で1年間にがんにかかる人は約100万人(2019年)。
特に胃がんや大腸がんなど消化器にできるがんは、罹患数、死亡数ともに
多くなっています。これらのがんは、早期発見と適切な治療で予後が
よいとされています。そこで今回は、胃や大腸など消化器系のがんや
病気の早期発見に有効な「内視鏡検査」について解説します。

がんはどの部位が多い?
早期発見に欠かせない内視鏡検査とは

現在、日本における1年間のがん罹患者数は約100万人(2019年)であり、がんで亡くなる人も約38万人(2020年)に上っています。日本人が一生のうちにがんに罹患する確率(2018年データに基づく)は男性65.0%、女性50.2%。男女ともにおよそ2人に1人が、がんになる時代となっています。

がん罹患数・死亡数について部位別で見ると、近年は特に消化器系の大腸がん、胃がんが多い傾向にあります。大腸がんは罹患数では全てのがんで男女総合1位(2019年)、死亡数でも男女総合2位(2020年)です。胃がんは罹患数では男女総合3位(2019年)、死亡数でも同じく男女総合3位(2020年)となっています。

■部位別がん患者数と死亡数の順位

【出典】国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」より作図

身近な病気であるがんですが、初期は自覚症状もないことが多く、自分では気づきにくいのも特徴です。一方で、医療の進歩に伴い、大腸がん、胃がんともに、早期に発見して適切な治療をすれば、予後がよいといわれています。さらに早期であるほど、治療もより体に負担の少ない方法を選べる可能性も高くなります。早期発見のためには、定期的に健康診断などで検査をすることが大切だといえるでしょう。

大腸がん、胃がんの早期の発見に有用なのは内視鏡検査です。内視鏡検査とは、先端に小型カメラやレンズを内蔵したスコープと呼ばれる細長い管を口や鼻、あるいは肛門から挿入し、胃や大腸の内部を観察し、ときには治療を行うものです。日本の内視鏡の診断技術は高く、自覚症状のない早期がんの段階で見つけられる場合もあり、内視鏡下で治療できることもあります。

胃内視鏡検査はがんの検査以外にも、例えば、胸焼け、腹痛、食欲低下、貧血などの症状がある場合にも、その原因を調べるために使われます。また、大腸への内視鏡検査も大腸と小腸に発生したポリープや炎症などの診断に実施されることもあります。

また、胃がんの予防においては、胃のピロリ菌除菌が有効とされています。除菌後はピロリ菌による炎症や萎縮性胃炎なども改善し、胃がんリスクも抑制されることが明らかになっています。2013年からは内視鏡検査でピロリ感染胃炎が確認された場合、保険診療で除菌が可能になりました。

知っておきたい内視鏡検査
どんな種類がある? 何が分かる?

内視鏡検査において、特に上部消化管(食道、胃、十二指腸)を検査するものを「上部消化管内視鏡検査」といいます。食道・胃・十二指腸内の潰瘍、炎症、がん、ポリープなどの有無や程度を内側から直接観察することができます。方法としては、口から挿入する「経口内視鏡」と、挿入部が経口内視鏡に比べて細くなっている内視鏡を鼻から挿入する「経鼻内視鏡」に分けられます。

経鼻内視鏡は内視鏡が舌のつけ根を通らないため嘔吐感が少なく、検査中に会話をすることもできるなど、一般的に苦痛が少ない内視鏡検査として普及しつつあります。

上部消化管のポリープや早期がんを切除する内視鏡治療は経口内視鏡で行われます。早期がんであれば、その治療として近年、内視鏡的切除が選択されることも多くなっています。その場合は治療用の特殊な内視鏡用処置具を使って行われます。

治療方法はポリープ切除術(ポリペクトミー)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に分けられます。特にESDは、専用の特殊な内視鏡用処置具を使って比較的大きながんも一度に切り取ることができるため、早期がんに対する内視鏡治療で多く用いられています。

胃がんは50歳代以降に罹患率が高まります。そのため、厚生労働省では50歳以上では2年に一度は胃がん検診を受けることを推奨しています。(胃部X線検査については40歳以上、年1回の受診が可能)

「大腸内視鏡検査」は、肛門から内視鏡を挿入して検査します。結腸と直腸を含む大腸や小腸に発生したポリープやがん、炎症などの有無や程度を観察することができます。検査時にポリープが見つかった場合、大きさや形態によっては同時にポリープの治療的切除が行われることがあります。一部の早期大腸がんでは、EMRやESDによる内視鏡治療も可能です。

大腸がんは罹患者が増加しており、予防の観点からも40歳以上では年に一度、定期的な大腸がん検診の受診がすすめられています。便潜血検査を行って異常が見つかれば、大腸内視鏡検査による精密検査を受けることが推奨されています。

■内視鏡検査項目

見えにくいものが見つけやすく!?
内視鏡の進化と「画像強調機能」とは

消化器における内視鏡検査の歴史は、1950年の胃カメラの登場から始まります。以降、検査の対象は大腸や食道、十二指腸のほか、小腸や胆嚢、胆管、膵臓などの幅広い部位に広がっていきました。

「苦しい」と思われがちな内視鏡検査ですが、これまで幾多の技術革新により、挿入するスコープの外径もより細く、挿入部先端もやわらかく曲がりやすい設計になり、スムーズな操作性を獲得してきました。限られた時間の中で、術者はより観察や操作がしやすく、患者は苦痛の少ない検査へと進化しています。

画像の高画質化、内視鏡観察技術の開発も進んでいます。近年は、通常の白色光に加えて青紫色など異なる種類の光を組み合わせて照射し画像処理をすることで、消化管の粘膜表面の模様や血管の輪郭、色調などを強調する画像強調機能も活用されています。これにより、早期がんの微小な病変も発見しやすくなっています。

さらに、医師の画像診断をサポートするAI技術を用いた画像診断支援機能なども登場しています。診断精度の高い検査を可能にする機器へと今後もさらなる進化を続けていくことでしょう。

大切なのは、私たち一人ひとりが定期的に健康状態をチェックすること。内視鏡検査もその一つといえます。検査により、がんを含めた体の異常を早期に発見し治療につなげる――それが何より重要といえるかもしれません。

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記事公開 2022年8月
情報は公開時点のものです