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知っておきたい
医療のはなし

vol.7

CT検査とMRI検査は何が違う?
仕組みや特徴を解説。

体の部位や症状に合わせてさまざまな機器が用いられる画像検査。
「CT」と「MRI」は、なかでも、大きな円筒状の機器の中で
横になった状態で検査する機器の見た目が似ていることから、
その違いがよく分からないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「CT検査」と「MRI検査」の違い、
それぞれの仕組みや特徴、対象となる疾患についても解説します。

X線を使うCT
磁場と電磁波を使うMRI

体の外から体内の様子を観察でき、異常の有無の早期発見に欠かせない画像検査である「CT(コンピュータ断層撮影装置)検査」と「MRI(磁気共鳴画像診断装置)検査」。どちらも大きな円筒状の機器の中に入って体の内部を撮影し、コンピュータで画像化して体の断層像を見ることができる医療機器です。しかし、その機器の中ではまったく異なる技術が使われています。仕組みや特徴には、どのような違いがあるのでしょうか。

まず、CTはX線を使用しています。CT内部のX線発生器からX線が照射され、装置内に横たわった人体を通過した後、向かい側の検出器で信号を受け取ります。装置側を360 度回転させながら全方向から照射・撮影し、体を通過したX線量のデータを収集します。それをコンピュータで処理して人体の薄い輪切りの断層画像を得る仕組みです。特に現在の主流であるマルチスライスCTは短時間で広範囲を撮影することができ、必要に応じて立体的に3D画像化することも可能となっています。

これに対し、MRIは非常に強い磁石による磁場と電磁波を使って、体の断面を撮影する検査装置です。原理としては、装置内部の強い磁場の中に入った人体に外から電磁波を与えると、体内の水素原子が共鳴し、振動した水素原子からは微弱な電磁波が発生します。この電磁波を受信して電気信号に変換することで断層画像を得る仕組みです。MRIは必要に応じて体の断面を縦、横、斜めなど、自由に撮影することが可能で、3D画像化を得意とする機器が普及しています。

どんな特徴や違いがある?
CT検査とMRI検査の基礎知識

CTとMRIのそれぞれの検査にはどのような特徴や違いがあるのでしょうか。

CTは検査時間が約5~20分と、MRIに比べて比較的短いのが特徴です。そのため、呼吸による体の動きを一時的に止めて行う肺などの撮影に有効です。肺がんや肺炎、肺気腫などの診断や肺がん検診にも使われます。

CTは心臓の検査にも使われ、大動脈瘤、冠動脈の狭窄などの疾患で心臓の血管を確認する場合にも有用です。造影剤を用いた造影CT検査は、肝臓がんや血管腫などの肝臓の疾患を診断するためにも利用されています。CTは解像力(微細なものを写し出す能力)に優れ、胸部X線検査では見つけることができなかった、わずか数ミリの小さな病変も発見できることがあります。なお、CTではX線を使っているため、X線が通りづらい骨で囲まれた場所の撮影はやや不向きとも言われています。

CT検査の流れとしては、目的とする検査部位によっては金属類を体から外して準備をします。検査台に横たわり、案内に従って、息を数回止めて撮影します。検査時間は、造影剤を使わないCT検査で約5~10分、造影CT検査で約10~20分です。

一方MRIは、強い磁場と電磁波を使っていますが、X線を使わないため、骨や空気による画像の乱れなどの影響がなく、骨に囲まれた脳や脊髄などの撮影に適しています。脳腫瘍、脳梗塞、脳出血、脳性麻痺、脳の萎縮がある認知症などの多くの脳の病気の診断や、脳ドックなどの検診にも使われています。MRIは臓器の形状だけでなく、臓器内部の組織の状態の評価も可能なため、特に脳や脊髄では、臓器内の組織の変化の評価にも使われています。

MRIは強い磁場を使っているため、心臓にペースメーカーや除細動器を装着している場合や人工内耳を装用している場合は検査ができません。金属製の心臓人工弁などを体内に入れている場合や、タトゥーを入れている人も撮影不可である場合があります。検査時間は内容によって異なりますが、約20~60分と比較的長時間、狭い空間に頭から入ることになります。閉所恐怖症の場合は検査できない場合があります。

MRI検査の流れとしては、MRI装置内の強い磁石に引きつけられる金属類は事前に体から外します。検査が始まると工事現場のような大きな音が装置から出るため、大きな音が苦手な場合には耳栓などを使用しながら検査を行います。検査台に横たわり、検査中はできるだけ体を動かさないようにします。

■CT検査とMRI検査

どこまで進化した?
さらなる高画質化と検査時間の短縮へ

CTとMRIは近年、深層学習(ディープラーニング)などを取り入れた新しいAI技術の進展によって、急速な進化を遂げています。CTはAI技術によって画像ノイズを低減できるようになり、撮影の失敗による撮り直しも減少しています。照射するX線が低線量でも鮮明な画像の撮影を実現できるようになっており、低被ばくで高画質、撮影時間のさらなる短縮も可能になってきています。

MRIもAI技術による画像ノイズの低減処理や、さらなる高画質化と検査時間の短縮、検査中の静音化が進んでいます。MRIは高磁場であるほど高画質であるため、最新の超高磁場MRIでは、より鮮明で細かい描写が可能になっています。MRIは特に脳の状態を観察するのに欠かせない機器です。高磁場MRIなどの登場により脳の可視化がさらに進み、これまで不可能だった脳梗塞の急性期の血管異常や血流の変化なども画像化できるようになるなど、応用の可能性も飛躍的に広がっています。

これからも、病気の早期発見、早期治療や患者の負担軽減、より安全な検査を目指して、検査機器は進化していくことでしょう。デジタル化の進展による、さらなるコンピュータの処理速度の向上、高画質化、AI技術を活用した画像診断、画像処理技術の向上によって、私たちの健康を支えてくれます。

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記事公開 2022年10月
情報は公開時点のものです