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知っておきたい
医療のはなし

vol.8

自分の骨密度、知ってる?
骨粗鬆症の予防に欠かせない骨密度測定とは。

“沈黙の疾患”といわれる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)。
骨量の減少、骨質の劣化によって骨が弱くなり、骨折しやすくなるため、
健康寿命を縮め、QOL(生活の質)の低下も招きかねません。
自覚症状を感じにくく、気がつかないうちに少しずつ進行するのも特徴です。
そのため、骨折して初めて気づくといったことも少なくありません。
大切なのは定期的に検査を受けて、自分の骨の量やその状態を
把握することです。そこで今回は、骨粗鬆症の早期発見に欠かせない
「骨密度測定」について解説します。

加齢とともに骨量は減少する!?
骨粗鬆症の現状とは

骨がもろくなり、骨折しやすくなってしまう骨粗鬆症。主に加齢によって骨量が減少し、骨質も劣化することで発症します。現在、日本の骨粗鬆症患者数は男性300万人、女性980万人の計約1,280万人と推定されています(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」)。高齢になってから発症することが多い骨粗鬆症は、高齢化の進展に伴い、患者数は増加傾向にあります。

骨の量は男女とも20歳頃に最大となり、40代半ばまでほぼ横ばいで維持されますが、その後緩やかに減少します。男性では70歳以降、女性では50歳頃の閉経前後の数年間に急速に減少してしまいます。そのため、骨粗鬆症は性別では圧倒的に女性が多く、発生頻度も男性の約3倍です。男性も高齢になるほど患者数が多くなる傾向にあります。

加齢以外にもこれまでの生活習慣が骨粗鬆症のリスクとなることがあります。若い頃の喫煙や過度の飲酒、無理なダイエット経験、運動量が少なかった人では発症リスクが高まるとされています。

筋力の増加と細胞の活性化により骨形成は盛んになるため、骨のためには適度な運動習慣も大切です。昨今のコロナ禍による外出自粛から生じる人々の運動不足は、骨粗鬆症や骨粗鬆症による骨折を今後増加させるのではないかと危惧されています。

骨の強さを判定するための代表的な指標に「骨密度」があります。骨密度とは、骨を構成するカルシウムなどのミネラル成分のつまり具合のことです。

この骨密度が低下している高齢者が運動不足に陥ると、骨がもろくなって骨粗鬆症が進み、筋力の低下や転倒リスク、転倒した際の骨折リスクも増大します。高齢者の「骨折・転倒」は要支援や要介護の要因の13%を占めており、健康寿命を縮め、QOLの低下にもつながるとされています。

■要支援・要介護の要因

【出典】厚生労働省「2019 年国民生活基礎調査」より作図

骨粗鬆症は早期発見することが早期治療につながります。ただし、自覚症状に乏しく、いつの間にか進行するため、早期発見には定期的な骨密度測定が有益です。定期的に測定し、自分の今の骨量を知っておくことが大切です。

急激に骨密度が低下する50歳前後を目前とした40歳以降の女性を対象に、5年刻みに骨密度検診を行う自治体が多くなっています。また、健康診断や人間ドックのオプションとして骨密度検査を受ける人も増えています。

どんな検査をする?
骨密度測定で分かることとは

骨の強さは、骨密度が示す骨量と骨質によって決まります。加齢によって、骨量の減少とともに骨質の劣化も同時に進みます。

同じ人間の骨でも、骨量は部位によって異なります。特に骨粗鬆症によって骨量が減少しやすく、もろくなりやすいのは背骨(椎体)、足の付け根の骨(大腿骨)、手首の骨(橈骨)とされています。骨粗鬆症が進行すると、軽く尻もちをついたり、重たいものを持ち上げたり、転倒しそうになったときに手をついたりしただけで、それらの骨を骨折しやすくなります。

骨量を調べる骨密度測定にはどんな種類があるのでしょうか。検査はX線や超音波を用いる3種類の方法があります。X線を用いるDXA(デキサ)法とMD(エムディ)法、超音波を用いる定量的超音波測定法(QUS法)です。

DXA法では、エネルギーの低い2種類のX線を使って測定します。通常のX線(レントゲン)撮影に比べて被ばく量は少ないとされています。全身のほとんどの骨の測定が可能で、骨密度検査法の中では精度が高めです。特にDXA法による腰椎や大腿骨の測定は骨粗鬆症診断・治療薬の効果判定に最も使われています。

MD 法もX線を使って測定します。アルミニウム板を挟むように両手のひらを台に乗せてX線撮影し、骨とアルミニウムの画像の濃淡差を比較して、手のひらの骨密度を測ります。一般的なX線撮影装置で簡便に撮影でき、骨粗鬆症の診断にも用いることができます。

QUS法では、かかとの骨に超音波を当てて測定します。短時間で簡便に測定できます。X線を使用していないため、妊娠中でも測定可能です。骨粗鬆症の検診に用いられることも多い測定法です。

■DXA法、MD法、QUS法

他の疾患と骨密度との知っておきたい意外な関係とは

加齢や生活習慣だけでなく、さまざまな疾患もまた骨密度に大きく関係し、影響を与えています。例えば、慢性腎臓病では、腎機能の低下により骨密度の低下が起こりやすくなります。慢性腎臓病の進行に伴い、合併症の一つである二次性副甲状腺機能亢進症になると、骨から過剰にカルシウムが失われ、急激な骨密度の低下を引き起こします。それによって前腕の骨が手首のところで折れてしまう橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)のリスクが約2倍になることも知られています。

慢性腎臓病と関わりの深い透析患者も、透析中は静かに動かずに横になって過ごす時間が長いため、筋萎縮や高齢化に伴って筋肉の量が減少していくサルコペニアなどを引き起こしやすくなるとされています。慢性腎臓病などで骨密度が低下している上に筋萎縮やサルコペニアなどで転倒しやすくなるため、透析患者の大腿骨頸部(大腿骨頭のすぐ下のくびれて細くなっている部分)骨折の骨折リスクは非透析患者の5倍以上といわれています。

そのほか、乳がんの治療法である内分泌療法も骨密度を低下させることが明らかになっています。閉経後の乳がんで使用するアロマターゼ阻害薬、閉経前の乳がんで使用する卵巣機能抑制剤、抗エストロゲン薬などの治療薬は骨密度を低下させ、骨粗鬆症の進行を早める傾向があるとされています。乳がん患者は骨粗鬆症予防のためにも定期的な骨密度検査が有用です。

また、乳がん罹患率の最初のピークは40歳代であり、骨密度が急激に落ちる50歳の一歩手前の年代です。40歳以降、乳がん検診の受診と同時に骨密度検査も行うことのメリットは大きいといわれています。

骨密度測定装置は近年、測定精度のさらなる向上が進み、最新機器の測定時間はわずか数秒~数十秒と、短時間での測定が可能になっています。また、高齢者でも検査台に安全に乗り降りしやすく、体に負担の少ない検査が受けられるように進化しています。これからも、骨粗鬆症の早期発見、早期治療や、検査における負担軽減、より安全な検査を目指して、検査機器は進化していきます。

超高齢社会を迎え、より大切になるのは、平均寿命を延ばすだけでなく、人々が健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる“健康寿命”をいかに延ばせるかでしょう。それがこれからの豊かな社会につながっていきます。

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記事公開 2022年11月
情報は公開時点のものです