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難病治療に効果が期待できる?
普及前夜の「バイオ医薬品」とは。

バイオテクノロジーの発展は、医療にさまざまな進化をもたらしています。
その一つが「バイオ医薬品」。
がんや糖尿病などの治療が難しい病気だけでなく、珍しい病気の治療にも
効果を発揮しており、現代医療に欠かせないものになっています。
今回は、近年需要が大きく増えているバイオ医薬品について解説します。

従来の医薬品では効果が無かった病気の治療に
使われるバイオ医薬品

バイオ医薬品は、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術によって作られる医薬品の総称です。膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンや、抗体、成長ホルモンといった、タンパク質などに由来する成分を持っており、微生物や動物細胞の中で作られます。一方、従来の医薬品は、「低分子医薬品」と呼ばれており、化学合成によって作られます。多くの低分子医薬品の分子量は500以下で、単純な構造をしているのに対して、バイオ医薬品は数千から15万と分子量が非常に多く、構造も複雑です。人体が自然に生み出す分子に似た構造を持っているため、低分子医薬品に比べて副作用が少なく、低分子医薬品では改善できなかった多くの病気に対して高い治療効果が証明されています。

世界初のバイオ医薬品は、1982年に開発された「ヒト・インスリン」です。それ以前の糖尿病の治療では、動物から抽出したインスリンが使われていました。しかし、培養した大腸菌から遺伝子組み換え技術によって作り出されたヒト・インスリンは、糖尿病の有効な治療薬として、現在も使われています。バイオテクノロジーの進化に伴い、この30年間で抗体医薬品やホルモン医薬品など次々に新しいバイオ医薬品が誕生。糖尿病の他にもがんや関節リウマチ、C型肝炎のような多くの慢性病に加えて、血友病や低身長症、クローン病といった珍しい病気の治療にもバイオ医薬品が使われるようになっています。

2024年にはバイオ医薬品が
従来型医薬品のシェアを上回る

このような治療が難しい病気や珍しい病気への効果が期待できるバイオ医薬品は、現代医療において需要が高まっています。特に2010年以後は年々大幅な伸びをみせており、全世界の医薬品の売り上げの中でバイオ医薬品が占める割合は、2010年が17%、2017年が25%で、2024年には31%に達する見込みです。さらに、売り上げ上位100品目で見てみると、バイオ医薬品のシェアは2010年が32%、2017年が49%、2024年には52%になり低分子医薬品を上回ると予想されています。

こうした流れを受けて製薬メーカーでも、今後バイオ医薬品の開発に力を入れていくと思われます。しかし、多様な病気に効果を発揮するバイオ医薬品も、良いことずくめというわけではありません。バイオ医薬品を大量生産するためには、数百から1万リットル規模の大型培養タンクを用いるなど、低分子医薬品に比べて大規模な設備が必要になります。また、原材料などが高価なため製造原価も高く、薬剤の価格も低分子医薬品より高額になります。

従来型医薬品とバイオ医薬品の売り上げ市場割合(上位100品目)

出典:「EvaluatePharma®ワールドプレビュー2018」をもとに作成

バイオ医薬品に“類似した”効果を
安価で得られるバイオシミラー

低分子医薬品には、特許が切れた先発医薬品と有効成分や投与経路、用法・用量、効能・効果が同一の後発医薬品である「ジェネリック医薬品」があります。ジェネリック医薬品は、先発医薬品とまったく同じものを、安く手に入れることができます。低分子医薬品に比べて高額なバイオ医薬品ですが、実はジェネリック医薬品のようなバイオ後続品というものがあります。これは「バイオシミラー」とも呼ばれています。あくまで先発のバイオ医薬品に似ているもので、まったく同じではありません。バイオ医薬品は分子構造が複雑な上に特有の製造工程が必要なため、ジェネリック医薬品とは異なりバイオ後続品が先発バイオ医薬品を正確に複製することは不可能です。

バイオシミラーは、先発バイオ医薬品と同等・同質の品質や安全性、有効性を有する医薬品と定義されています。ジェネリック医薬品は、先発医薬品との同一性を示すことが容易なため、基本的に生物学的同等性試験の実施だけが開発要件になっており、有効性・安全性を評価する臨床試験を行う必要はありません。一方、バイオシミラーは、分子構造が複雑で同一性を示すことが難しく、先発バイオ医薬品との類似性を示すために多くの臨床・非臨床試験を実施しなければいけません。また、原則として製造販売後の調査も実施することになっており、新薬並みの厳しい基準で長い年月をかけて開発されます。なお、バイオシミラーの価格は、先発バイオ医薬品の70%が基本になっています。

従来の医薬品とバイオ医薬品の違い

厚生労働省「バイオシミラーの現状(平成27年7月23日)」をもとに作成

厚生労働省がバイオ医薬品の正しい知識を
身に付けるための市民公開講座を開催

現在バイオ医薬品、バイオシミラーともに、医療用医薬品(処方薬)のみのため、まだ一般的にはあまり知られていません。特にバイオシミラーに関しては、バイオ医薬品の特許が切れてからの開発になるため、世界的にもこれからの医薬品というのが現状です。厚生労働省では、医療関係者や一般市民を対象にバイオ医薬品とバイオシミラーを正しく理解するための講習会を、2018年度から開催しています。

医療関係者向けの講習会は、2018年9月に行われた仙台会場を皮切りに、2019年3月の福岡会場まで全国12会場で開催(東京は2回)。市民公開講座は、2018年10月に東京で行われ、2019年1月に奈良でも開催予定です。既にさまざまな病気に効果を発揮しているバイオ医薬品に加えて今後続々とバイオシミラーが開発されることで、今まで治療できない病気で苦しんでいた大勢の人々が救われる日が近づいているのです。

「バイオ医薬品」と富士フイルム

  1. バイオ医薬品製造受託事業
    富士フイルムは、動物細胞や微生物を利用してバイオ医薬品に使われるタンパク質を効率的に産生する高度なバイオテクノロジーや、培養から抽出、精製にいたるプロセスの管理ノウハウなどを持つFUJIFILM Diosynth Biotechnologiesを中核に、医薬品の開発・製造受託事業の拡大を進めています。
    バイオ医薬品製造受託
  2. ヘルスケア事業
    人々の健康に関わる「予防」「診断」「治療」の3つの領域においてビジネスを展開しています。
    富士フイルムのヘルスケア事業

記事公開:2019年1月
情報は公開時点のものです