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人類社会をより豊かにするために
求められている「企業メセナ」とは。

古今あるいは洋の東西を問わず、社会で一定の地位を築いた個人や団体は、芸術や文化を支援してきました。こうした芸術文化支援を、フランス語で「メセナ」といいます。
そして現代社会でさらに進化したメセナに取り組んでいるのが企業です。
今回は、日本における企業メセナについて見てみましょう。

古代から偉人たちが取り組んでいた芸術文化支援

織田信長や豊臣秀吉が狩野永徳、千利休といった画家や茶人を召し抱えたように、日本では昔から時の有力者たちが、芸術や文化を支援してきました。ヨーロッパも同様で、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの腹心として外交・政治面を支えたマエケナス(Maecenas)は、詩人や芸術家を手厚く庇護しました。「メセナ(mécénat)」という言葉は、実はこのマエケナスが由来。日本では言葉こそなかったものの、織田信長や豊臣秀吉が行ったことも、メセナの一例といえるでしょう。そして、現代社会でメセナの有力な担い手になっているのが企業です。

初めて日本にメセナという言葉が紹介されたのは、1988年に京都で開催された3回目の「日仏文化サミット」でした。この年のテーマは「企業と文化」。これをきっかけにして1990年に「企業メセナ協議会」が発足します。同協議会では、企業メセナを「即効的な販売促進・広告宣伝効果を求めるのではなく、社会貢献の一環として行う芸術文化支援」と定義しています。その後、企業メセナという言葉が普及していく中で、マスメディアなどではより広義に捉えて「企業が行う社会貢献活動」という意味で使われるようにもなっていきます。

冠協賛とは一線を画し、「文化育成」を担う企業メセナ

日本に企業メセナという言葉が導入される以前から、企業による芸術文化支援活動は行われていました。1910年以降に企業が手掛けた美術館や劇場、博物館、音楽ホールなどが誕生し、その後続々と企業による文化施設が建てられます。中でも日本経済が隆盛をきわめた1980~90年代初頭は、多数の施設が造られました。まだ世の中にCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)という言葉もなかった時代に、こうした文化支援活動を主導したのは、企業の経営者たちでした。1990年代に入り企業メセナの概念が広まるにつれて、企業文化部や社会貢献部といった担当部署が設置され、企業による芸術文化支援は社会貢献活動の一環という位置付けが確立していきます。

企業メセナとは別のカテゴリーとして、冠協賛などの言葉で企業による文化事業も行われています。80年代後半には冠協賛が特に活発で、海外の有名な美術作品の購入や海外からオペラ公演を招聘するなど大きな話題になったものもありました。しかし、これらの中には投機や宣伝が目的で、「文化を金で買っている」として好意的に受け入れられないものも多かったのです。対して、企業メセナは「見返りを求めない」「文化を消費するのではなく、創造して育成する」という定義がされています。

メセナの取り組み目的

メセナの取り組みを2013年と2018年とで比較すると、自社事業とからめてメセナ活動に取り組む企業が増えているのがわかる。
出典:2018年度メセナ活動実態調査[報告書](公益社団法人企業メセナ協議会)より作図

企業メセナの主な活動例

企業メセナの主な活動例には、以下のようなものがあります。まず先ほども挙げた「文化施設運営」です。日本企業が運営する文化施設の数とクオリティの高さは、大きな特長になっています。次に「文化活動の主催」です。これには、企業が自ら主催するコンサートや講演会、アートに触れる機会を提供するワークショップなどがあります。続いて「資金の提供」。芸術文化団体やアートNPO、芸術家などの活動に対して行う資金援助や寄付、協賛などが該当します。他にも人や場所を提供する「非資金援助」やコンクールなどの「顕彰事業」、企業が基金を拠出して設立する「企業財団」などがあります。

先ほど企業メセナは、冠協賛とは一線を画すものだと説明しましたが、文化活動の主催などは両方に共通するものです。企業メセナによる企画は、冠協賛に比べると規模が小さいなどの傾向はありますが、文化活動の主催全てが企業メセナに当てはまるわけではありません。見返りを求めないのがメセナとはいえ、企業はあくまで営利団体であり、利潤追求が使命。文化支援のために大きな損失を出してしまっては本末転倒です。いくら社会貢献のためとはいえ、企業が一切の利益を放棄してメセナに取り組むことは難しいでしょう。「文化活動の主催」という形の企業メセナなのか冠協賛なのかは、企業の意図が文化支援と宣伝・販促活動のどちらにより重きを置いているのかという主観的な部分による面があり、明確な線引きができないのが実情です。

人材育成や地域活性化など、多様化する企業メセナ

2003年には日本にCSRという言葉が導入され、それ以前よりも企業に社会貢献が求められるようになりました。現在、多くの企業が、メセナ活動をCSRの一環として位置付けており、それに合わせて企業メセナの多様化が進んでいます。単に芸術文化の支援だけでなく、メセナ活動に社員を参加させ、多様性に富んだ人材を育成するといった取り組みもあります。また、社業と関連するような企業独自のプログラムを作ったり、地域活性化を目指したりするなど、従来はなかった企業メセナも見られるようになりました。

2016年度の国内におけるメセナの事業規模は、文化庁の予算が約1,042億円であるのに対して、財団を含む企業のメセナ活動費用は約848億円。企業が芸術文化振興に果たしている役割は、国に迫る大きさといえます。一方で、企業メセナの活動費は景気や企業の業績に左右されることも多く、新規の活動に対して企業が慎重にならざるを得ないという課題もあります。しかし、現代において、企業がより豊かな社会の創成を目指す一員となるべきなのは間違いないでしょう。

メセナ活動への社員参画数

メセナ活動への社員参画数は1~5人と回答した企業が最も多い。
出典:2018年度メセナ活動実態調査[報告書](公益社団法人企業メセナ協議会)より作図

【取材協力/公益社団法人企業メセナ協議会】
https://www.mecenat.or.jp/ 

富士フイルムの主なメセナ活動

  1. FUJIFILM SQUARE
    「フジフイルム スクエア」は、入場無料でいつでも写真作品などの展示をお楽しみいただける場です。2007年の開館以来開催した写真展は延べ1,300回以上で、600万人以上の幅広い年代の方々にご来館いただいています。
    FUJIFILM SQUAREの活動
  2. “PHOTO IS”想いをつなぐ。50,000人の写真展
    「写真の持つ魅力をもっとたくさんの人に感じてもらいたい」。その想いからスタートした本写真展は、どなたでも応募して出展できる参加型写真展です。
    “PHOTO IS”想いをつなぐ。50,000人の写真展 2019

記事公開:2019年6月