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これからの医療を支えるキーワード
「未病(みびょう)」とは?

「未病」とはもともと中国医学で提唱されていた
「病気ではないが健康でもない状態」のことを指す言葉です。
医療費や介護費がますます増える日本社会において、
未病という概念を広めることはとても重要になってきます。
そこで、今回は未病の定義、現状などについて見ていきます。

発症前に治療する「未病」という考え方

中国医学的な考えでは、「未病」は発病には至らないものの、軽い予兆がある「未だ病まず」な状態のことを指します。つまり、症状が軽微なうちに異常を見つけて病気を予防するという考え方です。

元をたどると、2000年以上前の後漢の時代に著された中国最古の医学書とされる『黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)』に「聖人は未病を治す」という部分があり、そこに未病の時期をとらえて治すことのできる人が医療者として最高の力量を持つ人(聖人)であると書かれていました。西洋医学が発達した現在の中国でも、未病を治す「治未病(ちみびょう)」は治療の根源としてとらえられています。

このように、未病はとても長い歴史を持つ言葉ですが、日本でも貝原益軒が1712年に著した『養生訓』でも触れているように、その考えは古くから知られています。1997年には一般社団法人日本未病システム学会が発足、『厚生白書(平成9年度版)』でも未病について言及されました。

「病気になる前に治す」という考え方は現在の予防医学にも通じており、最先端の医学者がチャレンジしている分野でもあるのです。

肥満・喫煙症候群など身近なものも。
未病の具体的な症状とは?

前述の日本未病システム学会では、未病を「自覚症状はないが検査では異常がある状態」と「自覚症状はあるが検査では異常がない状態」と定義。その両者が交差する「自覚症状があり検査でも異常がある状態」を「病気」としています。

未病の概念
出典:一般社団法人 日本未病システム学会『「未病期」の状態』を参考に作図

また、同学会では、検査の種類などによって未病は下記のように4つに分類しています。

M-I 自覚症状はないが検査で異常が見られ、放置すると重症化するもの
A.検査(一般)で異常があるもの
B.特殊検査で異常が見られるもの
C.遺伝子レベルで異常があるもの
M-II 自覚症状はあるが検査では異常がないもの

検査で見つかるM-Iのタイプを「西洋型未病」、検査で異常はないが自覚症状のあるM-IIのタイプを「東洋型未病」と分類することもあります。

具体的な未病の対象となるのは、放置すると病気への進展が予測される、肥満・喫煙症候群・脂肪肝・メタボリックシンドロームといった身近なものから、軽症高血圧・高脂血症・境界型糖尿病・高尿酸血症・動脈硬化・骨粗しょう症・無症候性蛋白尿・B型肝炎ウイルスのキャリア・無症候性脳梗塞・潜在性心不全など、さまざまな種類があります。

検査によって、また自覚症状によって未病が発覚した時点で病気を発症させないための治療を行うことは、今後いっそう重要になると考えられています。


「Society 5.0 時代」に注目される「未病」の概念

2016年1月に内閣府が発表した「Society 5.0」。IoTやビッグデータを活用し人とモノがより簡単につながることで「人中心の社会」を創出することを目指すこの動きの中でも、未病という概念は注目を集めています。

2018年3月に経団連が発表した「Society 5.0 時代のヘルスケア」によると、今後ヘルスケアの重心は病気の治療を中心とする「医療」から、「未病」段階のケアや「予防」にシフトするとされています。
変革の肝となるのは、ビッグデータ処理やAIといったIT技術の発展、そしてバイオテクノロジー技術を活用した次世代医療技術。これまでは画一的になされていた治療を個別のものにすることができるといわれています。すべての人が適切なタイミングに適切なケアを受けられることになり、病気の発生と重症化を最小限にとどめることが可能になるのです。
こうした取り組みにより、「寿命」だけではなく「健康寿命」を伸ばし、個人の生活の質(Quality of Life)の向上はもちろん、団塊の世代が後期高齢者となる2025年には50兆円を突破するとされている医療費の適正化も期待されています。

Society 5.0 時代のヘルスケア
出典:一般社団法人 日本経済団体連合会『Society 5.0 時代のヘルスケア』をもとに作図

「未病産業」を世界へ ~神奈川県の取り組み

未病というキーワードをこれからの医療のあり方の指針にしているのは、政府だけではありません。高齢化のスピードが日本の中でも早く進む神奈川県は、このままでは病院もその機能を果たせなくなると懸念されていることから、「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」と呼ばれる「未病」ケアを重視した政策を行っています。
その中では、企業や団体が「健康管理最高責任者(CHO)」を置き、経営責任として従業員や被扶養者の健康マネジメントを行う取り組みや、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスと連携して、トイレやベッドにセンサーを埋め込んでヘルスケアデータを収集・分析する「ME -BYO ハウスラボ・プロジェクト」という取り組みなどが行われています。日常生活を送っているなかでの健康管理、病気になってしまったときの対応がスムーズな社会システムの構築が進められているのです。

これらの取り組みから生まれる商品・サービスを「ME -BYO BRAND」として、海外に積極的に発信することも行われています。

日本発の「未病産業」は、先進国を中心とした世界全体の高齢化にともない、国内だけではなく世界規模の市場に進出できる有望な成長産業として期待されているのです。

富士フイルムの「未病」への取り組み

  1. 富士フイルムの挑戦
    富士フイルムは「予防」「診断」そして「治療」の領域まで、健康の維持・回復を横断的に手掛けることのできる幅広い技術と視野を持った「トータルヘルスケアカンパニー」として、グループのもつ製品・サービス・これまで蓄積してきた技術を生かし、「人々の生活の質のさらなる向上」に取り組んでいます。
    「予防」「診断」そして「治療」の領域へ

記事公開:2019年9月
情報は公開時点のものです