SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された
「持続可能な世界を実現する」ための国際的な目標で、
2030年までに達成すべき具体的な17のゴールが示されています。
しかし一方で、新聞社による調査によるとSDGsを
「聞いたことがある」と答えた人の割合は27%にとどまるなど、
日本での認知度は高いとは言えません。
そこで今回は、ビジネスにも重要な意味を持つ「SDGs」とは
どういうものなのか、どのような取り組みが行われているのかを
見ていくことにしましょう。
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「誰一人取り残さない」社会の実現へ。
国際開発目標「SDGs」とは?
世界を動かすワード「SDGs」とは?
SDGs(エスディージーズ)とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」※の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標です。
SDGsの前身で、2000年に採択されたMDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)では、2015年を期限に「極度の貧困と飢餓の撲滅」「初等教育の完全普及の達成」といった8つのゴールを掲げていましたが、2015年の期限をむかえ一定の成果は達成できたものの「乳幼児や妊産婦の死亡率削減」など未達成項目もありました。また、MDGsは先進国による開発途上国への支援が中心となっており、地域の偏りなどの見落としが見られるという途上国からの指摘、反発もありました。
そこで、MDGsに代わり2030年までの達成を目標として新たに定められたのがSDGsです。先進国主導のMDGsと異なり、先進国と途上国が一丸となり、地球上の「誰一人として取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目標にしています。
それではSDGsの内容を見ていきましょう。下記の図版にあるようにSDGsは17の目標が設けられており、それらの達成に必要なターゲット(具体目標)がそれぞれ5~10個程度、計169個設定されています。また、達成度を評価する232の指標も決められています。
例えば「貧困をなくそう」という目標に対しては「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」「2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる」といった具体的なターゲットが7つ設定されているのです。
※「持続可能な開発」とは、環境が適切に保全され、次世代が必要とするものを損なうことなく、現在の要求を満たすような開発を示す。
企業はSDGsへの取り組みが必須。
本業での社会貢献が問われる時代に
次に日本政府のSDGsへの取り組みを見ていきましょう。2015年のSDGs制定を受け、政府は翌年5月に総理大臣を本部長として全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置、さらに行政・民間セクター・NGO・NPOといったステークホルダーによって構成される「SDGs推進円卓会議」も開催されました。
SDGs推進本部は、2015年12月に「SDGs実施指針」を制定。「健康・長寿の達成」「平和と安全・安心社会の実現」など8つの日本の優先課題を決め、「感染症対策や保険システムの強化」「組織犯罪・人身取引・児童虐待などの対策推進」といったさまざまな施策でフォローアップしていくことを決定しました。また「SDGs未来都市」を選定するなど、自治体レベルでもSDGsを通じ地方創生を目指す取り組みが推進されています。
大手企業がSDGsに取り組む動きも加速しています。少し前までは企業が行ってきた社会貢献活動はCSR(Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任)と呼ばれ、利益の一部を社会に還元する活動と解釈されることが多く、業績悪化や経営者の交代といった要因で継続が難しくなるケースがありました。
一方、持続可能性(サスティナビリティ)を重視するSDGsでは、企業活動そのものにSDGsの考え方を組み込むことが前提になっています。そのため、CSRで主流だったボランティアや寄付ではなく、企業が収益をあげることが同時に社会や地球環境の改善につながるようなビジネスモデルが求められているのです。
この背景には、機関投資家を中心に企業経営の持続可能性を評価するという概念が普及し、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)といった要素に配慮したESG投資に注目が集まっていることがあります。投資の条件として財務情報以外に、企業がSDGsに取り組んでいるかが見られる時代になっているのです。今や企業にとってもSDGsの取り組みは必須となってきています。
すでに今起こっている変化の中にもSDGsへつながるものはたくさんあります。例えばここ数年でぐっと速度を増した働き方改革は、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に、企業が力を入れている環境に配慮した製品の製造は、目標13「気候変動に具体的な対策を」につながっています。
また、組織的な活動がすべてでもありません。日々の生活の中でマイバッグを持参してレジ袋利用を減らすといった個人の意識改善も目標14「海の豊かさを守ろう」のようなゴールの達成に欠かせないものです。SDGsで制定されたゴールは企業や政府から個人に至るまで、さまざまな視点から目指すことができる人類共通のゴールなのです。
日本は最低評価の項目も!?
現在のSDGs達成状況
このように具体的なゴールの達成に向けて、多方面からの動きが本格化してきたSDGsですが、実際の進捗状況は必ずしも著しいとは言えません。
2019年6月にベルテルスマン財団とSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)から発表されたSDGs達成ランキングを見ると、日本は162カ国中15位という結果になっています。一見悪くない順位のようですが、SDGsの17の目標のうち、日本が達成していると評価されたのは目標4「質の高い教育をみんなに」と目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の2つだけで、そのほかの15の目標は未達成となっています。
特に目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、12「つくる責任 つかう責任」、13「気候変動に具体的な対策を」、17「パートナーシップで目標を達成しよう」は最低評価(深刻な課題がある)とされました。ちなみに達成度上位3国はデンマーク、スウェーデン、フィンランドと、北欧が独占しています。
全世界的に見てもさまざまな未解決課題があります。例えば極度の貧困の中で暮らす人々の割合は、1990年の36%から2018年には6%へと大きく低下しましたが、紛争や自然災害の影響でそのペースは鈍化し始めています。同じく、減少が続いていた全世界の飢餓も再び増加の傾向にあります。
さらに深刻なのは、気候変動への対策の遅れです。大気中の二酸化炭素濃度は上昇を続けており、海の酸性度は産業革命以前との比較で26%高くなっています。二酸化炭素の排出が今のペースで続けば、2100年までに産業革命以前から150%も上がると予想されています。この数値は深刻なものですが、各国の対応は遅れており、目標14「海の豊かさを守ろう」で最高評価を得ることのできた国はありませんでした。
このように、SDGsの実現はかなり難しいのが現状です。今後は世界の政府、企業はもちろん個人単位でも、次世代に美しい地球とより良い社会を残すため、SDGsへの理解を深め、それぞれができることを最大限行っていく必要があります。
「SDGs」を推進する富士フイルムの取り組み
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記事公開:2019年11月
情報は公開時点のものです