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 地球温暖化を食い止める!
「脱炭素社会」への転換。

近年、深刻さを増す猛暑や季節外れの台風といった異常気象に、
脅威を感じている方も多いのではないでしょうか? 
確実に進行する地球温暖化への対策を講じなければ、今後もこうした
異常気象が発生し、大きな災害が続くことは避けられない状況です。
今回はこうした危機的状況を改善するために欠かせないキーワード
「脱炭素社会」について改めて見ていきましょう。

世界中で目指す「脱炭素社会」とは?
温暖化防止の目標達成はギリギリの状態

「脱炭素社会」とは、気候変動や温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量を減らした社会のことです。全世界的に脱炭素社会を目指すことを定めた協定は「パリ協定」と呼ばれます。

もともと、地球温暖化への対策を約束した条約としては1997年に京都で開催された第3回COP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)で採択された「京都議定書」があり、2020年までの温室効果ガス※1排出削減の目標を定める枠組みでした。しかしこの議定書は世界の国々を先進国と開発途上国に二分。中国やインドなど開発途上国に分類されている国々のほうが温室効果ガスを多く排出している中で、先進国のみに排出削減義務が課せられていたのです。これに反対したアメリカが参加していないということもあり、この枠組みで有効な対策を取ることが難しくなっていました。

このような停滞した状況を打開して2020年以降の世界的な枠組みを定めるため、各国首脳が長時間交渉を重ね、2015年12月にパリで開催された第21回COPで採択されたのが「パリ協定」です。これは歴史上初めて先進国・開発途上国の区別なく気候変動対策の行動をとることを義務づけた歴史的な合意です。

パリ協定では、気候変動の悪影響※2を回避するため「産業革命後の気温上昇を2℃以内に抑える」という「2℃目標」が設定されています。しかし、世界の平均気温は産業革命以前に比べ、すでに1℃上昇しており、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、早ければ2030年にも同基準より1.5℃上昇する見込みとされているのです。このままでは取り返しのつかないレベルでの気候変動が避けられない状況になっています。

この2℃目標を達成するためには、今世紀後半までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする必要があります。これが「脱炭素」です。パリ協定は、そのために、いつまでにどのような規模の削減を行うかを示し、世界が脱炭素に向かうことを世界に発信しているのです。

とはいえ、現在世界各国が削減を約束している排出量を積算しても目標には届かず、このままでは平均気温は3℃上昇してしまうと言われています。2℃目標を達成するための「残された排出可能量」※3は底をつきかけています。「脱炭素」は喫緊の課題なのです。

※1 地表から出る赤外線などを吸収することにより、温室効果をもたらす気体の総称。二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスなどがある。
※2 具体的な気候変動の影響としては、海面上昇による洪水、熱波、食糧不足、生態系への悪影響、農業・工業の被害等による貧困などがある。
※3 利用可能な予算になぞらえて「カーボンバジェット」と呼ぶこともある。詳しくは後述。

ビジネスも動いた! 「脱炭素社会」への取り組み
化石燃料に依存する企業には投資引き上げも

日本政府も2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を策定し、ビジネス主導のイノベーションを通じて2050年までの80%削減、そして最終到達点としての「脱炭素社会」を掲げています。具体的なイノベーションとして、運輸、産業、民生、電力の各分野での努力目標が資源エネルギー庁から発表されています。

分野別CO2排出量と主な個別技術

出典:資源エネルギー庁「脱炭素化に向けた次世代技術・イノベーションについて」より作図

産業分野のなかで特に注目されているのが、CO2と水を原料にして、太陽エネルギーを使ってプラスチック原料等を製造する「人工光合成」と呼ばれる技術です。これが実用化されれば、CO2排出量を減らすだけでなく、原油を使わずに化成品、燃料、建材などを作ることができる、まさしく夢の技術と言えるでしょう。この技術に必要な水素を生成するためのコストが高く、また生成時にCO2も排出されるので、まだまだ技術的イノベーションが必要ですが、このように技術面から地球温暖化に立ち向かおうとする動きも強くあります。

世界的なビジネスの動きとしても脱炭素化は進んでいます。注目すべきは「地球に優しく」といったモラル的な理由ではなく、純粋にマーケット的な理由が働いているところです。 その大きな理由は、パリ協定の2℃目標を達成するためには、排出できるCO2の残量(カーボンバジェット)が簡単に計算できることです。

すでに排出してしまった分をのぞくと、今後排出できるCO2の量は約1兆トンしかありません。つまり、それ以降は化石燃料がたとえまだあったとしても使うことができず、死蔵資産になってしまうのです。

また、このことから化石燃料に依存する企業への投資を引き上げる「ダイベストメント」という動きも加速しています。これまでのように財務状況だけを投資の判断に使うのではなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)を重視するESG投資においても、環境問題に意識の低い企業には資金が集まりにくくなっているのです。

脱炭素社会へはパリ協定の課題を超えるため
産官学の力の結集が急務

このように国内でもさまざまな方策が出され、国際的にイニシアチブを握ることを目指してはいるものの、現状、日本は世界の動きを牽引しているとは言えません。例えば、日本の発電方法の内訳を見ると、火力発電の割合は減少しているとはいえまだ78%と高く、またESG投資で特に避けられやすい石炭火力発電の割合が約28.3%を占めています。

現在、石炭は安定供給や経済性の面で優れたエネルギー源であることは間違いなく、まだコストが高い再生可能エネルギーだけでは発電量の不安定さをコントロールすることが難しいという事情もあります。しかし、石炭火力は環境負荷・ビジネス的リスクともに高いとされていることも確かです。

また世界的に見ても、パリ協定の実現には多くの課題があります。2019年11月には、二酸化炭素排出量世界2位のアメリカがパリ協定を離脱することを国連へ正式通告しました。この動きは、アメリカ国内以外にも大きな影響を及ぼすのではないかと懸念されています。

このように脱炭素社会への転換の試みはお世辞にも順風満帆とは言えません。持続可能な社会を次世代に残すため、目先の事情にとらわれない大胆な改革が世界全体で求められています。個人の意識改革はもちろん、産官学の力を結集し早急に取り組んでいく必要があるでしょう。

「脱炭素社会」に貢献する富士フイルムの取り組み

  1. サステナブル社会の実現に向けて
    富士フイルムグループは、持続的に発展していくための経営の根幹をなす計画として、2030年度をゴールとするCSR計画「Sustainable Value Plan 2030」を策定しています。
    CSR計画
  2. 国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟
    2019年4月 富士フイルムホールディングスは、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟しました。2050年度までに、すべての購入電力の再生可能エネルギー由来電力への転換と、当社が使用するすべてのエネルギーでのCO2排出量ゼロを目指します。

記事公開:2019年12月
情報は公開時点のものです