世界中で広がるレジ袋の禁止・有料化、そして生分解性ストローの
普及など、現在「プラスチックゴミ」を削減する動きが加速しています。
そこで今回は、深刻な「海洋プラスチックゴミ問題」について
あらためて見ていきましょう。
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わたしたちの海をむしばむ
「海洋プラスチックゴミ」の脅威とは?
分解には1000年も!? 人体の影響が
懸念される「マイクロプラスチック」も
2015年9月の国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択されましたが、現在、「14.海の豊かさを守ろう」という目標については、世界各国とも達成度が低い状況です。
中でも深刻な問題となっているのは、美しい海を汚染する「海洋ゴミ」。これには、海岸に打ち上げられた「漂着ゴミ」、海面や海中を漂う「漂流ゴミ」、そして海底に積もった「海底ゴミ」があります。その内訳として最も多いのが、プラスチックゴミなのです。
包装容器やレジ袋、食器、おもちゃ、ペットボトルなど、軽くて加工しやすく耐久性にも優れたプラスチック製品は、第二次世界大戦以降、私たちの身の回りのあらゆる場所に普及しました。ところがプラスチック製品はその耐久性があだとなり、適切に回収・処理されない限り自然に還らないため、いつまでも残り続けるゴミになってしまうのです。プラスチック製のレジ袋が完全に自然分解されるまでには、1000年以上かかるという研究結果もあるほどです。
ポイ捨てなどで不法に廃棄されたプラスチックゴミは、雨とともに排水溝へ流れ、そのまま分解されることなく川を下り、最終的には海へ流れ出してしまいます。これが「海洋プラスチックゴミ」の原因です。
そして、現在、海の中ではレジ袋やペットボトルといったプラスチック製品そのものよりも、サイズが5mm以下の「マイクロプラスチック」と呼ばれるものの割合の方が高くなってきました。
マイクロプラスチックには、製品原料として使われる米粒大のプラスチック粒(レジンペレット)や、洗顔料、歯磨き粉などの研磨剤(スクラブ)として使用するために最初から微小なサイズで製造された一次マイクロプラスチックと、ペットボトルのようなプラスチック製品が波や紫外線など自然環境にさらされる中で劣化し、粉々になることで生じた二次マイクロプラスチックがあります。どちらも「漂流ゴミ」、「海底ゴミ」として海洋中に大量に流れ込んでおり、現在さまざまなリスクが叫ばれているのです。
特に無視できないのが、健康被害のリスクです。プラスチックに使われる添加物には有害性が指摘されるものが複数あり、これらはマイクロプラスチックになっても残留します。また、石油から作られたプラスチックはPCB※1やDDT※2といった海水内の有害物質を吸収しやすい性質があるのです。マイクロプラスチックはサイズが小さいためプランクトンや小魚が誤飲し体内に蓄積することで、それらを捕食する大きな生物にも影響。食物連鎖を経て最終的に人体に影響が出てくる可能性も指摘されています。
※1 PCB=ポリ塩化ビフェニル
※2 DDT=ジクロロジフェニルトリクロロエタン
日本の排出量は先進国でなんと2位…
アジアでのゴミ処理受け入れ規制も加速
では実際に海洋プラスチックゴミはどれくらい発生しているのか、データを確認してみましょう。環境省の調べによると、世界では毎年少なくとも800万トンものプラスチックがゴミとして海に流出しているとされています。これは、ジャンボジェット約5万機分に相当する膨大な量です。
そして、そのうち日本から流出していると推計されているのは2~6万トン。これは海に面する192の国や地域全体のうち30位、なんと先進国の中では20位のアメリカに次ぐ2番目の多さです。
また、現在海洋には1億5000万トン以上のプラスチックが存在しているとも推計されており、このペースでプラスチックゴミの海への流入が続けば、30年後の海では魚の総重量よりプラスチックゴミの総重量の方が多くなってしまうとまで予想されているのです。
これを受け、世界的にプラスチックゴミを減らす努力が始まっています。EU(European Union)では2018年、EU全域にわたる消費削減やコスト負担などの新しい規制を提案しました。また、レジ袋やストローの有償化や製造・販売・使用などの禁止を決定した国も増えています。中でも現在プラスチックゴミの発生量が世界トップの中国は、徹底した対策を打ち出しており、ストローとレジ袋は2020年度中に利用禁止に、歯ブラシや食品容器も大幅な削減を指示しています。
また、日本やアメリカを始めとする先進国からプラスチックゴミの輸入(受け入れ)を行っていたアジア諸国では、輸入規制が始まりました。2017年に中国が口火を切って輸入禁止を決定し、タイなど他のアジア諸国もそれに追随しています。民間でも、大型スーパーやファストフード、コーヒーチェーン店などグローバルに展開する企業を中心に脱プラスチックの動きは加速しています。
「海洋プラスチックゴミ対策アクションプラン」など日本でもさまざまな施策が
もちろんわが国も手をこまねいているわけではありません。2018年6月には、海外漂着物処理推進法の改正が行われ、法の目的に「海洋環境の保全の観点等」を追加。漂流ゴミ等の円滑な処理の推進、海岸漂着物等の発生抑制、マイクロプラスチック対策、国際的な連携の確保および国際協力の推進などを内容に盛り込んでいます。
また、同年6月に発表した「第4次循環型社会形成推進基本計画」の中で「プラスチック資源循環戦略」が、さらに、2019年には環境省により「海洋プラスチックゴミ対策アクションプラン」が策定されました。
ここでは、プラスチックの有効利用を前提としながらも、プラスチックゴミの回収や適正処理の徹底、ポイ捨てや不法投棄の防止、すでに流出したゴミの回収といった、海洋の汚染を抑える取り組みが行われています。また、微生物が分解でき海洋への影響や負担が少ない新素材の開発や、その素材への転換なども計画が推し進められています。
しかしプラスチックゴミを本当の意味でなくしていくには、行政や企業はもちろん、外で出たゴミは家に持ち帰る、または決められた場所で処分する、毎日の暮らしの中でできるだけゴミを出さないようにするといった、消費者である私たち一人ひとりの意識的な取り組みが必要です。無駄なゴミを減らすリデュース(Reduce)、使ったものをゴミにせず何度も使うリユース(Reuse)、使い終わったものを資源に戻して新しい製品を作るリサイクル(Recycle)の3Rを意識し、今からできることを考えて取り組んでいきましょう
「SDGs」を推進する富士フイルムの取り組み
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- CSRの考え方と各種方針
- 富士フイルムグループの考えるCSRとは、誠実かつ公正な事業活動を通じて企業理念を実践することにより、社会の持続可能な発展に貢献することです。
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- 富士フイルムグループ健康経営宣言
記事公開:2020年2月
情報は公開時点のものです