本コンテンツは、お客さまがご利用のOSまたはブラウザーへ対応しておりません。
最新のOS、ブラウザーにアップデートしてください。

Reading keywords

今さら聞けない!?
菌とは違うウイルスの特徴とは

2020年、世界に大きな衝撃を与えている新型コロナウイルス感染症。
その原因となる「ウイルス」とはそもそもどのようなものなのでしょうか?
同一視されがちな「菌」とは、どう違うのでしょうか?
今回は意外と知らない、ウイルスについての基本的な知識をご紹介します。

ウイルスだけじゃない
人間の体に入り感染症を引き起こす「病原体」とは?

ウイルスのように、人間や動物の体内に入ることでさまざまな病気を引き起こす小さな生物のことを「病原体」と呼びます。病原体が引き起こす病気が「感染症」です。病原体には、今回取り上げるウイルスの他に、寄生虫、真菌、細菌などがあります。それぞれ簡単に説明していきましょう。

寄生虫は、人や動物の体の表面や内部に寄生して栄養分を盗み取る生物です。寄生される方を宿主と呼び、寄生虫は宿主なしでは生存できません。赤痢アメーバのように非常に小さい単細胞動物である「原虫」、回虫やアニサキスといった肉眼で見ることのできる多細胞生物である「蠕虫(ぜんちゅう)」という分類があるほか、蚊、ノミ、シラミ、といった感染を媒介する動物(衛生動物)も寄生虫に含まれます。

真菌はカビやキノコの仲間。水虫の原因となる白癬(はくせん)菌や、肺などに感染症を引き起こすアスペルギルスは真菌で、人の細胞に定着し、菌糸が成長と分枝(枝分かれ)によって発育していきます。真菌が引き起こす感染症は「真菌症」とも呼ばれ、治療には抗真菌薬が必要です。人間を含む動植物同様、「核」と呼ばれるDNAなどの遺伝子情報を膜で包み込む真核生物に分類されます。

細菌(バクテリア)は真菌と異なり、DNAなどの遺伝子情報が細胞の中に裸で存在する、原核生物と呼ばれる原始的な生物です。栄養源さえあれば細胞分裂して自己増殖します。大腸菌、結核菌、ボツリヌス菌など、体内で定着して、人の細胞に侵入するか毒素を出して細胞を攻撃するものが多くあります。治療には細菌の細胞に作用し、増殖を抑制する抗生物質や抗菌薬を使用するのが主です。また、多くの腸内細菌や納豆菌など害のない細菌も多数存在します。

ウイルスは、真菌・細菌と混同されがちですが、実は全く異なる構造をしています。生命の最小単位である細胞がなく、遺伝子(DNAまたはRNA)とそれを囲むタンパク質の殻のみで構成されている物質なのです。

大きさは、20nm~300nm(ナノメートル)。これまで見てきた真菌や細菌は1~5μm(マイクロメートル)というサイズですが、1nmは1mの10億分の1、1μmは1mの100万分の1なので、ウイルスは真菌・細菌の100~1000分の1程度と、はるかに小さいことがわかります。真菌や細菌の観察に使う光学顕微鏡ではウイルスを見ることができないため、電子顕微鏡を使用する必要があります。

細菌・ウイルスの大きさの比較
厚生労働省「厚生労働」2018年9月号より作図

極小サイズのウイルス
どうやって病気を引き起こす?

ウイルスは自分の設計図(DNAまたはRNA)は持っていますが、他の病原体と違って複製するための設備を持っていません。そのためほかの生物の細胞に侵入し、こっそり自分の設計図を混ぜて強制的に複製させます。ただし、どの細胞にでも潜り込めるわけではなく、感染できる細胞はウイルスの種類によって限定されています。単独では増殖できないため生物ではない、という考え方もあります。

ウイルスに感染した細胞は正常な機能を失い、その結果さまざまな症状を引き起こします。これがウイルス感染症です。その症状はウイルスの種類と感染した部位によって異なります。例えば、鼻、のど、肺など呼吸器に感染すると、風邪(感冒)、インフルエンザ、肺炎などが起こり、消化管なら胃腸炎、肝臓なら肝炎、神経なら帯状疱疹(ほうしん)や脳炎などが症状として見られます。

また、ヘルペスやHIVなど一部のウイルスは、宿主細胞内に遺伝物質を残して長期間休眠状態でとどまり(潜伏感染)、その細胞が弱りだすと再び活性化して病気を引き起こすことがあります。

ウイルスに対して人間の体は防御機能を持っています。皮膚のような物理的バリアはウイルスが簡単に体内に侵入できないよう防御しますし、一部の細胞が乗っ取られても白血球がその細胞を攻撃して破壊しようとします。体がウイルスの攻撃に勝つと、白血球はその時のウイルスを記憶し、次に同じウイルスが来ると、より早く対処ができるようになります。この反応を免疫と呼びます。

免疫はワクチン(毒性を弱めたウイルス)を接種することでも得られますが、ワクチンはあくまで感染リスクを下げるためのもので、治療薬ではありません。ウイルスは構造が単純な上にとても小さく、すぐに細胞に潜り込んでしまうため、細胞に影響を与えずに細胞中のウイルスだけを破壊するような抗ウイルス薬の開発は非常に難しく、まだ開発段階のものが多いのです。

ウイルス“で”治療も!
ウイルス研究はまだまだこれから

ここまで、ウイルスの引き起こす感染症について見てきましたが、すべてのウイルスが人体に害を及ぼすわけではありません。口蹄疫のように人間に感染しないウイルスや、感染しても症状の出ないものも多数あります。

さらに、まだ実用化はされていないものの、生物工学を応用してがん細胞だけに感染するウイルスを作り治療に役立てる、がんの「ウイルス療法」の研究も進んでいます。これまでの手術や放射線・化学療法などとも併用できるため、近い将来のがん治療の一翼を担えるのではないかと期待される治療法です。

ウイルスは私たちの身近にあるものながら、電子顕微鏡が発明されて実際に観察されたのは1932年と、まだ100年もたっておらず、まだまだ未知な部分が多い存在です。今後も研究を進め、人体に及ぼす悪影響を防ぐ手段を模索しながら付き合っていかねばならないものなのです。

「感染症」に関連する富士フイルムの製品・サービス

  1. 医療現場から生まれた除菌用品
    富士フイルムの「Hydro Ag+(ハイドロ エージープラス)」は、銀のパワーで高い除菌性能が長時間続く。
    医療用抗菌用品
    一般のお客さま向け抗菌用品

記事公開:2020年5月
情報は公開時点のものです