2015年4月にスタートした「機能性表示食品制度」は、
条件を満たせば事業者の責任で食品の機能性を表示できるという制度です。
比較的新しいものながら、この制度は広く浸透し、多くの事業者が
利用しています。それはなぜなのでしょうか。
今回はこの制度の内容や、「トクホ」をはじめとする
他の商品表示制度との違いについて詳しく説明していきます。
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消費者に選択肢を増やす!
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「機能性表示食品」とは?
毎日の買い物でもすでにおなじみ?
「機能性表示食品」制度とは
スーパーやドラッグストアなどで「おなかの調子を整えます」「睡眠の質を高めます」などとパッケージに表示されたドリンクや食料品、サプリメントを見かける機会は多いのではないでしょうか。
これらは、科学的根拠に基づいた特定の目的が期待できる機能が、事業者の責任で商品パッケージに表示された「機能性表示食品」と呼ばれる食品です。機能性表示食品は、疾病に罹患していない人(未成年者、妊産婦、授乳婦をのぞく)を対象に、生鮮食品を含むすべての食品(一部のぞく)が対象となっています。
機能性表示食品を製造・販売する事業者に課せられているのは、以下のような条件です。
- 国の定めた一定のルールに基づき、対象の製品の安全性や機能性に関する評価を行う
- 生産・製造、品質の管理、健康被害の情報収集体制を整える
- 販売日の60日前までに、届出書および関連する資料を不備なく消費者庁長官に届け出る
こうして届け出られた内容は消費者庁のウェブサイトに公開され、消費者が誤認することなく自主的・合理的に商品を選ぶことができるようになっているのです。
機能性表示食品と「トクホ」「栄養機能食品」の違いは?
機能性表示食品と似た言葉で、「特定保健用食品(トクホ)」というものもよく聞きます。この違いが気になる人も多いのではないでしょうか。
そもそも、制度上私たちが口に入れるものは「一般食品」「保健機能食品」「医薬品」「医薬部外品」の4つに分類されています。そのうち食品は「一般食品」と「保健機能食品」で、「保健機能食品」は、機能性の表示ができることになっています。この保健機能食品に含まれるのが、今回紹介している機能性表示食品。保健機能食品にはそのほか「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」があります。
特定保健用食品は、健康に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、「血糖・血圧・血中のコレステロールなどを正常に保つことを助ける」「骨の健康に役立つ」などの表示が許可されている食品です。認可には効果や安全性についての国による審査と、消費者庁長官の許可が必要です。
栄養機能食品は、ビタミンやミネラルなど、すでに科学的根拠が確認されている栄養成分が一定の基準量含まれていれば、届け出をしなくても国が定めた表現によって機能性を表示することができる食品です。2020年8月現在、基準が定められている栄養成分は下記の20種類です。
- ビタミン類
- ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸
- ミネラル類
- 亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム
- 脂肪酸
- n-3系脂肪酸
「食品の健康維持に関する情報をもっと知りたい」
誕生はそんなニーズから。サイトでも情報を公表
冒頭で説明したとおり、機能性表示食品の制度ができたのは2015年と比較的最近のことです。それ以前は、前述した特定保健用食品と栄養機能食品しか「○○に効く」といった機能性の表示ができませんでした。
しかし、特定保健用食品は、食品ごとに国指定の試験機関による有効性や安全性にかかわる試験が必須。許可手続きに多大な時間とコストがかかるため、事業者にとってのハードルが高いという問題がありました。さらに、栄養機能食品はそもそも該当する栄養成分が前述の20種類と限定されており、結果として「病気や介護を予防し、健康を維持して長生きしたい」というニーズを持つ消費者に提供される情報が限られていました。
そこで政府は、米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考に、事業者の責任において科学的根拠をもとに機能性を表示できる新たな方策を検討。その結果、機能性表示食品制度が制定されました。事業者によるきちんとした情報収集体制や調査がなされれば、消費者に対して健康維持に関する情報が提供できるようになったのです。
こうして誕生した機能性表示食品は、食品のパッケージに記載される事項が細かく決められています。「機能性表示食品」と目立つように書かれた表面には、「血圧を下げる」といった届け出られた機能と、届け出番号が表示されています。
この届け出番号を消費者庁のウェブサイトに入力することで、安全性や機能性の根拠に関する情報が表示されます。気になる食品があれば自分で積極的に情報を確認し、納得のうえで健康を向上させる食品を購入することができるのです。
消費者庁がウェブサイトで公表している機能性表示食品の件数は、2020年8月末時点で3,000件以上。これからも公表件数は増えていくと予想されます。より幅広い選択肢を消費者へ与えるこの制度の動きに、今後も注目が集まりそうです。
記事公開:2020年9月
情報は公開時点のものです