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温暖化阻止の切り札になる?
「国境炭素税」とは。

近年、世界的にみられる急激な気候変動の多くは地球温暖化に
よって引き起こされていると考えられています。その要因とされる
温室効果ガスの削減に向けて世界中がさまざまな取り組みを行う中で、
EU(欧州連合)が提唱した「国境炭素税」が注目を集めています。
一体どのようなものなのか、概要や背景を解説します。

「炭素税」は実は身近にも!「国境炭素税」の背景とは。

記録的な暑さや豪雨など、近年世界中で未曽有の気候変動や災害の背景にあるとされる地球温暖化。その原因は、温室のビニールのように地球をすっぽり包んで暖める温室効果ガスといわれています。温室効果ガスの中でも7割強を占めるのが二酸化炭素(CO2)。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、産業革命前には280ppmだった空気中のCO2濃度は、2013年には400ppmを超えました。このまま温室効果ガスの排出が続くと、2100年の平均気温は今よりも最大で4.8℃上昇すると発表されています。

この地球温暖化の抑制を目指し提唱されたのが炭素税です。化石燃料の使用で生じるCO2の重量に応じて課税するというものです。これは、実は日本でも「地球温暖化対策のための税(温対税)」という名前で2012年に導入されています。2021年6月時点で、CO2排出量1トンあたり289円がかかっています。

さらに、2019年にEUが提唱した構想が、今回のテーマである「国境炭素税」です。これは、炭素税の差がある国同士で輸出入をする際、差額を関税として徴収する仕組みです。

例えば、A国の炭素税がCO2排出1トンにつき1,000円のとき、炭素税が300円のB国から物資を輸入するなら、その差額となる700円を、関税としてA国が徴収します。逆にA国がB国に物資を輸出する場合、炭素税の差額を還付するという構想です。

現在、炭素税は日本を含む30カ国程度が導入しています。炭素税はあくまでも国内の税制ですが、国境炭素税は温暖化対策のコストを世界全体で公平に負担するための構想といえるでしょう。

※ppmとは、英語で百万分の1を意味する“parts per million”の略。大気中における大気汚染物質等の濃度の単位として用いられる。

地球のための温暖化対策が、企業の競争力を低下させる?

深刻化する地球温暖化を背景に、これまで、さまざまな国が対策を進めてきました。記憶に新しいところでは、2018年に仏のガソリン、ディーゼル燃料(軽油)に課せられた炭素税の増税です。国民にとっては厳しい増税となり、暴動や略奪まで発生する事態となりました。マクロン仏大統領は増税を見送り、温暖化対策の新たな取り組みを模索することとなりました。

その翌年、2019年にEUは「欧州グリーンディール」を発表しました。そこでは2050年に域内の温室効果ガスの排出量ゼロを目指す目標が掲げられました。EUの新しい成長戦略として、経済成長を目指しながら排出量の削減を促進するこの政策で提唱されたのが、「国境炭素税」でした。

温暖化対策といっても、先進国と途上国ではその取り組みに差があります。その差を解消する仕組みの一つが、CO2の排出権取引です。排出権取引の管理主体は、国際機関、国、民間の3つがあります。排出権取引では、企業が設定したCO2削減目標に応じて、排出枠が決まります。企業は目標を達成することが難しい場合、排出枠を購入するという選択肢を持ちます。

以前からEUでは温室効果ガスの削減目標を達成できない発電所などは、市場から排出枠を買い取っていました。ところが温暖化対策に取り組む産業が増え、排出枠の需要が増し価格が高騰したことで、EU域内の産業の競争力低下を招きました。そこで提唱されたのが「国境炭素税」です。CO2削減へ積極的に取り組み、企業の経営コストの高くなっている先進国と、その他の地域の国際競争の条件をそろえ、先進国の雇用等を維持することも目指します。

課題山積み? 「国境炭素税」浸透のためのハードルとは。

脚光を浴びる「国境炭素税」ですが、実際に採用するにはいくつもの課題があります。まず関税の基準となるCO2の排出量を把握するには、技術的な問題があります。輸入品に国境炭素税を課す場合、明確な基準が必要です。世界全体で足並みをそろえて温暖化対策に取り組むためには、納得できる指標が求められます。

現在、CO2を多く排出しているのは、大国である中国と米国です。通常、温暖化対策を積極的に推進すれば、対策にかかるコストによって商品価格が上がり、国内産業の競争力低下を招きます。国際社会に大きな影響力をもつ大国である中国と米国の動向は、今後も「国境炭素税」の先行きを大きく左右するでしょう。

世界のエネルギー起源CO2排出量(2018年)
【出典】環境省「世界のエネルギー起源CO2排出量(2018年)」より作図

貿易の公平性をどう担保するか、という点も、「国境炭素税」の実現のためには検討が不可欠です。これまで「国境炭素税」が具体化しなかった理由の一つは、世界貿易機関(WTO)の取り決めに違反するおそれがあったことにあります。WTOの取り決めでは、差別的な関税は制限されているのです。自由で開かれた貿易と温暖化対策を平行させる、新たなルールが求められているといえます。

また、炭素税は、CO2の排出量が多い従来型の重工業にとっては足かせになる側面が否めません。地球環境を守りながら経済成長を続けるためには、これまでの産業構造を見直す必要があるでしょう。人類にとって本当の豊かさとは何かという問いとともに、デジタル化や新しい技術の開発といったさまざまな取り組みが、新たな未来を切り開いていくことでしょう。

富士フイルムの環境への取り組み

  1. 気候変動への対応
    気候変動の進行を踏まえ、富士フイルムホールディングスでは2019年に再生可能エネルギーの導入目標を設定しましたが、さらに対策を進めるべく、様々な活動を行っています。
    気候変動への対応
  2. 中長期CSR計画
    富士フイルムグループでは「持続的な発展」を達成するため、グリーン・ポリシーに基づき、世界のすべてのグループ会社が環境課題に取り組んでいます。富士フイルムグループでは、環境課題解決へのさらなる貢献のため、目標の上方修正や新たな目標の設定を行いました。
    環境への取り組み

記事公開:2021年6月
情報は公開時点のものです