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日本のモノづくりの未来を支える!
最先端製品に欠かせない
「機能性素材」とは。

「機能性素材」という言葉をご存じでしょうか。
最近では「特定保健用食品(トクホ)」などに利用される食品用素材も
検索上位に見られますが、今回は産業用素材のお話です。
製品の機能や性能をさまざまに高める機能性素材は、製品のイノベーションに
不可欠で、日本は高い技術力を背景に国際競争力を維持してきました。
しかし近年、市場環境の変化によって優位性が脅かされつつあり、
開発の短期間化・低コスト化が急務となっています。
今回は、そんな機能性素材の役割や重要性、そして国際競争力を
維持・強化するための取り組みなどをご紹介します。

製品の性能や機能を左右する!
機能性素材ってどんなもの?

機能性素材とは、一言で言えば従来の素材では不可能な性質や機能を備えた素材のことです。素材の持つさまざまな特性が高度に追求されているのが特徴で、例えば光学材料なら感光性、磁性材料なら強磁性、導電・絶縁材料なら高導電率や絶縁性、伝熱・遮熱材料なら高遮熱性、触媒なら反応促進性能が高められています。粒子や繊維、フィルム、シート、膜などさまざまな形態で供給され、それらが製品そのものの機能や性能を左右することから、他製品との差別化が求められる電気自動車(EV)やハイテク分野など、さまざまな分野で利用されています。

かつて日本のモノづくりは、半導体や液晶ディスプレイ製品で世界をリードしていました。今ではその勢いが失われ存在感が薄くなりつつありますが、それらに使われる機能性素材では今も高いシェアを誇っています。例えば液晶ディスプレイではTACフィルム(偏光板保護フィルム)やガラス基板、偏光板、ブラックレジスト、カラーレジストなど、また、EVシフトでも注目されているリチウムイオン電池ではセパレーターや電解液、正極材、負極材、半導体材料などで、世界をリードしています。

高いシェアを持つ機能性素材の例
【出典】経済産業省素材産業課「素材産業におけるイノベーションの役割と期待」より作図

エレクトロニクス分野に強みのあった日本の機能性素材ですが、近年では、幅広い分野で存在感を示しています。例えば、繊維分野ではアンダーウェア用の高機能素材、自動車分野では軽量化とリサイクルを両立する自動車用ポリプロピレン、ヘルスケア分野では紙おむつ用の高吸水性樹脂などが利用されています。また炭素繊維のように、航空宇宙、自動車、土木建築、風力発電など幅広い分野で活躍している素材もあります。

今や機能性素材はさまざまな分野で利用され、私たちの身近な所で毎日の快適さや便利さを支えてくれているのです。

素材産業は日本のリーディング・インダストリー
競争力の強化がモノづくりの土台に!

日本の素材産業のうち各統計上6~8割を占める化学産業は、事業所数約2万、従業員数約95万人、製品出荷額約46兆円の巨大産業で、付加価値額(約18兆円)も製造業全体の1割強を占めています。一つひとつの市場規模は小さいものの、世界シェア60%以上の材料が約70種類もあります。このように素材産業は経済や雇用にとって非常に重要な役割を果たすことから、経済産業省は「日本のリーディング・インダストリー」と位置付けています。

しかし近年、国際的な競争激化や顧客ニーズの多様化など、市場環境の変化によって、日本の強みであった素材産業の優位性が脅かされつつあります。

例えば、電子材料をめぐっては「ユーザー側の製品サイクルの短期化」「市場規模の拡大に伴う新興国メーカーの参入と積極的な投資」「多数ある日本企業間の競争激化」などによって、市場シェアの低下とコモディティ化が加速。実際、リチウムイオン電池材料では、次の図のように日本のシェアは年々低下しています。

日系企業のリチウムイオン電池材料におけるポジションの変化
【出典】経済産業省素材産業課「素材産業におけるイノベーションの役割と期待」より作図

近年は、サプライチェーンの安定確保や経済安全保障の面からも、先端素材の重要性が増し、その競争力をどう維持するかが大きな課題となっています。解決するためには、ユーザー産業のニーズへ迅速に対応するとともに、イノベーションの質とスピードを高度化してニーズを先取りして開発・提案することが求められます。また、増大する研究開発費用や設備投資に対応できる企業体力の確保も不可欠です。

こうした中、国でも経済産業省を中心にさまざまな施策を推進し、素材産業を発展させる取り組みを支援しています。

国際競争力を維持・強化するため
素材産業のイノベーションの高度化を追求

経済産業省は、素材産業のイノベーションを高度化するためには、素材開発の質とスピードを上げるオープンイノベーションの取り込みや、素材側から社会変革をもたらす新素材の創出・提案力の強化が必要だとしています。そして重要な取り組みとして、次の3つを挙げています。

  1. ユーザーとの垂直統合による新素材開発の加速化
  2. Society 5.0につながるConnected Industries
  3. 素材イノベーションエコシステムの確立

1番目の「ユーザーとの垂直統合」とは、素材開発段階からユーザーと連携することです。すでに自動車産業などでは、部品メーカーが組み立てメーカーと一体になって開発・製造していますが、同様の取り組みを目指すものです。経済産業省では、2018年度には「次世代車載用蓄電池の実用化に向けた基盤技術開発事業」として47億円の予算をつけ、全固体リチウムイオン電池や革新型蓄電池の開発事業として、素材メーカー、電池メーカー、自動車メーカーの一体的な取り組みを支援しています。

「Society 5.0」とは、AIやIoT、ビッグデータなどを駆使し、インターネットなどの仮想空間と私たちが暮らす現実空間を高度に融合させたシステムによって経済発展と社会的課題の解決を両立し、人間中心の社会を目指す日本が提唱する未来社会のコンセプトです。2番目の取り組みは、そのためにヒト・モノ・カネに加えて、データや情報などの新たな経営資源を生かして素材を開発しようとするもので、次の4項目が課題となっています。

  1. 素材側からの価値提案力の強化やビジネスモデルの転換による新事業領域の創出
  2. 素材開発力のさらなる強化のためのAIやビッグデータを利用した開発スピードの加速化
  3. 社内統合管理により限られたリソース(生産設備・人材)内での生産性最大化に向けた次世代生産システムへの転換
  4. 取り組みを進める上で必要なデジタル人材の育成・確保

このうちの2については、経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」が動いています。同プロジェクトには20社近くの先端素材メーカーが参加し、コンピューター・サイエンスの専門家と連携して材料設計やプロセス、解析技術にスパコンやAIを駆使することで、10年前後の長い時間が必要とされていた開発期間や試作回数を従来の20分の1に短縮することを目指しています。近年、海外の企業がコンピューター・シミュレーションや情報科学の手法によって、日本の未公開特許と同じ材料を開発したり、論文を発表したりする例がありました。従来手法による研究開発では時間がかかりすぎて、成果をみすみす逃すことになりかねません。参加メーカーの多さからも同プロジェクトの注目度の高さがうかがえます。

3番目の「エコシステムの確立」とは、素材開発から製品製造、流通までの各プロセスに関わる事業者が相互連携したビジネス環境を構成することです。「アイデア創出・事業構想」「技術開発」「社会実装・市場獲得」の各場面で、オープンイノベーションを活用します。同時に、素材・化学分野特化型ファンド「ユニバーサルマテリアルズインキュベーター(UMI)」によって、ベンチャー企業の成長促進を支援。さらに、素材企業と製造受託企業が連携した研究開発を支援するため、「地域中核企業・中小企業等連携支援事業」「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」「企業間連携スタートアップ(SCA)に対する事業化支援」などの助成施策も提供しています。

このように高機能素材を開発する環境は整いつつあります。これまで各素材メーカーは、長年蓄積してきた技術をベースにユーザー企業からの要求やすり合わせなどを通じて技術力を高めてきました。今後は、これに加えて新たな手法の活用で技術力にさらに磨きをかけ、高付加価値な機能性素材のスピーディーかつ低コストでの開発を実現することで、グローバル市場をさらに開拓・獲得していくことが期待されます。

「機能性素材・機能性材料」に関する富士フイルムの製品・サービス

  1. 材料・試薬
    写真フィルムの研究をはじめ、富士フイルムの培ってきた技術を活用して製造された、付加価値が高く、安定性に優れた材料・試薬を、お客さまのニーズに合わせて提供します。
    材料・試薬
  2. 製造・生産
    高機能材料から生産設備部材まで幅広く、お客さまのニーズに合わせた材料、機器、システムを独自技術を活用して開発し、提供します。
    製造・生産
  3. 半導体材料
    半導体にまつわる高純度化学品や高度な材料・装置を幅広く展開。世界の半導体メーカーの次世代デバイスの開発に貢献しています。
    半導体材料
  4. インクジェットソリューション
    プリントヘッド、インクジェットインク、画像処理システムなどを総合的に開発できるという強みを活かし、高品質なインクジェット製品を世界中に提供しています。
    インクジェットソリューション
  5. 開発・製造受託
    お客さまのビジネスに不可欠な製品・素材の生産や加工を、富士フイルムが積み上げてきた製造技術と品質管理の経験を基に、強力な開発・製造パートナーとして、お客さまの課題を解決します。
    開発・製造受託

記事公開:2022年11月
情報は公開時点のものです