「人生100年時代」が現実になりつつあり、生涯現役を見据えて社会全体を
つくり直すことが求められる時代となりました。そこで注目されているのが、
従業員の健康保持増進に投資する「健康経営」です。業績向上や組織としての
価値向上につながることから、取り組む企業も増えています。
今回は、「健康経営」について、その背景や推進を支援する制度、
取り組むことで期待できる効果などを解説します。
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従業員の健康が企業価値を向上させる!
日本の未来にも欠かせない
「健康経営」とは。
これからの日本に不可欠!?
健康経営とは
平均寿命が80歳を超え、超高齢社会に突入している日本。しかも総人口は、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2100年には約5,000万人と明治時代後半の水準にまで減少すると予測され、社会の担い手不足が懸念されます。生産年齢人口の減少は、企業にとっても存続に関わる大問題です。労働力確保のためにさまざまな対策が講じられています。
「今いる人材に少しでも長く働いてもらう」ことも、その一つです。そのためには、従業員の活力を増進したり、健康寿命を延ばしたりするとともに、制度も含めて働きやすい職場環境づくりに努めなければなりません。そこで注目されているのが「健康経営」です。これは「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つで、政府が提唱する日本再興戦略や未来投資戦略にも位置づけられています。
経済産業省によれば、「健康経営」とは企業などが「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」です。従業員の健康を保持増進する取り組みは、従業員の活力向上や生産性向上など組織の活性化をもたらします。結果的に企業にとっても、業績向上や組織としての価値向上へつながることが期待されます。また、健康経営を推進することで、企業は社会的責任を果たすことができ、社会的信頼を得ることもできます。
ちなみに健康経営は、米国の経営学者であり心理学者でもあるロバート・ローゼンが、1992年に出版した『The Healthy Company』で提唱した考え方です。日本では2000年代後半から注目されるようになり、「守りの健康経営」から「攻めの健康経営」への移行が徐々に始まりました。2013年に閣議決定された日本再興戦略では、目指す社会像として「国民の健康寿命の延伸、予防から治療、早期在宅復帰に至る適正なケアサイクルの確立」が打ち出され、本格的にスタートしました。さらに2016年、働き方改革実現推進室や働き方改革実現会議が設置され、多様な「ワーク・ライフ・バランス」の実現と雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を目指す「働き方改革」が、政府主導で動き出しました。働き過ぎを防いで、働く人の健康を守るとともに、働く人が納得できる雇用環境を実現することから、健康経営を間接的に支える施策だと言えるでしょう。
健康経営を「見える化」してサポート
導入企業数は右肩上がり
より直接的に健康経営の推進をサポートするため、経済産業省では2014年度から「健康経営銘柄」の選定を行っており、2016年度には「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。
健康経営銘柄は、「東京証券取引所の上場会社の中から『健康経営』に優れた企業を選定し、長期的な視点からの企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業として紹介をすることを通じ、企業による『健康経営』の取り組みを促進することを目指す」ものです。選定された企業に対しては、健康経営を普及拡大していく「アンバサダー」的な役割も求められます。また、健康経営の生産性や企業価値向上に対する効果を分析し、結果をステークホルダーに対して積極的に発信していくことも求められます。
一方、健康経営優良法人認定制度は、「健康経営に取り組む優良な法人を『見える化』することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人』として社会的に評価を受けることができる環境を整備する」ための制度です。大企業を対象とした「大規模法人部門」と、中小企業を対象とした「中小規模法人部門」の2つの部門があります。大規模法人部門の上位層には「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位層には「ブライト500」の冠が与えられます。
選定や認定の基礎情報となる「健康経営度調査」に回答する企業数は年々増加し、認定企業数も増えています。
広がりを見せる健康経営が
日本の未来を拓く
健康経営の推進は、企業とそのステークホルダーに対して、さまざまなメリットをもたらします。
企業にとっては、「社員のモチベーションや生産性の向上」「病気や事故の減少」「人材の確保や離職率の低減」「企業イメージの向上」などを図ることができます。また、「健康経営銘柄」への選定や「健康経営優良法人」への認定により、金利や融資の優遇措置、助成金・補助金制度、公共調達の加点、保険会社による保険料の割引などのメリットも生まれます。ESG投資が重視されつつある今、上場企業にとっては資金調達面でも有利に働くでしょう。結果的に社会全体の医療費を削減することも期待されます。しかし、何よりも重要なのは、健康経営が従業員に対して健康的で生き生きと働ける労働環境を提供できることにあります。
これまで大企業が中心だった健康経営への取り組みも、中小企業へと裾野が広がっています。また、自社従業員だけでなく、サプライチェーンや社会全体へと範囲も拡大しつつあります。「人生100年時代」が目前に迫る中、ライフスタイルとして「生涯現役」を望む人たちにとって、健康経営は大きな助けになることでしょう。健康経営への取り組みが当たり前となった社会。それはきっと誰もが暮らしやすい未来なのではないでしょうか。
「健康経営」に関する富士フイルムの取り組み
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- 富士フイルムグループの健康経営
- 富士フイルムグループは、社会に新たな価値を創造するリーディングカンパニーであり続けるために、従業員が心身ともにいきいきと働ける健康づくりを積極的に推進すること、そして「100年を生きる時代」の社会の人々に、生きる力、生きる楽しさを提供していくことを宣言します。
- 健康経営の推進
記事公開:2023年1月
情報は公開時点のものです
* 「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。