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ディッシュやフラスコに生まれる
細胞のドラマ!?
先端医療を支える「細胞培養」とは。

「細胞培養」という言葉をご存じでしょうか。動植物はすべて、細胞からできています。
その細胞を人工的な環境下で増殖させ、実験・観察や利活用を可能にする細胞培養は、
医学の発展に大きく寄与してきました。再生医療や創薬など、先端医療に欠かせない
細胞培養について解説します。

もとは同じでも、分裂で違う細胞になることも
安定して増殖する「細胞株」を求めて

人間の体には、約37兆個の細胞があります。そこには皮膚、筋肉、骨、臓器など、さまざまな組織があり、独自の構造や機能を持つ多種多様な細胞の働きで生命が維持されています。細胞は条件が整えば体の外でも生き続け、増殖することができます。さまざまな操作に対する反応を見るための環境が、今回紹介する「細胞培養」です。動植物の体から取り出した細胞を、ディッシュ(シャーレ)やフラスコなどの人工的な環境で培養し、実験や観察を行います。

細胞培養の基本的な流れを見てみましょう。
生体から取り出したばかりの組織や細胞には、必要のないものも含まれています。そこで培地でいったん増殖させ、そこから目的の細胞のみを取り出し、別の培地で増殖させます。細胞培養を通して、初代培養細胞から細胞株を抜き出していくのです。先ほどから登場している「培地」とは、細胞の生育・増殖のための栄養分を含む液状または粉末状の物質で、細胞培養に必要不可欠なものです。

面白いことに、同じ組織や細胞を使った細胞培養であっても、増殖を繰り返すうちに異なる細胞になることがあります。中には特異な性質(薬剤抵抗性、ウイルス感受性、遺伝子の特徴など)を持つものが現れることもあります。安定して増殖することが確認された細胞は細胞株と呼ばれ、細胞バンクを通じてさまざまな研究に活用されます。公的機関である細胞バンクは、細胞株の収集、品質チェック、希望する研究者への配布という役割を担っています。

細胞培養の基本的な流れのイメージ

始まりはカエルの心臓?
世界中の頭脳の試行錯誤で確立した細胞培養の技術

細胞培養の歴史は、19世紀後半にさかのぼります。以来、細胞培養はどのような進化を遂げてきたのでしょうか。トピックとなる出来事を中心に見てみましょう。

1866年、ドイツの生理学者ルートヴィヒが、カエルの心臓を体外で生かすことに初めて成功。条件が整えば、体外でも器官が生き続けることが分かりました。その後、各国で同様の研究が進みましたが、それを可能にしたのは体液に近い等張液やリンゲル液の発明でした。

こうした研究を受けて、対象は器官から組織・細胞へ移ります。1907年には、カエルの神経組織から神経突起の成長と、細胞分裂の観察に成功。取り出した組織や細胞を生かすだけでなく、成長・分裂させることも可能になりました。

1910年代になると、細胞分離方法の発見、培地の改良、ほかの微生物や細胞が混入しない無菌・滅菌環境など、細胞培養にさまざまな改良が加えられていきます。1943年には、マウスに由来した無限に培養できる細胞株(L929)が世界で初めて発見されました。正常な細胞には分裂寿命があり、一定の回数以上は分裂することができません。ところが幹細胞とがん細胞は、無限に分裂します。マウス線維芽細胞をがん化させた「L929」は、永続的に培養できる特性を持っていました。

1951年には世界初のヒト細胞株「HeLa」が樹立され、その後このHeLa細胞を用いてポリオウイルスのワクチンが開発されました。1960年代に入ると、ヒトをはじめとする多様な動物の細胞株が集められました。1980年代以降になると、がんの発生や抑制に関する遺伝子が明らかにされていきます。

このように、研究対象に求められる特性や遺伝的背景が均一な細胞株の増殖を可能にしたのは、細胞培養の技術です。体外で細胞をつぶさに研究することを可能にした細胞培養は、その後、医療の発展に大きく寄与していきます。

患者の細胞を培養し、体に戻す再生医療
細胞培養は未来を照らす

近年、細胞培養の分野で注目を集めているのは、さまざまな臓器や組織に分化する「幹細胞」を使った再生医療です。再生医療は、怪我や病気で失われた体の組織や機能を回復する医療で、人間の細胞(幹細胞)を培養し、体外で組織や臓器を再生して移植するものです。幹細胞は大きく次の2種類に分けられます。

<幹細胞の種類>

組織幹細胞:
皮膚や血液のように私たちの体に自然に存在し、決まった組織や臓器で、細胞を作り続ける。どのような細胞にもなれる(分化する)のではなく、役割が決まっている。
→ 造血幹細胞、神経幹細胞など
多能性幹細胞:
私たちの体にあるどんな組織や器官の細胞にも分化できる。
→ ES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞(人工多能性幹細胞)

iPS細胞は、人間から採取した皮膚や血液などの細胞に特定の因子を導入し、培養することでさまざまな組織や臓器を作る人工の幹細胞です。受精卵を使うES細胞と異なり、iPS細胞は患者自身の細胞から作製するため、再生した組織や臓器の拒絶反応が起こりにくいとされています。

現在(2022年3月時点)、日本国内では培養された皮膚、軟骨、心筋シートをはじめとした、16種類(医薬品医療機器総合機構「新再生医療等製品の承認品目一覧」より)の再生医療に関する製品が承認されています。2014年からiPS細胞を使った臨床研究が始まり、2020年にはES細胞においても臨床研究が行われたことが発表されました。世界中で研究が進むことで、再生医療を受ける患者が増えていくことが期待されます。医療の未来を細胞培養という地道な技術が支えていると思うと感慨深いですね。

「細胞培養」に関する富士フイルムの製品・サービス

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    富士フイルム和光純薬では、一連の細胞培養に使用する製品を幅広くラインアップしています。用途に合わせて適切な製品をお選びいただけます。
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記事公開:2023年3月