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天気予報から宇宙旅行まで。
民間参入が本格化する
「宇宙利用」とは。

「宇宙」と聞くと、日常とは縁遠い場所のように感じられるかもしれません。
しかし、天気予報やスマートフォンのGPS機能、衛星放送や衛星通信など、
今や暮らしでもビジネスでも、私たちは宇宙空間を利用したシステムやサービスを
当たり前のように活用しています。民間企業の宇宙ビジネス参入もますます広がり、
宇宙がSFの舞台でしかなかった時代はもはや遠い過去になりました。
今回は、そんな「宇宙利用」の現状や未来についてご紹介しましょう。

市場規模は1兆ドル?
ますます拡大する宇宙利用ビジネス

1957年10月4日、直径わずか58cmの小さな球形が地球の周りを回り始めました。人工衛星スプートニク1号。それが人類初の宇宙進出でした。当時は東西冷戦の真っただ中、宇宙は米国とソビエト連邦(当時)が国家やそれぞれの陣営の威信を示す場であり、その後の宇宙開発も国の主導で進められました。

初の人工衛星打ち上げから10年後、宇宙空間の探査・利用の自由や領有の禁止、平和利用の原則などを定めた通称「宇宙条約」が発効され、宇宙の探査と利用が全人類に開放され、宇宙を自由に利用するための足がかりができました。そして1970年代に入ると、宇宙開発にかかる増大するコストや技術的な限界などを解決するため、多国間での協力体制が築かれるようになります。

その後、2000年代以降は民間企業の参入が進み、宇宙空間を生活やビジネスに利用する「宇宙利用」が活発化します。海外では自社で開発したロケットによる国際宇宙ステーション(ISS)への輸送や宇宙旅行を事業とする会社が生まれ、日本でも2007年のH-IIAロケット13号機からは、打ち上げ事業が民間に移管されています。ちなみに、月周回衛星「かぐや(SELENE)」はこの13号機で打ち上げられました。

宇宙を利用するビジネス市場は拡大しつつあり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の資料によると、衛星製造・打ち上げだけでも市場規模は4,780億ドル(2019~2029年)と予測されています。また、米国の大手証券会社では2040年までに1兆ドル規模に到達すると予測しています。

日本では2008年に宇宙基本法が施行され、宇宙の平和的利用や国民生活の向上、産業振興など宇宙開発利用に関する基本理念が定められ、それらを推進するための基本施策も策定されました。その中には、「民間事業者による宇宙開発利用の促進」も含まれています。

さらに、2017年に「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律」(衛星リモセン法)、2018年には「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」(宇宙活動法)、そして2021年には「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」(宇宙資源法)が施行。これら通称「宇宙3法」によって、民間事業者による宇宙開発利用を支えています。

天気予報やGPSなど
暮らしやビジネスに不可欠なサービスも

宇宙開発の進展や民間企業の参入により、宇宙利用の可能性は大きな広がりを見せ始めました。最近注目されている宇宙利用の一つが、衛星データの利活用ビジネスです。例えば、生育管理や栽培適地探し、農地管理などに衛星データを利用するスマート農業、効率的な漁場探しなどに衛星データを利用するスマート漁業、さらには効率的な災害対策と復旧、太陽光発電の発電量予測など、応用分野も多岐にわたっています。また、多数の小型衛星を連携させて、通信やリモートセンシング(対象物に触れずに調べる技術)サービスを提供する衛星コンステレーションもさまざまな企業が事業化を進めています。

この他にも、天気予報やカーナビのように、すでに私たちの日常とは切り離せなくなっている宇宙利用サービスもあります。どんなサービスがすでに運用されているのか、いくつかの例をご紹介しましょう。

宇宙利用の活用イメージ
●リモートセンシング
地球観測衛星から得られるデータは、気象予報や災害監視などさまざまな分野で利用されています。日本では、船舶情報提供サービス・海洋監視サービスや、ブランド米の生産支援、森林変化情報提供サービス、定置網漁業向け情報サービス、土砂崩れ箇所を検出するAI解析システムなどが事業化されています。
●測位
GPSなどの衛星測位システムは、位置情報サービスに利用されています。スマートフォンのGPS機能やカーナビですでにおなじみですが、この他にも船舶追跡サービスやRF(無線周波数)信号を識別して位置を特定するサービスなど、さまざまな測位サービスが提供されています。
●通信
衛星通信は地球上の広い範囲をカバーでき、高周波数帯の電波が使用できます。このため、高速・大容量通信が可能で、しかも地理的条件に左右されない、通信品質が均一、災害に強いなどの特徴があります。こうしたことから、省庁や自治体、民間企業などの一部では地上回線が不通になる事態に備えて独自の回線網を構築しています。
●輸送
近年急伸しているのが、ロケットで人工衛星を宇宙へ運ぶ宇宙輸送ビジネスです。経済産業省の資料によると、世界で打ち上げられた人工衛星の数は2011年が129機だったのに対し、2021年には1,800機以上にまで増えています。日本でも複数の民間企業が小型の人工衛星輸送サービス市場に参入しています。
●観光
近年では宇宙旅行を提供する企業も登場し、サブオービタル飛行(宇宙空間には到達するが地球を周回せずに帰還すること)による試験飛行に成功しています。また、2021年には日本の民間人が初めてISSに滞在しました。12日間宇宙に滞在し、その費用は1人当たり50億円ともいわれています。
●その他
近い将来には、軌道上の人工衛星への燃料補給や軌道上の宇宙ゴミ(スペースデブリ)の除去など、宇宙空間を安全に活用するためのサービスも提供される予定です。また、イベント時などに人工流れ星を降らせるなど宇宙を利用したエンターテインメントなどを計画しているスタートアップもあります。

人類のフロンティアのさらなる拡大を目指して

まだ少し先のことかもしれませんが、やがて宇宙資源の探査・採取も宇宙利用の重要な目的の一つになるでしょう。宇宙空間の資源は、それを採取した企業のものであることを国が認める宇宙資源法の施行などもされており、事業を後押しする環境が整備されてきています。

同法で規定されている宇宙資源は、宇宙空間に存在する天然資源全般を指しますが、当面は月面で採取された水や鉱物などが対象となるでしょう。月にはアルミニウムや酸素、水素、チタン、鉄、ヘリウム3、水、レゴリス(月面の砂)などの資源があるといわれています。中でも、酸素や水は人類が月に居住するためには不可欠な資源です。特に、地球上にはほとんどない一方で月には豊富に存在するヘリウム3は、未来のエネルギーとされる核融合の燃料になる可能性があります。

アメリカ航空宇宙局(NASA)が主導するアルテミス計画では、2025年以降の有人月面着陸と2028年までの月面基地の建設開始が目標に掲げられ、日本も同計画に参画していることから日本人初の月面着陸も期待されています。本格的な月開発が始まれば、基地の建設やそのための資材輸送、資源採掘などさまざまなビジネスチャンスが生まれます。やがて人が定住するようになれば、その生活をサポートするためのさまざまなサービスが必要になり、民間企業が参入する機会も格段に広がることでしょう。

宇宙利用には、高額なコストや生命に関わるリスクも存在します。しかし、宇宙利用によるビジネスには異業種からの参入も相次ぎ、今や成長産業として有望視されています。この勢いがさらに加速し、やがて月が開拓され、その月から火星や小惑星などさらなる宇宙のフロンティアへ人類が広がっていく。そんな未来に期待したいものです。

「宇宙」に関連する富士フイルムの製品・技術

  1. 15個の彗星を、発見したレンズ。
    もっと宇宙を知りたい、という人類の夢のために。富士フイルムの高性能フジノンレンズを搭載した大型双眼鏡は、遠くの星の光も鮮明にとらえます。百武彗星など15個の彗星を発見、天文台や人工衛星にも採用されています。
    星とFUJIFILM
  2. 磁気テープを使用したアーカイブソリューション
    NASAの研究開発を60年以上に渡りリードしてきた「NASA エイムズ研究所」では「科学」「航空学」「人類探索」領域における様々なシミュレーション結果やプロジェクトに関するデータを永久に保存する事が求められており、膨大かつ貴重なデータの保存に堅牢で高い信頼性を誇る、磁気テープを使用したアーカイブソリューションが活用されています。
    テープストレージ.net

記事公開:2023年11月
情報は公開時点のものです