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医師不足や医師偏在への
対策として期待される
「遠隔医療」とは。

日本は医師不足の国、というと意外に聞こえるでしょうか。
長寿国のためか、医療が行き届いた国というイメージを持っている方も
多いかもしれませんが、実は人口当たりの医師数は経済協力開発機構(OECD)加盟
38カ国中33位(2018年時点)。しかも医療の2024年問題や高齢化・過疎化など
社会構造の変化に伴い、医師不足は今後ますます深刻化することも予想されます。
その解決の鍵の一つとして期待されているのが「遠隔医療」です。

ますます深刻化する医療資源の不足と偏り

遠隔医療とは、ICT(情報通信技術)を活用して離れた場所をつなぎ、医療を実現することです。厚生労働省の資料では「情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為」と定義されています。

遠隔医療は誰と誰がコミュニケーションをとるかによって大きく2つに分類されます。1つは医療従事者間での遠隔医療です。医師が他の医師や看護師と相談・アドバイス・指示などを行うもので、遠隔地の専門医がX線画像やMRI画像などをもとに診断を行う遠隔画像診断はその代表例です。

もう1つは、医療従事者と患者間での遠隔医療です。中でも映像や画像を併用する情報通信機器を通して、診察・診断や処方などをリアルタイムに行うことを、厚生労働省では「オンライン診療」と定義しています。さらに、遠隔モニタリングによる慢性疾患などの管理や、看護師など医師以外の医療従事者が患者に医療を届けたり、薬剤師が患者に服薬指導を行ったりすることも遠隔医療に含まれます。今回は主にこちらについてご紹介します。

遠隔医療が必要とされる背景の一つが、今後の社会構造の変化に伴う医療資源の不足と偏りです。もともと喫緊の課題だった医師不足は、過重労働を緩和するために2024年4月から始まる医療業界での働き方改革によって、さらに深刻化することが予想されます。一方で高齢化の進展は医療ニーズを増加させますが、人口減少が進むにつれて地方では過疎化が進行し、医師や医療機関が都市部に偏在していくことが予測されています。こうした中、限られた医療資源を有効活用し、多くの人に良質な医療を提供するための選択肢の一つとして注目されているのが、遠隔医療なのです。

2023年3月時点で、電話や情報通信機器を用いた診療を実施できる登録医療機関数は全国で18,121に上り、全体のおよそ16%を占めています。ちなみに、オンライン診療については、従来は基本的に再診のみ認められていましたが、2022年度からは初診から恒久的に認められるようになりました。

電話・オンライン診療に対応する医療機関数の推移
【出典】厚生労働省「令和5年1月~3月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」より作図

今、何が行われている?
遠隔医療の事例

厚生労働省では、オンライン診療など医師と患者間での遠隔医療に、次のような役割を期待するとしています。

・通院に伴う患者負担の軽減と継続治療の実現
・訪問診療や往診などに伴う医師の負担軽減
・医療資源の柔軟な活用
・患者がリラックスした環境での受診
・感染リスクの軽減 など

これらは遠隔医療のメリットだといえるでしょう。
実際にはどのような遠隔医療が行われているのか、いくつかの事例をご紹介します。

オンライン診療などの遠隔医療に関する事例

●診療所/脳神経内科(東京都杉並区)
・目的:遠方の患者の受診機会を増やすため
・特徴:定期処方薬の処方、遠方患者からの相談対応、新型コロナウイルス感染症患者への対応
・効果:(医療機関)診療時間などの効率化/(患者)通院負担の軽減、遠方にいる専門医の診療機会が得られる
・その他:スタッフに対しオンライン診療システムの操作説明会を実施

●診療所/小児神経科、神経内科、精神科(東京都千代田区)
・目的:遠方に居住する患者の交通費負担の軽減
・特徴:安定症状の経過観察や定期処方、患者の長期休暇時には対面診療も行う
・効果:(医療機関)患者の日常生活の観察が可能/(患者)通院費の負担軽減
・その他:職員への通信機器の操作教育、デリケートな相談内容を考慮した患者のプライバシー保護

●診療所/小児科(千葉県いすみ市)
・目的:地域医療の新しい形として、患者が自宅にいながら受診できる医療の実現
・特徴:通院が困難な患者への診療機会の確保、重度心身障害者に対しては訪問看護師の支援のもとで実施
・効果:(医療機関)患者の自宅での日常生活の様子からも医療情報を得られる/(患者)通院負担の軽減
・その他:院内マニュアルの整備を行った

●病院/内科、外科、皮膚科(佐賀県鹿島市)
・目的:新型コロナウイルス感染症対策、在宅医療環境の改善
・特徴:オンライン診療と対面診療の併用、在宅療養患者の支援
・効果:(共通)感染リスクの低減/(医療機関)継続的な通院の確保/(患者)通院の負担軽減
・その他:オンライン診療を利用する患者の半数以上は65歳以上の高齢者

●病院(山口県防府市)
・目的:悪天候時などにおける、離島への定期巡回診療の代替
・特徴:週1回の対面診療と悪天候時のオンライン診療、主な対象は高齢者
・効果:(医療機関)多職種間の連携強化/(患者)定期診察の受診機会の向上
・その他:薬剤の処方が必要な場合は、後日患者宅に配送している

●病院/内科、外科(千葉県鴨川市)
・目的:来院しにくい患者に対するセカンドオピニオンの提供
・特徴:がん患者向けセカンドオピニオンが中心
・効果:(医療機関)遠方の患者などにセカンドオピニオンを提供できる機会の拡大/(患者)受診の心理的ハードルの低減
・その他:他の医療機関での治療を断念するような治療難度が高い疾患の症例が主な対象

課題を乗り越え、日本の健康を守る鍵に

さらなる活用へ期待が高まる遠隔医療ですが、現状にはいくつかの課題もあります。

その一つが、高齢者などデジタル機器に明るくない方への対応です。厚生労働省の資料によると、実際、電話・オンライン診療の受診者の内訳をみると40歳以下が全体の約7割を占め、年代が高くなるほど対面での診療を希望していることがうかがえます。また、導入した現場からは、周辺環境に応じた通信機器の調整が困難でマイクをうまく使えず、音声が聞き取れないことがあるといった報告もあるようです。訪問看護師などの医療従事者や親族・介護者による支援も含め、適切なシステムの導入を検討する必要があります。

また、医療を提供する側も、オンライン診療に対するリテラシーを向上させる必要があります。職員教育用の教材や研修の整備、事務マニュアルのひな型整備などが求められます。オンライン診療などに用いるシステムの導入や運用においても課題があります。既存のシステムの多くは診療所規模での利用が想定されており、より規模が大きい病院では独自のシステムが必要になる可能性があります。また、導入に際しては、患者の個人情報保護やサイバーセキュリティ対策の観点も欠かせません。

しかし、私たちのQOL(生活の質)に直結する医師不足や医師偏在は、待ったなしで進んでいくことが予想されます。医療従事者の働き方改革が進む中、医療へのアクセシビリティを向上させて医療格差の解消に貢献する遠隔医療の、一層の普及が望まれます。

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記事公開:2024年1月
情報は公開時点のものです