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社会と企業の持続的成長を両立する
「サステナビリティトランス
 フォーメーション(SX)」とは。

気候変動、パンデミック、国際紛争、テクノロジーの急激な進歩……。
環境、社会、経済など、さまざまな分野で不確実性が高まっています。こうした中、
企業には社会全体の持続性に貢献しながら、この不確実性に備えて持続的に
成長することが求められています。それを実現する鍵として注目されているのが、
「サステナビリティトランスフォーメーション(SX)」です。
今回は、持続可能な社会を構築するための新しいアプローチであるSXについて解説します。

社会のサステナビリティに対応しながら
企業の稼ぐ力を高める

「サステナビリティトランスフォーメーション(SX)」とは、あらゆるものの基盤である地球環境を維持しながら、社会と企業が持続することを同時に目指す取り組みです。社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同期化する変革(トランスフォーメーション)を通じて、企業としての「稼ぐ力」を長期的・持続的に高めていく考え方として、2020年8月、経済産業省の「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」の中間取りまとめで提唱されました。

SXが提唱された背景の一つが、SDGs(Sustainable Development Goals)です。2015年9月、国連総会で採択されると、企業は環境や社会、企業統治の側面からも評価されるようになりました。実際、それらの要素を重視したESG投資は、2020年時点で世界主要5地域の全運用資産の35.9%を占めています。こうしたこともあり、企業にはSDGsを意識した経営が求められるようになりました。

また、サステナビリティに関する課題は多様化するとともに、パンデミックや国際紛争などにより世界経済の不確実性も高まっています。企業を取り巻く事業環境が急激に変化し続ける中、サステナビリティへの対応はもはや経営戦略の根幹ともいえるようになりました。そこで、企業が地球環境と社会的課題を考慮しながら、事業プロセスやビジネスモデル、企業文化などを革新し、自社の事業活動を中長期的に持続可能なものへと変革する取り組みとして、SXが提唱されたというわけです。

SXは企業だけの話ではありません。投資家にも、より長期的な視野が求められます。企業の「稼ぐ力」の持続性を高め、企業と社会のレジリエンス(危機や困難への適応力)を高めるためには、投資家と企業が長い時間軸で対話を繰り返すことが必要だとされています。

SXに必要な2つのサステナビリティの相互的な補完関係を示したのが以下の図です。

サステナビリティトランスフォーメーションのイメージ
【出典】経済産業省「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」より作図

ところで、SXと似た言葉にDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)があります。それらとSXとの違いはどこにあるのでしょう。

まずDXですが、これは変革のためにデジタル技術を活用するという、いわば手段の話であり、SXにもGXにも必要となります。一方、GXはSXと同様に低環境負荷社会を実現してサステナビリティを目指す取り組みです。しかしGXが脱炭素化を主目標としているのに対し、SXは脱炭素化も含めた社会全体のサステナビリティを対象にしています。そのため、経済産業省では、GXをSXの一部として位置づけて両者を一体的・効率的に推進していくこと、その効果的かつスピーディーな推進のためにDXと一体的に取り組んでいくことが望ましいとしています。

企業にもさまざまなメリット
SXの具体例

SXの推進は、企業にさまざまなメリットをもたらします。

その一つが、SDGsやESG基準への対応です。これにより企業は社会的責任を果たすとともに、消費者や投資家からの評価を高めて企業価値を向上させることが可能になります。ブランドイメージの向上は優秀な人材の獲得にも有利に働きます。

また、SXの推進に伴う新技術の開発や新規ビジネス創出、組織改革などにより、生産性や業績、利益の向上など、直接的な経済効果も期待できます。さらに中長期的な「稼ぐ力」の向上は企業の収益性と競争力を高め、レジリエンスの向上や事業継続能力を高めることも期待できます。こうしたさまざまなメリットから、すでに多くの企業がSXに取り組み始めています。

SXは、環境保護、社会貢献活動、ガバナンスの強化など、さまざまな分野で行われています。先進的な企業ではどんな取り組みを行っているのか、いくつかの例をご紹介します。

・製薬企業
途上国における特定の感染症を制圧するため、治療薬を無償提供するとともに、疾患啓発のための取り組みを推進。
・一般消費財メーカー
サステナビリティと事業成長の両立を目指すビジネスプランを導入。暮らし、環境、経済の3分野で約50の数値目標を設定。
・食品企業
一次サプライチェーンにおける森林破壊防止、プラスチック使用率削減などの取り組みを実施。
・アパレル企業
衣料品のリサイクル、リユースへの取り組みを実施。ダウン製品の回収、ダウンとフェザーの100%リサイクルを推進。環境に配慮した素材の使用、省エネルギーな店舗運営など。
・ITベンダー
経営方針としてサステナビリティを打ち出し、重要課題を設定して取り組みを推進。顧客のSX支援や、多様な企業との連携による新たなエコシステムの創出などにより、社会課題の解決を目指す事業ブランドを設立。
・金融グループ
企業の温室効果ガス排出量を可視化するクラウドサービスを提供。企業の温暖化対策へのサポートやCO2排出量削減目標の設定支援など、顧客の課題だけでなく、社会の課題解決への貢献も目指す。
・シェアリングサービス企業
日本は傘の消費量が世界一ともいわれ、大量生産・大量消費される傘が社会問題化。そこで傘シェアリングの仕組みをカーボンニュートラルな状態で運営。さまざまな業種の企業がパートナーとして参加。

よりよい未来を築くため
SXを成長のエンジンに

国もSXの推進をサポートしています。その一つが2023年2月に発表された「SX銘柄」の創設です。これは経済産業省と株式会社東京証券取引所(東証)が、投資家などとの対話や必要な改革・変革を通じて、長期的かつ持続的な企業価値創造を進めている先進的な企業をSX銘柄として選定・表彰する制度です。東証に上場する全企業が対象となりますが、審査を希望する企業は応募する必要があります。

SX銘柄に選定された企業は公表されるため、企業経営者の意識変革や経営変革を促進することが期待されています。また、国内外の投資家に対して日本企業の変革の方向性を示すことになるため、これからの日本株全体に対する再評価と新たな期待形成にもつながる可能性があります。

社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを両立させ、企業の「稼ぐ力」を持続的に高めるSX。それは持続可能な社会を実現するための重要なアプローチであり、企業の稼ぎ方の本流となる経営戦略です。未来がさらに明るいものになるよう、今後ますます重要な役割を果たしていくことが期待されます。

富士フイルムの環境への取り組み

  1. サステナビリティ
    私たちは、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組み、サステナブル社会の実現に貢献します。
    サステナビリティ

記事公開:2024年2月
情報は公開時点のものです