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何歳になっても成長できる!
行動技術による自分の「伸ばし方」

vol.12

覚えたことが頭に残りにくい人は
誰かに教えるつもりで学んでみる

聞き流すだけではなかなか頭に残らない

よく、「英語がうまくなりたいけど、記憶力が悪いので、単語や文法がなかなか覚えられない」といった相談を受けることがあります。
実際、記憶力のいい人とそうでない人はいると思いますが、多くの場合は「学び方」の良し悪しが記憶の定着に影響を及ぼしているものと考えられます。

学習の方法と記憶の関係を示す法則のひとつに、「エドガー・デールの法則」というものがあります。
下に示したように、人は何かを学ぶとき、ただ「聞く」よりも「読む」ほうが、「読む」よりは「見る」ほうが、学んだ内容が記憶として定着しやすいのです。


■エドガー・デールの法則による平均学習定着度

  • 「聞く」………………10%
  • 「読む」………………20%
  • 「見る」………………30%
  • 「見ながら聞く」……40%
  • 「言う or 書く」……70%
  • 「人に教える」………90%


中でも、学習した内容が最も頭に定着しやすいのは、「人に教える」ことを前提として学ぶ方法です。「聞く」だけの学習による平均学習定着度は10%ですが、「人に教える」場合の定着度は実に90%にも及びます。

実際、セミナー等に参加し、面白い話だと思って聞いていたのに、終わった後、聞いた話がほとんど頭に残っていなかったという経験をしたことのある人もいるのではないでしょうか。聞いただけでは、10ある情報のうち、たった1つしか頭に残りません。

仮にこれが、セミナーで聞いた話を、あとで社長や上司に説明しなければならない、という状況だったとすればどうでしょう。
大事な話はひと言も漏らさず必死に覚えようとするので、ただ聞き流すだけに比べて、相当な量の情報が頭に残るはずです。

エドガー・デールの法則では、10ある情報のうち9つは記憶できることになりますが、そこまではいかなくても、話の筋やポイントなどは、かなり鮮明に記憶に残ることでしょう。

興味深く聞いていたのに頭に残っていない……。記憶を定着させる秘訣とは?

「わかる」と「できる」には大きな開きがある

「人に教える」ことを前提に何かを学ぶと、記憶が定着しやすくなるだけでなく、学んだことの意味や仕組みを、より深く理解できるようになります。
なぜなら、教える相手から質問を受けてもきちんと説明できるように、深く理解しようとするからです。
ただ覚えるのではなく、「それに何の意味があるのか?」を理解しながら覚えるようにすれば、学んだ内容をより実践的に、仕事や勉強に活かせるようになります。

行動科学マネジメントにおける、自分の「伸ばし方」に関する考え方のひとつに「技術習得の4段階」というものがあります。
第1段階は「知らない」、第2段階は「知っているができない」、第3段階は「意識すればできる」、第4段階は「意識しなくてもできる」というものです。

わかりやすく自転車の運転に例えると、第1段階は「そもそも運転の仕方を知らない」、第2段階は「やり方はわかるが、運転はできない」、第3段階は「なんとか運転はできるが、動きがぎこちない」、第4段階は「無意識でスムーズに運転できる」という流れになるでしょう。

このように、学んだことをただ「わかる」だけでは何の役にも立たず、「できる」、あるいは「使いこなせる」ようにしなければ、武器やツールとして活かすことはできません。

人に何かを教えようとして理解を深めることは、学んだ知識を使いこなすための準備にもつながるわけです。

学んだことをブログやSNSで発表してみる

とはいえ、「人に教えるために学ぶ」という機会は、さほど頻繁に訪れるわけではありません。独学で英語や資格などの勉強をしている人なら、なおさらのことでしょう。

そこでお勧めしたいのが、学んだ内容をブログやSNSなどで発表してみることです。
ブログやSNSは、不特定多数の人が読むので、理解に間違いがないようにしたうえで発表しないと、恥ずかしいことになりかねません。その分、しっかり勉強して発表することになるため、より理解が深まり、自分のものとして定着するはずです。
ブログやSNSには、閲覧者がコメントを書き込んでくれるため、記憶違いや理解の誤りがあれば修正してもらえるというメリットも考えられます。

YouTubeなどの動画投稿サイトで、学んだ内容を発表してみるのもいいでしょう。短い時間に要点をまとめて説明しようとすると、頭が整理されるだけでなく、ちょっとしたプレゼンの訓練にもなるかもしれません。

“伸ばし方”のポイント

「人に教える」つもりで何かを学ぶと、記憶の定着がよくなり、理解も深まり、知識を「使いこなす」レベルにぐっと近づく

PROFILE

石田 淳いしだ・じゅん
株式会社ウィルPMインターナショナル代表取締役社長兼最高経営責任者。社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事。アメリカの行動分析学会ABAI会員。日本行動分析学会会員。日本ペンクラブ会員。日経BP主催『課長塾』講師。米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジし、「行動科学マネジメント」として確立。執筆活動や講演・セミナーを精力的に行う。

記事公開:2020年11月